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8.殿


 疲れと安心からか、言葉が口から出て来なかった。


「悪い遅れたな」

「遅すぎます」


 興奮からか礼よりも先に悪態が口からこぼれ出る。

 騎士団長は焦った様子で切りかかって来る帝国兵3人を、槍の一突きで仕留めていく。周りを固めるために残った10人の騎士たちも手練れだ。帝国兵を馬上から槍で確実に仕留めて行った。


「すまないな、脱出するぞ。かく乱の為に奥へ突撃した奴らの帰還の流れに乗る」

「分かりました」


 少し休息を取れる状況になった途端、体に力が入らなくなった。自分が持っている軽量の短剣でさえ、カールの戦鎚でも持たされているのかと思うほどだ。周りも同じ状況で、エドガーもパウラも、力自慢のカールも例外ではなく、膝を折って戦鎚を支えにしていた。体力自慢の森の手であっても、自分達人間ほどではないが、肩で荒く息をしていた。


「こいつら!まだ来るか!!」


 騎士団長の声に顔を上げると、我々を逃がさんとする帝国兵が群がって来ている。騎士たちは卓越した技量で打ち払っているが、それでも数に押されている上に、歩兵の前で騎兵が足を止めるという禁忌を犯しているのだ。それを狙わないほど敵も愚かではない。


「あと少しだ!少し耐えろ!!」


 騎士団長の激励の声と同時に叫び声が後ろで上がった。騎士の一人が馬を槍で突かれて暴れたことによって落馬した。落ちた場所も悪く敵の目の前だったせいで、あっという間に串刺しになってしまう。

 助けに来てくれた騎士たちを援護したいが、もう体に力を入れることが出来なくなっていた。何もできない間に、またもや一人の騎兵が後ろから脇腹を槍で突かれ倒される。


「……隊長、隊長!!」

「……どうした」

「我々に殿を任せてください」


 声の主は隣に並んだサルキだ。


「なにを馬鹿な事を言ってるんだ!?あと少しで生きて帰れるんだぞ?もう少ししたら、前に突撃した騎士たちが踵を返して帰って来る!」

「はい。分かった上でです」

「じゃあ、必要ないだろう!?」


 その声と同時に自分の斜め後ろの兵士がやられた声がした。


「たった今、もう一人騎士がやられました。このままでは自分達が騎士の後ろに乗る頃には数人になっているでしょう。それまで時間を稼がなければ」

「やめろ!」

「我々森の手は体力が余ってます」


 彼の強がりなのは、傷だらけの体と自分と敵の血と砂ぼこりで固まった体毛から分かる。


「やめろ!命令だ!」

「別にここで死ぬとは言ってませんよ」

「……止めても無駄か」

「はい。一応コルソに遺言だけ」

「生きて帰って、自分で言え」


 サルキはこちらの言葉を無視して続けた。


「あんたの娘は3年前結婚して子供がいる。お祝い金としてあんたの使ってない大量の剣を売って渡しといた、会いに行ってやれ」

「自分で伝えろ」

「物を捨てられないのはあんたの悪い癖だとも言っておいてください。頼みましたよ」

「おい」

「行くぞお前ら、情けない騎士たちの代わりに気張ったれや」

「「「「「おう!!」」」」」


 気合の声と共に森の手の5人の男達が、休憩の姿勢から一気に背筋を張った。隣で自分達の話を聞いていたカンブリーも立ち上がったが、サルキが手で制す。


「カンブリーお前は来るな」

「は!?何でですか!?」

「剣が下手すぎる。邪魔だ」

「いや!行きます」

「駄目だ。お前はうちの傭兵団の中で一番弓が上手い、その上に若いしな」

「関係ないですね。行きます」


 カンブリーもサルキと同様に譲る気がないのが、目の力で分かった。


「仕方ねぇな」


 付いてくることを許すサルキかと思われたが、彼の真意は違った。いきなりカンブリーの足を切りつけたのだ。これにはカンブリーも驚きと痛みのあまり、その場にしゃがみ込んでしまった。


「それくらいの傷なら1週間あれば元通り歩けるようになる」

「……」

「じゃあ、隊長。また」


 カンブリーを抜いた森の手の5人は、それぞれ別の方向に向かって切り込んだ。そのまま馬上の騎兵達の足元に纏わり付く歩兵たちを押し戻しながら戦っている。


「おい!何やってるんだお前ら!」


 騎士団長の驚き呼び止める声も届かない。


「団長!騎兵が帰ってきます!!」

「お前ら!こいつらを引っ張り上げろ!撤退だ!」


 味方に指示を発しながらふた突きで敵2人を倒した騎士団長が振り返り、こちらに向かって手を伸ばした。


「リデル乗れ!」


 伸ばされた手を掴むと、あっという間に体が馬上に引き上げられ、周囲に広がる帝国兵の海が目に入った。


「離脱!!」

「待ってください!サルキが!!」


 未だに複数の敵と戦っているサルキは振り返らず叫んだ。


「行け!乗る馬が足りんだろうが!ここは任せろ!」

「おい!」


 敵陣から帰還した騎士たちが我々の周りの敵を蹴散らすように突入してきた。そして森の手を囲んでいた敵を蹴散らす。


「馬鹿がこっちにもプライドがある!死なせるわけないだろうが!」

「……助かるよ」


 死を覚悟していたサルキを始めとする森の手が、救出に来た騎士の後ろに跨った。


「目標カレリア砦!止まるな!切り開け!!」


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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