表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/44

24.次の町へ!


「他にお待ちの方いらっしゃいませんかー?」


「ハルカ様、有難うございます。もう先程の者で最後です。本当に、なんとお礼を言ったらよいか」

「こちらこそありがとうございます。初心者の魔法に付き合って貰って」

「そのようなことは! ……長い間、我々は王国に、そして天に見放されたと思っておりました。けれど、そうではなかった。神は苦痛に耐えた我らの元に御使い様を送ってくださったのだと、私は確信いたしました!」

「あ……っと、あはは。ソウデスネ。き、きっとイルシェイム様のご加護でしょう!」


「やはり!!」


私は目を逸らしながら答えた。正直、村長さんの目が怖すぎる!

ちなみに、今広場に残ってるのはゴーチェ村長と私、ユイト、アディの四人だけだ。


村の人たちは治癒が終わる度に熱すぎる目で私を見てきたので、アディとユイトに頼んで、終わった方から速やかにご自宅にお帰りいただいた。


そりゃ、助けてあげたいとは思ったけど、見ず知らずの人に重すぎる感情を向けられるのは嬉しい通り越して引いてしまう。


(イル様に投げちゃったけど……良いよね?)


間違いなく神様だし。

私の力も授けて貰ったものに違いないんだから。



空を見上げればもうそろそろ暗くなる頃。

慣れたし、少ない人数だったから軽症者より早く終わったかな?

ピーク時のお客様を捌き切ったような充実感だ


村長さんが爛々とした目を輝かせる。


「ハルカ様、アーディエント様、ユイト様、よろしければ本日はお泊り頂いて、明日、村をあげた宴を!」

「結構ですっ!」/「結構だ」/「オレは……ちょっと」


同時に響いたお断りの言葉に私達三人は顔を見合わせた。


「えっと……ということで、私達はお暇致します」

「そんなっ。是非ともお礼を」

「……俺たちは()()()()行かなければならない。この意味が分かるな?」

「――ッ! そ、そうですね。失礼いたしました。我々の我侭で聖なる旅路を邪魔する訳には参りません。せめて、お礼の品だけでも受け取っていただけないでしょうか?」

「ハルカ、お前が受け取れ」

「えっ、私!?」

「使ったのはお前の魔力だからな。お前が受け取るのが適当だ」

「そういう事なら……」


私はしぶしぶ頷く。お礼を断っちゃってるし、これ以上固辞したら逆に失礼かもしれないもんね……。あんまり余裕がなさそうだし申し訳ないんだけどなぁ。


「あ、そうだ! 香草をあるだけの種類全部、一本ずつもらえますか?」

「一本!? それだけですか? あの、肉やパンは……」

「必要ないです。どちらかといえば、私は香草が一番欲しいかなーって。あ、難しかったら他の物で良いんですけど」

「その様な事はございません! やはり、御使い様は我々とは食物が違うのですね。すぐにご用意して参ります!」


……私、朝ご飯、すごく食べたよ?


お年寄りとは思えない速度で走って行ってしまったので否定もできない。村長さんの勘違いがえらい方向に行ってる気がするけどーー


(……ま、いっか!)


責任はさっきイル様にブン投げたから、このまま謎のイル様の奇跡って事で流して貰おう!


「やったねユイト! これでお肉に香草が使えるよ!」

「一本あればオレも匂いや形を覚えられる。さすがハルカだ」

「えへへ。食い意地は負けないからね」


ユイトの採取能力は天下一品。私には違いが分からないようなものも直ぐに見つけてしまう。もう香草が無くて味付けに困る人もおさらばだ。


(そうだ、アディにもお礼言わないと!)


私だけじゃ村長さんのお願いを穏便に断れたか分からない。


「アディ、さっきは代わりに断ってくれてありがとう」

「オレも解放されたかったからな。村長の勘違いを利用させてもらっただけだ。まあ……あながち間違いでないのかもしれんが」


ジッとアディの両目が私を捉える。

これは完全に疑われてる! 何を疑われてるのか私の知識不足で分からないけど、凄く疑われてる!


「わ、私はただの一般人だよ?? えーとっ。ほら! 村長さん、やけにあっさり諦めてくれたけど、さっきのってどういう意味なのかな?」

「……まぁ、地域によるが、治癒神官は護衛騎士を連れて村を回る事がある。神殿はある程度大きな町にしか無いからな。施しというやつだ。村長の認識を利用させて貰った」

「うわー。本当の事は言ってないけど、嘘もついてないやつだ。悪いなぁ」

「次の街に行きたいのは間違いないからな。それで、お前たちはどこに向かうつもりだ?」

「私達は大神殿って場所を目指してるの」


「――なっ!? 大神殿!!!? それは理解して言ってるのか?」

「えーっと……理解、してないかも?」


アディのこの反応、なんかイヤーな予感……。

ユイトもびっくりしてる。


分かるよ。普段クールな人が思いっきり驚いてる顔ってなんかシュールだよね。アディの場合、顔が怜悧に整ってるから余計。

クール系イケメンやつかな。ユイトは逞しいけどなんとなく可愛い系だから対照的。


なんて、閑話休題。


たぶん同じ反応をしてるだろう私達を見て、彼は最早見慣れつつある特大の溜息を吐いた。


「神殿関係者ではないと言っていなかったか?」

「関係者じゃないけど、諸事情でどうしても大神殿に行く用事がありまして」

「諸事情で……?」


腕を組んで訝しげな表情。

もしかして、これはもうダウト寸前?

私は嘘を吐くのが苦手だし、碌にこの世界の知識も無いのにアディを上手くごまかせるとも思えないっ。こういう時は――


(ユイト、ヘルプ! 助けて!)


視線でアイコンタクトっ。ユイトなら分かってくれる筈!

彼が頷いて、それから力強い声で断言した。


「――巡礼だッ!」

「そう、巡礼! 私、すごく信心深いの!」

「大神殿は海と渓谷を越えた北の最果てだ。辺境のこの国とは真逆だな」

「……え、辺境? この村が、じゃなくて?」

「このサンベーニュ王国は人間が住んでいる土地の最南端にある。まあ、大神殿からは南西だが」

「あー、そうなんだ……大神殿、そんなに遠いんだ……」

「少なくともその程度の知識で辿り着くのは望み薄だろう」

「(すまない、ハルカ。オレもあまりその……ごまかすのは得意じゃなかった)」


こそこそと小声で囁くユイト。申し訳なさそうに、しょんぼりと耳が垂れている。

ううう。そうだよね!

全然得意そうじゃないもんね。私が悪かった!


――というか、それより、


(大神殿そんなに遠いの!?)


あの長い黒髪の誰かさん。イル様の邪魔して私を上空からダイブさせた挙句、しかも辺境まで飛ばしてくれたなんて!

また殴りたい理由が増えた。


でも――

これはまずい。ユイトは次の町までの道しか知らないと言っていた。つまり、その先は完全に未知!

町で情報が集められなかったら詰んでしまうっ。


私は瞬時に判断した。ユイトの服をぎゅっと引く。彼も同じことを考えていたみたいだ。ーーちょっと不服そうではあるけど。背に腹は代えられない!


「アディ!」

「なんだ唐突に?」

「私達の事情は言えません! そのうえで、大神殿までとは言わない。せめてこの辺で一番大きい街の神殿まで連れて行ってください!」

「事情も聞かずに手伝えと? それで、俺に何のメリットが?」

「ほ、ほら。私、アディの目を治したし。お代とか貰っても良いと思うんですよ。村長さんも香草くれるのにアディだけタダは無いでしょ? 道案内してくれるだけで今なら無料! 途中で怪我したら治癒のサービス付き! お得ではないでしょうか!?」


破れかぶれの必死のアピール!

咄嗟に出てきた言葉は深夜の通販番組みたいで、恥ずかしくて顔が熱くなってきた。

アディは何かツボにでもハマったのか顔を覆って思いっきり笑いを堪えてる。


「……っお前、俺を笑い殺す気か? 何だその訳の分からん口上は」

「私だって変だと思ってるけど出ちゃったんだから仕方ないでしょ!? 慣れてないんだから!」

「まあ良い。仕留めた例の魔物を換金するから、どうせ俺も王都に戻る予定だ。治癒の駄賃代わりに依頼として引き受けよう」

「ホント!?」

「ああ。元々事情を聞いて付いて行くつもりだったからな。その規格外の魔法には興味がある」

「ちょっ。じゃ、じゃあ、私ムダに恥かいただけ!?」

「そうとも言う。お前がどんな事を言うか聞いてみたかったんだが……まあ、予想以上に面白かった」

「酷い!!!!」


意地悪だとは思ってたけど、とんっでもない性悪だっ。まだツボから抜けてないみたいで、ずっと笑ってるし、傷口抉るの止めてほしい!


ユイトがグッと私の肩を引き寄せる。


「本当にコイツを連れていって良いのか?」

「うん。私もご遠慮したいけど、他に頼る人もいないしね。凄く物知りだし。態度最悪だけど」


はぁ、っと二人で息を吐いた。



それから、戻ってきた村長さんから香草入りの袋を受け取って、目立たないように村の裏口――怪物と戦った森の方に向かった。

総出で見送りを、とか言われたのを丁重にお断りした結果です。


「でも、この村って黒の森に近いし、また魔獣とか怪物が来たら村の人だけで戦うしかないのかな?」

「――いや、もう魔物に襲われることはないだろう」

「ハルカ、見てみろ」


ユイトに言われて見回すと――

道のそこかしこ、私たちが戦った場所に灯火草が咲いていた。暗くなりかけた世界にふわりふわりとピンクの光を灯している。


「あれ? こんな所に咲いてたっけ?」

「村長が言うには、何故か、あの戦闘の後、戦闘があったこの場所に、突然咲いていたそうだ」


アディの意味深な目っ。

私は本当に知らないよ!

でも、灯火草って……光の神がどうとか聞いたような。うん。もしかして。私の魔法が関係あったりする?

そんなことは勿論言えないけど。


「あー……私達、森を通って来たからかな? 灯火草、森に生えてたし。体に種とか付いてたかも」

「ハルカ……種は一日で花を付けない」

「そもそも灯火草を栽培できるとは聞いたことがない」


(怒涛の正論!)


ユイトすら味方してくれなかったら私はどうすればいいの!?

どうしようもなくなった私は、二人の腕を取ってぐいぐいと引っ張りながら歩き出した。


「さ、さあ、次の町へ出発! 野営の準備をしなきゃいけないし、キリキリ歩いて良い場所探そっ!」


もう暗くなっちゃうしね!

火を焚いて、ご飯作って、やるべきことは山積みだ!


毎日投稿がんばります!


☆評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ