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3.戦勝式典


 ノルデン城に到着してからの7日は一瞬で過ぎた。

 7日目の昼から行われた戦勝式典は街の中央広場で行われ、ラスティラヴァ・カーマイン辺境伯の挨拶から始まり、祭りのような感じで出店が出ている楽しいものだ。

 エドガーやカールは開会式に参加した後は衛兵の当番に入ってしまったので、出店で食べ物を少し買って、広場のベンチでゆっくり食べて帰ろうとした時だった。


「お久しぶりです!!」


 久しぶりの元気な声を聴いた。振り返るとそこにはフレディとアントンが、出店の肉串を片手に笑顔で立っている。


「久しぶりだな!!傷は治ったのか!?」

「えぇ、結構前に良くなりました。」


 二人の表情は余裕のある笑顔で、この前まで深い傷をいくつも受けていたとは思えない顔だった。


「聞きましたよ、ウィルの事」

「あぁ、俺を庇って……な」

「指揮官を守るのは騎士として当然のことですから」


 アントンが励ましてくれるが、ウィルの体を貫く槍と敵に切り込む最後の姿を思い出してしまう。


「折角の戦勝式典ですからそんな顔をしないでください。勝つために命を散らした隊長の部下たちが怒りますよ」

「フレディの言う通りです。隊長」


 俺たちは人が死ぬことに慣れ過ぎてしまっている気がする。もし明日、フレディとアントンが死んでしまったとしても、数日経てばいつも通りに戻っていて時たま思い出すことがある程度だろう。それが戦乱の世を生き抜くために必要な事なのは間違いないのだが、どこか納得できない自分がいた。

 だが、励ましてくれている二人の厚意を無駄にするのも違う。


「俺はもう隊長じゃないぞ?」

「ハハッ確かに、じゃあリデルさんで」

「エール買ってきます。少し待っていてください」


 フレディが買い物に走り出し、アントンと二人になった。暫く街行く人々の笑顔を眺めていたが、一つ気になる事があり、アントンに声をかける。


「ウィルとは仲が良かったのか?」

「はい。一般兵になった時の同期で、騎士団に入ったのは私の方が先でしたが、同じ第三騎士団でした」

「俺の事を恨むか?」


 思わず出た言葉に、アントンが驚いたような顔を見せるた。こうして近くで顔を突き合わせたのは初めてかも知れない、よくよく見ると頬に切り傷があり、自分よりそこそこ年上なのが分かる。


「なにを言ってるんですか。恨むなら帝国でしょう?我々は家族と故郷を守る為に帝国と戦ってたのです。感謝こそすれども恨みはしません」

「そうか……」


 それ以上の言葉を続けられずにいると、アントンが口を開いた。


「それに、騎士団でも『リデル弓兵教官のお陰で勝った』と噂ですよ」

「なんだそれ」

「あのまま防衛戦をしていても、じわじわ削られて負けていましたからね」


 城壁の悲惨な状況は、目を閉じるだけでも思い出せるようなものだ。


「だとしても、一緒に出発した50人が居なければ、敵陣に到達することも出来なかった」

「そこまで導くのも、隊長の腕なんじゃないですか?人を率いるのが向いているんだと思いますよ」

「それは思ったこともないな」

「近衛の時はどうだったんですか?」

「平民出身だったしアーチャーだからな、フレディ以下の扱いだったよ」

「ハハハハッ、それはひどいかも知れません」

「ちょっと!人が買い物に行っている間に悪口言うのやめてもらっていいですか!?」


 横からエールのジョッキを三つ抱えたフレディが出てきた。


「悪口じゃないぞ、俺とフレディが似ているって話だ」

「どうだか!?はいどうぞ」


 差し出されたジョッキには、なみなみのエールが注がれている。


「じゃあ、たいちょ…リデル弓兵教官から一言」

「おい!……分かったよ」


 乾杯の挨拶なんてものは一度たりともした事が無いが、二人が自分がするまで言葉を発する気配が無かったので仕方がなく、ジョッキを掲げた。


「ウィルと森の手のクレス、ラフとラナー、そしてこの戦いで命を懸けた全ての兵士達に」

「全ての兵士達に」


 ぬるいエールが一気に喉を通過していく。特段変わりのないエールを飲めるのも、生きている者の特権だと今更ながら認識した。


 その後は暫く3人で買い食いしながら話していたが、フレディが思い出したように口を開いた。


「そういえば、リデルさん」

「ん?なんだ?」

「叙爵されるんですって?」

「えっ!?そうなの!?」

「あっ、これ言ったらだめだったのかな」


 今更遅いという顔をしているアントンが言葉を繋いだ。


「噂ですよ?噂ですけど、辺境伯がリデルさんを手元に置いておきたいらしくて」

「手元に置くことと、叙爵が何の関係があるんだ?」

「辺境伯以上の爵位を持つ貴族は、騎士爵を叙することが出来ますから、辺境伯だと二人まで、侯爵位だと3人とか」

「聞いたことはあるが、手元に置くことと関係あるのか?」

「爵位を持てば、近衛騎士団に返す必要もなくなりますから」


 別に近衛に帰りたいと思っているわけではないので、喜ばしい事なのかもしれない。


「なるほどな」

「論功行賞式典の前に話があるかもしれませんね」

「その時に聞きたかったな」


 フレディを見ながら言うと、苦虫を噛み潰したような顔になった。


「すんません」

「ハハッ、冗談だ」

「うぅ、言い返せないです」


 広場の喧騒の中に自分達の笑い声が消えて行った。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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