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7.敵中


 パウラの風魔法によって倒れた帝国兵に止めを刺しながら、息も絶え絶えに小走りを続けたが、パウラの魔力が尽き、帝国側に余裕が生まれた。既に早歩き程度だった我々の進行速度は、あっという間に歩き程度に落とされてしまう。

 そして帝国兵の森を切り開いていた、先頭組にも限界が見え始めた。カールの部下は既に二人になっていたが、その二人が敵の槍に突かれて斃れた。代わりに入るはずの森の手たちにも余裕が無くなっており、実質カール一人が先頭を担う形になっている。更には今までやってきた弓矢による支援も、風魔法もない。そうなると当然突破力は激減し、ついに先頭のカールが止まり、後続も彼の背中に追いついた。我々は完全に足を止めてしまったのだ。

 

「カール!進めないのか!?」

「無理だ!」

「無理矢理にでもか!?」

「敵が多すぎる!!少しは進めるかもしれんが、そこで力尽きて終わりだ!」


 我々に取れる選択肢は耐える事以外に無い。少しでも余力を残した状態で、カレリア砦の味方が到着するまでの時間を稼ぐ。そもそも打って出て来ているのかさえ不確かではあるが、少しでも希望を残すのならば、この方法しかない。


「円陣だ!円陣を組め!!背中を合わせろ!!」


 周囲は敵だらけだが、こうして死角をなくすことで簡単に攻撃できなくなる。普段剣を持たないアーチャーである自分もカンブリーもパウラも、今回ばかりは剣を持って味方と背中合わせになった。本来だったら盾が有ればもっといいのだが、普段近接戦闘をしないアーチャーが持っても邪魔になるだけだ。

 少しの間にらみ合いが続いたが、直ぐに帝国兵は一挙に襲い掛かって来た。敵が振りかざす剣を避けて、受けて、隣から援護を貰い、隣が受けると横腹をこちらが突く。槍で突かれれば、躱し、穂先を切り落とし、受け流し、反撃する。

 人間必死になれば苦手なものでも多少は何とかなる様で、体の疲労は極限に迫り、息は乱れて体は重くとも、精神は研ぎ澄まされてよく敵の動きが見えた。今まで剣術が苦手な自分も、覚悟と追い込まれ方が足りなかったのかもしれない、なんて考える余裕さえ出て来る。

 ただ、余裕があるのと体力が持つのは別問題のようで、しばらく戦っていると明らかに体が動かなくなってきた。半日戦っていた位の気持ちだが、恐らく半刻も経っていないだろう。


「くそ……限界だなぁ!」


 限界が来てハイになっている。


「限界っすねぇ!!」


 隣の騎士もハイになっている様で口元は歪むように笑っていた。そして、騎士団で自分とエドガー、カール以外の最後の生き残りである名前も知らない彼は、目を槍で貫かれた。

 我々は彼の死に反応することなく、彼の居た場所を埋めるために一歩下がり、事務的に円陣を縮める。右隣にはカンブリーが来た。


「よぉ、きついな」

「きついっすね、次来られたら……」

「あぁ」


 言葉は継がなかったが、終わりだという認識は全員が共通するところだろう。 


 残念だ。


 近衛騎士団を放逐され、この王国の北の辺境でいい人達に出会えたが、結局こんな山の間で命を失う事になるとは。余計な使命感と責任感と少しの出世欲が無ければ、この任務を命令された時に断っていただろう。そしたらあのカレリア砦の高い城壁の上で、この状況を呑気に見ているだけだったかもしれないのに。

 あとの後悔と言えば……この世に生まれ落ちた男として、一度女性と恋仲になってみたかった。家は猟師で人里離れた場所にあったし、魔法学校は綺麗な貴族の令嬢たちが沢山いたが、一年しかいなかった上に、平民という事で話しかける事すら問題になりかねなった。こっちに来てから初めて貴族令嬢のルーシーと喋ったが、彼女のような太陽みたいな笑顔を見せる女性と恋仲になれたらなんと幸せだっただろうか。

 諦観した空気を察したように、帝国兵は一歩ずつ間合いを慎重に詰めて来た。ここで終わりみたいだ。



「全員聞け!!一人でも多く道連れにしてやれ!!!!」

「「「「オォ!!!」」」」「「わぁ!!」」


 自分の気勢に応える背面から気合の声と共に、どこからともなく悲鳴が聞こえた気がした。誰かがやられてしまったのだろう。だが、その悲鳴は徐々に大きく、そして確実に近づいて来ていた。


「どうした!?」


 自分の背後を振り返るわけにもいかず、言葉だけで確認するが「分かりません!」という言葉がエドガーの声で帰って来た。

 睨み合いを続けていた目の前の敵が、徐々に自分の後ろに視線を上げていくと同時に、恐怖を表情に露わにしていく。


 後ずさりを始めた帝国兵の間に、間髪入れず勢いよく飛び込んで来た騎馬隊が、まるで川の中にある大石を避ける水ように自分達の周りを流れて行く。


「無事かぁ!!!???」


 その中の一騎が声を掛けながら、自分の前で腰を抜かした敵を槍で串刺しにし、持ち上げ叩き落とした。

 大柄で筋骨隆々な体に銀色の輝く鎧を、帝国兵の返り血でひどく汚しているのはヴェンツェル・ナッフート騎士団長その人だった。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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