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4.論功行賞


 戦勝式典というより戦勝祭と言った方が正しいものが終わった3日後の昼。きれいに片付いたノルデン城の大ホールに、貴族を始めとして騎士団や森の手、一般兵やその他代表が集められた。最後に見た時は大量の死体と血と、積み上げられた机やら椅子やらが散乱していたので、綺麗で荘厳な大ホールに圧倒される。


「これより!論功行賞式典を行う!」


 掛け声は騎士団長だ。

 辺境伯や貴族たちに向けられる視線は、周りの顔は自分の褒美がいかほどなのかと、期待することを隠せていない。辺境伯を始めとする貴族は、後にある王からの褒賞なので、今回の論功行賞は渡す側だ。

 厳粛な雰囲気の中、ラスティラヴァ辺境伯がゆっくりと気品を感じさせる動作で椅子から立ち上がり、騎士団長に代わって褒賞を直接読み上げ始めた。


「まずは、カーマイン辺境伯領の全ての住人へ!徴兵や、復興の為の人夫の派遣、及び税の支払いなどを滞りなく行った。これは、カーマイン辺境伯領の防衛にとってなくてはならない物だった。よって、今より収穫時期までの人頭税を免除とし、労役の義務を半分とする」


 「おぉ!」と声を上げたのは各集落から来た代表たちだ。税の免除など、よっぽどの功績を上げた村しかないというのは常識なので、破格の褒賞だろう。労役に出す人数も半分とは、これで戦争で失った人手を村の為に使える。暫く喜びの喧騒が続き、辺境伯はそれを満足気に眺めていた。


「次に一般兵!カレリア砦防衛はお前たち抜きではできなかっただろう。この功績は大きい!臨時給金としてひと季節分が支払われる!」


 「やった!」という声が聞こえてきた。少し正直すぎて笑えてしまうが、その声の主はリーダーに睨まれて、気まずい顔をしていた。


「そして、森の手!今回の防衛戦においても多大な貢献をした上に、戦力の提供を始めとする身を切る事を惜しむことなく行った。君たちにはひと季節分の給金が追加で支払われ、拠点の土地の拡充を認める」


 コルソが静かに頭を下げるのに続いて、他の団員もこうべを垂れた。傭兵団が拠点の拡充をするのは、信用できない武装集団を強化するようなもので、他の領主だったら避けたい事だろう。これは、辺境伯からの信頼の証だ。


「ノルデン騎士団!君たち無しでは私の命は防衛戦の前に尽きていただろう。更には防衛戦では多大な犠牲を厭わない戦いを見せた。君たちにはひと季節分の給金の追加と、1年間の税の免除が行われる」


 騎士達が敬礼することで、鎧が擦れる音が大ホールに響いた。少しも表情を変えないのは、騎士団長を始めとする率いる者達の教育の賜物だろう。その中にはエドガーの姿も、ひと際目立つカールの姿も見える。更には大怪我をおして参列する、ユーリ隊長の姿まで見えた。


「最後にリデル弓兵教官及び、それに従った勇士達!」


 ついに自分の番が来た。


「リデル弓兵教官は、北方樹海から侵攻してきた帝国軍の初動を潰し、ノルデン城と私の窮地を救い、更にはカレリア砦防衛戦に参加した上、窮地に陥った我が領を救うために、50名の勇士を率いて敵の後背面に潜入すると、帝国軍の総司令官を討ち取った」


 辺境伯から並べられた自分の功績を聞いていると、この短い間に随分と頑張ったものだと他人事のように感心してしまう。それと同時に、この戦いの為に命を散らした者達の顔が浮かんでくる。


「勇士全員とその遺族に1年分の追加給金と1年間の税の免除、リデル弓兵教官においては騎士爵へ叙爵する」


 今朝、騎士団長に打診という名の叙爵の宣告を受けた。騎士団長は「受けるも受けないも自由だ」と言っていたが、平民出身の自分に断る選択肢も、意味も存在しないと同じだ。


「叙爵式はこの後、引き続き行う。以上」


 辺境伯が自分の席に戻ると、騎士団長が「これにて論功行賞を終わる!」と式典を締めた。

 

 続いて行われる叙勲式の為に参列する者達以外は退出していく。残ったのは騎士団と森の手の者達に、一般兵の隊長格と一段上にいる貴族達のみだ。居並ぶ貴族のうち一人は、重症で式典に出ることが出来なかったローガン・マクナイト男爵の代役である”ルーシー・マクナイト”だ。ローガン男爵は命は取り留めたが、満足に歩くこともままならないほどの重症だったらしく、結局ルーシーが全ての代役を務めている。

 ルーシーの表情は、以前マジックアローの実験時に見せていた太陽のような笑顔ではなく、貴族らしく気品溢れる凛とした表情だ。それが貴族としての務めだというように、余裕を持った佇まいをしている。


 だが、これから式典の主役になる自分と言えば、緊張から足が震えてしまいそうだった。式典儀礼は魔法学校と近衛騎士団で叩き込まれたが、使う場面など来る訳もなくうろ覚えだ。なので、式典の流れなども含めて騎士団長に事前に教えて貰ったのだが、それも緊張ですべて忘れてしまいそうだった。


 恐らく自分は、キョロキョロと周囲を落ち着きなく見まわしていたのだろう。その中でルーシーと目が合った。静かに頷く彼女は、こちらを落ち着けと励ましてくれているようだった。お陰で随分と心に平穏が戻った気がする。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ面白くて、見つけてからここまで一気に読ませていただきました。 続き楽しみにしてます。
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