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6.死線


  歩兵である我々が敵陣を突破出来ているのは、一本道で敵の層が厚いと言えど、狭い道幅で両側からの圧力が少ないからだ。そして最も大きい要素は、後ろを足止めしてくれたクレスとラフ、ラナーを始めとする森の手の者達だ。3人を含めた15人の獣人達が守っていた最後尾は、今はカンブリーの小隊に交代している。


「カンブリー!!矢を分けてくれ!」

「これ、ショートボウの矢だよ!隊長の弓じゃ、短くて威力が足りない!」

「何とかする!」


 確かに自分の弓はカンブリーの弓より大分大きいが、隊の速度が鈍っている今、そんなことを言っている余裕は無かった。


「はい!これ半分!」

「助かる!」


 ショートボウの矢は予想よりもかなり短く威力が出なさそうだ。弱点を狙っていくしかない。鎧の隙間やヘルムの目に空いている隙間の部分に、狙いを定めて撃ち込んでいく。鎧を貫通できる威力は無くとも、的確に当てれば十分以上の効果があった。


 もうそろそろ裾野を周り切る所で、自分の矢が尽きた。もう一度分けてもらおうとカンブリーを振り返るが、既に剣を手にしていた。隣にいたパウラも同じだ。


「くそっ」


 腰に下げた短剣を抜きながら思わず口から出た言葉は、必死の応戦をしている味方には届いていない。


 裾野を周り切り、敵陣の3分の2を通り過ぎた時、カレリア砦の高い城壁が目に入ると共に絶望的な状況も見えた。前方に見える敵が全てしっかりとした武装をしている。当然だが前線部隊は夜襲に備えて、防具も武器も手放すことはない。そんな者達がカレリア砦に向かって陣形を組み、後ろから迫るこちらをギョッとするように見ている。当然彼らはこちらの姿を確認すると、今までなっていた警鐘の意味を理解し、正対するように陣形を組みなおし始めた。

 しっかり受け止める準備が出来ている敵に、歩兵がたった20余名で突っ込むのは自殺行為だった。だが進まない訳にもいかない。


「カレリア砦は目の前だ!!帰るぞ!!突っ込め!!」

「「「おう!!!」」」


 敵の陣形が整う前に突っ込んだ我々は、何とか進んでいくがそれも続かない。走っていた状態から小走りになり、早歩きになった。あまりに遅い進行速度に徐々に敵の圧が増し、犠牲になる者がちらほらと出て来る。

 陽動し助けてくれるはずのカレリア砦は、兵士が出てきている気配はなく、正門は開いておらず静かなままだった。我々が敵陣を焼き払って出した狼煙がカレリア砦に見えてなかったのだろうか?それとも見捨てられたのだろうか?帝国兵はカレリア砦に正対して陣形を組んでいたのだから、陥落してはいないはずなのだ。なぜ打って出てきてくれていない?

 戦闘しながら絶え間なく沸いて出てきた疑問も、思考する余裕が無くなってきた。目の前の敵から振り下ろされる剣を避け首を刺し、突いてくる槍を避けて切り落とし、焦り疎かになった盾を避けてむき出しの顔面を切りつける。



「おぉ!!!!」


 突如カレリア砦の方向で、ウォークライが聞こえた。この声が王国側で、我々を助け出すために打って出てくれたことを祈るばかりだった。

 我々は次々に減っていく味方の隙間を埋めるように、隊形が少しずつ小さくなっていき、最初の鏃のような形から今はほぼお互いの背中を預け合って円陣で切り合っている。


「カール!もっと進めないのか!!」

「こっちもやってる!」


 我々の進みの遅さに苛立ち、カールに声をかけた瞬間だった。目の前に迫る剣先が見えた。避けるには遅く、受けるには姿勢が悪い。


 思わず目を閉じたが、いつまで経っても剣に貫かれる気配はない。


 ゆっくり眼を開けると目の前に誰かの手が有り、その手を剣が貫き自分の鼻先で剣先が止まっていた。


 腕の主はウィルだった。


 腕を貫かれたウィルはその剣の持ち主を切り倒す。


 だが、足を止めている時間が長すぎた。ウィルの体を数本の槍が貫いた。


「ウィル!!」

「ここまでです」


 こちらを振り返ることなくその場に立ち止まったウィルは、槍を剣で叩き切り敵に切りかかっていく。その後ろ姿を最後に、帝国兵が間に入った。


「だぁぁぁ!!クソが!!!!もっと進め!!!進め!!!」


 目の前で斃れていく味方、無限とも思える敵の量、そして今まで短くも長い時間を共にした仲間が、一人、また一人と落伍していくこの状況に、頭の中にある全ての罵詈雑言が、敵を切りつける度、歩みを進める度に、溢れて口からこぼれる。


「パウラ!」

「なに!?」

「風魔法を使ってくれ!カールの前に立ち塞がるゴミ共に、樹海熊の時に使った突風を浴びせてやれ」

「分かったけど!無防備になる!!」

「守るから!!やってくれ!」


 パウラの風魔法はカレリア砦の味方と合流した際、殿の代わりに使おうと話し合っていたが、もはやそこまで行けるかも分からない状況だ。使えるモノは全て使わない手は無かった。

 隊形の中央にいたパウラを護るように後ろに立ち位置を変えて、彼女を護衛し始めるとすぐに、パウラの風魔法で目の前が雪煙で見えなくなった。その中で歩みを進めると、足元に倒れた帝国兵がいきなり出て来て、思わず踏みつける。恐らく突風で倒れてたのだろう。更に同士討ちも起きているような声がした。


「いいぞ!パウラ!!もっとだ!!」

「回数は打てないよ!」

「それでも構わん!」


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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