20.ユイトとアディ<前編>
前編:12時頃公開 後編:20時頃公開
村長さんや怪我人の皆さんを待たせるのも悪いので、私はダッシュで食事を終えて村の広場に向かっていた。
食事は質素だったけど、村の状況からすれば十分豪華。ベッドまで借りちゃってたのに何だか悪い気がする。
……でも、その分きっと期待されてるって事だから、がんばらないとね!
ちなみに、お肉はユイトが村に渡した分だったみたいで、一般的な食事量としてはかなり多めに出してくれていた。
沢山寝て、食べて、コンディションはバッチリだ。
(そういえば、魔力の使い過ぎ……ってどうなんだろう)
丸一日寝てたっていうから、ビームより治癒の方が魔力を使うのかな? でも、あの時の私はまだ魔法が撃てそうな感覚があった。
ーーそういえば、私の限界ってどのくらいなんだろう?
ユイトのいってた『お腹がガリガリするような感じ』は未だに分からない。
歩みを止めず、隣の詳しそうな赤髪さんの方に視線を移した。
「私、丸一日も寝込んじゃってたみたいだけど、これって魔力の枯渇ってやつなのかな?」
「……魔力の枯渇? 生命力を魔力の補填に使えば、不可逆の衰弱状態に陥るか、即座に死だ。
あれだけバクバク食っておいて枯渇もクソも無いだろうが」
「バクバクって、丸一日食べてなかったら普通お腹空くでしょ!」
「図太すぎると言っている。倒れたのは単に体力不足だ。鍛えるしかないな」
「……これでも割と体力は有る方だと思うんだけど」
「体を動かす体力と魔力を使う体力は全く違う。ピンピンしてる以上、運動不足の人間が急に全力疾走して倒れたのと変わらん。
実際、俺はお前が鹿を一頭分食い尽くすつもりなのかと思ったぞ。あれだけ食欲があって生命力の心配が必要か?」
ぐううううううっ! 何の反論もできない!
ユイトの家を出てからサバイバル生活の歩きづめ、野宿で疲れも余り取れないし、正直疲れていた感は否めない。
それに……
食事にパンとスープが付いてたんだよ!?
パンと! スープ!
そりゃあ向こうの世界と比べて美味しいとは言えないけど、久しぶりの麦の味ッ。香りだけで泣きそうだった。
肉からも明らかに香草の匂いがしたし、必死で有り物調理でやってきた私の感動は推して知るべしだ。
多少食べ過ぎても当然だと思う。
でも、魔力に体力的なものって必要だったんだ……。
そりゃユイトに聞いても分からないよね。体力、有り余ってそうだし。
反対側、ユイトの様子を見るとジロりとアディを睨み付けていた。
「……赤髪。お前、随分と魔法に詳しいんだな?」
「俺は『赤髪と呼ぶな』と言ったと思うが。バカ犬には学習能力が無かったか?」
「お前こそ、オレを犬と言うなッ。魔法の知識は貴族が独占してる。獣人族が使う《身体強化》以外、殆どの人間は魔法の使い方も知らない筈だ!」
「ああ、この国ではな。俺は俺の事をいちいちお前らに話す気はない」
「お前は信用できない」
「信用される必要性を感じんな」
「ちょーーーっとストップ! 私の頭の上で喧嘩するの止めてくれませんか!? 仲良くしたいなら二人でやって!」
「「誰がコイツと!」」
左右からサラウンドで喧嘩されて、私の耳はもう限界!
食事の時からそうだけど、この二人はどうにも相性が悪いみたい。ユイトは普段穏やかなのにやけに突っかかるし、アディもいちいち言葉が強いから直ぐにヒートアップしてしまう。
唸るユイトと眉を吊り上げたアディを両手でグイッと引き離した。
「……二人とも身長が高いからって、私の頭の上は共有スペースじゃないんだからっ。ほら、広場。皆待ってるよ!」
言ってズンズンと荒れた道を進んでく。
確かに、アディもユイトも背が高い。男の人だから仕方ない。
でも!
だからといって私の152cm低身長のコンプレックスを刺激してくるのは断じてノーだ!
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