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2.凱旋


「よぉし!!準備はいいか?」

「えぇ!帰りましょう!」


 カレリア砦の第四門に、騎士と獣人が混ざった10人が集まった。


 たった10人の護衛を伴った輸送隊の馬車10台が出発し、平和になったカーマイン辺境伯領内を、雪が降り積もり、雪原と化した街道を歩く速さよりも遅く進んでいく。埋まった馬車を雪だらけになって押しながら、自分の生まれ育った王都近郊に思いを馳せた。

 周囲は見渡す限りの白銀色の雪原が広がっていて、北方の春は遅く吐き出す息は白く染まっている。春の暖かさを感じるにはまだ暫く寒さに耐える必要がありそうだった。北方はまだまだ冬が続く様子でも、すでに王都は雪が溶け始めて、春の風が吹き始めている頃だろう。腹を空かせた冬眠明けの熊が闊歩する森の中で、猟師の父親の背中を頼りに進んだ記憶がある。近衛騎士団に入団が決まったのもこの季節だった。


「やっと抜けたなぁ……」


 車輪と記憶の掘り起こしが終わり、思わず口から言葉が漏れた。


「この速度じゃ倍の7日くらいかかっちまうぞ」


 肩を回しながら、足元を雪だらけにしたカールが寄って来る。


「カールが馬車引いて歩けばいいんじゃないか?変わらんだろ」

「おい!」

「ハハハッ褒めたんだがな」

「いーや!隊長のその顔は悪い事を思ってるやつだ」

「バレたか」


 周りで聞いていた者達の笑い声が、広い雪原に響いた。

 

「先は長いぞー」


 エドガーがうんざりしたような顔をして、自分達が乗っている馬車に戻って来た。


「そっちも抜けたか」

「えぇ……疲れました」

「よし、皆戻ったし出発するか」


 我々は馬車が深雪に嵌る度に文句を言いながら、馬鹿な話をしながら進んでいく。

 カレリア砦を出発してから6日目の夕暮れに、我々はノルデン城の正面城門に到着した。待ち受けていたのは、出発前と変わらないノルデン城の城門と若干気の緩みがある騎士団の衛兵たち。


「ご苦労様です~。カレリア砦からですよね」

「そうです」


 御者が衛兵から質問を受けて、特に中身を改められる事なく城門をくぐった。


「はぁ」

「どうしたエドガー」

「ちょっと騎士団が緩みすぎですね。どこから来たのかを自分の口から言った上に、馬車の中身を見ようともしない」

「仕方ないんじゃないか?長い事していた戦争も終わったんだ。安心で少しは緩むものだろう」

「だとしても規律は重んじるべきです。明日、あいつらを叱っておきます。あと騎士団長にも報告を」


 エドガーとは調査の時から隊長と部下として長い時間を過ごし、死線を乗り越えてきたから忘れていたが、第三騎士団では隊長だった人だ。当然、部下を指導する立場なので、気になったのだろう。


「おぉ、見てみろ。街が」


 エドガーの怒りが収まらない雰囲気を察してか、サルキが声を発した。

 馬車の布の隙間から見える街並みは既に再建が始まっていて、襲撃によって火の手が上がった場所には、新しい骨組みが出来始めていた。


「ひと季節も経ってないのに、早くないか?」

「まぁ、戦争も終わりましたし、此処で生活する人が居なくなるわけではないですから」

「前線から男手も戻って来てるしな」

「これは夏には元通りになってそうですね」


 人間というのは強かなもので、どれだけ自分の住処が破壊されても、いつの間にか戻って来て元通りの生活を送っていたりする。近衛騎士団の時に魔獣討伐をした後、暫く経つと破壊された村が元に戻っているのは何度も見た。



「さぁ、懐かしのノルデン騎士団宿舎ですよ。我々は物資を倉庫に持っていくのでこれにて」

「ありがとう!助かったよ」

「こちらこそ!護衛ありがとうございました」


 輸送馬車隊の車列を見送り、宿舎に向かって行こうとすると森の手の者達が足を止めた。そしてサルキが自分の前に出てくる。


「我々も、ここらで団の宿舎に戻ります。また、ノルデン城の大ホールでお会いしましょう」

「そうだな、一応10日後らしいから、またその時に」


 別れた後は、カールとエドガーと話しながら宿舎への道を歩いた。


「凱旋パレードがあってもいいのにな!俺ら大功労者だぜ!?」

「それを言ったらノルデン城も戦火に巻かれているからな、復興するほうが優先だろう。それにあの襲撃でそれなりの犠牲も出ている」


 エドガーがカールに返した言葉で、北方樹海から帰って来た時に河原に積み上げられていた、獣人などの大量の死体が頭に浮かんだ。


「そうだな、カーマイン辺境伯領では全員が戦ったみたいなものだ」

「隊長の言う通りだぞ、カール。それに俺らはこれから辺境伯から褒美がもらえるらしいから、まだいい方だ」

「それもそうか……確かにな」


 宿舎の前に到着すると、まずは第三騎士団のエドガーが分かれ、次に第二騎士団のカールが宿舎に入って行く。最奥にある第一騎士団の宿舎に到着すると、途端に疲れたような気がした。久しぶりに入った借りている部屋も実家の様な安心感だ。

 次の用事は7日後にある戦勝式典と、その10日後の論功行賞式典だ。それまでに何度かある訓練に顔を出すくらいで、後はゆっくりできそうだった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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