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騎士団のアーチャー  作者: 都津 稜太郎
2.カーマイン辺境伯領
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2.出会い


 砦を出発した後、4刻ほど馬の背に揺られ陽が真上を超えた頃に、ノルデン城下に到着した。


「すごいですね」

「だろ?」


 簡単な感想しか出てこないのは、驚きが大きかったからだ。

 目の前の城下町は活気に溢れていて"辺境"という言葉から掛け離れた風景が広がっていたのだ。


「ここはな辺境なのは間違い無いんだ、実際領主の爵位も辺境伯だしな」


 ナッフート騎士爵が語り始めた。


「辺境伯ってのは閑職じゃない。ここは王国の端で孤立した土地だが、帝国とも国境を接している。つまりここ(辺境)を任されるには政治と軍事で優秀であること、王国を裏切らない高い忠誠心を持っていることが大事なんだ」

「はい」

「実際カーマイン家は優秀だったんだよ。鉱業を興して産業を作り、樹海の民と平地をつなぐ交易の拠点にする為に税金を安くした。更に樹海じゃ魔獣が出るから、討伐の為に冒険者や腕に覚えのある奴が集まる。安全が確保される上に、人が集まると商売が始まる。そうしてここは栄えているんだ」


 合点がいった。流石に王都より街の規模は小さいが、それでも街角の人出は王都並だ。それは領主たる辺境伯の手腕によるものなのだろう。


「それじゃあ、このまま辺境伯に挨拶しに行くが大丈夫か?」

「大丈夫です」


 とは答えつつも、今まで気にしていなかった服の汚れが気になり払い落としながら進んだ。



「入ります」


 騎士爵に続いて入った辺境伯の執務室は、想像より簡素なものだった。応接セットの奥の机に座っていた辺境伯が立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる。


「こちら、近衛騎士団より派遣されたアーチャーのリデル殿です」

「リデルです。お世話になります」

「ラスティラヴァ・カーマイン辺境伯だ。遠い王都からよく来てくれた」


 騎士爵より少し歳若くみえる辺境伯は、目から力強い意思が伝わってくる人だった。


「分からないことがあったら、隣の男に聞いてくれ。これからよろしく頼むよ」

「よろしくお願いします」


 自分の出身や、王都の近況などの短い会話をして、執務室を後にした。

 その後はナッフート団長から施設の説明や、規律の説明を受けながら城内を見て回る。最後に案内されたのは、これから自分が住処とする場所だった。


「そしてここが兵舎の君の部屋だ。本来2人部屋だが相部屋はいない、特別待遇だろ?」

「個室なんて部隊長クラスですね。ありがとうございます」


 おどけたようなナッフート団長に、こちらも驚いたように返した。実際、騎士団長自ら説明を受けるなんて特別待遇には間違いなかった。


「それじゃあ、明日は日の出から1刻の鐘がなった時に、第一訓練場に集合だ」

「了解です」


 部屋で荷解きをした後は、水浴びをして旅の埃を落とした。暫くぶりの水浴びは体が軽くなったような気がする。同様に軽くなった足取りで食堂に向かうと、4〜5人のグループが幾つかいて、それぞれの場所で食事をしていた。

 プレートに食材を盛り付けてもらって、1人離れたテーブルに座る。周りの者達は目の前の食事と酒と会話に夢中で、こちらを気にする素振りは全くなかった。自分も周りと同じように自分の目の前にある物に集中する。


「ここ座っていいですか?」


 頭の上から声が降ってきた。そこには茶髪で自分と同じくらいの男が様子を伺っている。


「どうぞ」


 別にこちらから断る理由もない。


「もしかして王都から来るって話の」


 茶髪の男が嬉しそうに、言いながら横の席に滑り込んでくる。


「アーチャーのリデルです」

「ですよね!見慣れない人がいると思いました」

「もしかして席の指定とかありました?」


 声をかけられた時の一抹の不安を伝える。ここに来ていきなり"そこは〇〇の席なんだ"とかのトラブルは是非とも避けたい。


「あっいや特にないです、自由ですよ。自分はノルデン騎士団弓兵のフレディです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 その後は世間話が続いた。辺境伯領のこと、王都のこと、旅路のこと。そしてフレディのこと。

 分かったことは彼は自分より一つ若く、今年民兵から昇格し騎士団に入ったらしい。


「明日は騎士団の訓練に顔を出す予定なんだ。また明日な」

「はい、また明日」


 熱心に喋って食事が進んでいなかったフレディを残し、自室に戻りベッドに横になった。寝心地はとても良く、近衛兵舎のものよりふかふかであっという間に眠りに落ちた。


 窓から差し込む日差しで自然と目が覚め、外に出ると陽が昇っている最中だった。大陸の南の方にある王都の夏は朝から暑いが、ここの気温は涼しく、井戸で顔を洗うとスッキリと目が覚めた。1ヶ月振りの安心した環境での睡眠は素晴らしいもので、体の疲れがしっかり抜けて心地がいい。


 少し早いが王都で買った安物の皮の鎧と胸当てを付けて訓練場に向かうことにした。早く着いていることに越した事はない。

 訓練所に着くと集合時間の半刻以上前にもかかわらず、1人だけ忙しなく動いている男がいた。フレディだった。


「早いな。おはよう」

「あ、リデルさんおはようございます。訓練準備は新人の仕事ですからね!」


 自分も近衛にいたときは、準備や雑用をこなしていた。慣習は大体どこも一緒らしい。手伝い始めるとフレディが飛んできた。


「手伝わなくても大丈夫ですよ!」

「暇なんだよ。これどこ置くの?」

「いや、教官に手伝わせたら自分が怒られます」

「その時は俺が無理矢理手伝ったって言うから」


 手伝いが終わって集合場所に戻ると、結構な人数が集まっていた。

 何処に立っていれば良いのか分からないので、取り敢えず最後列のフレディの横に並ぶことにした。

 

 これから自分はこの騎士団で生きていくことになる。領主の辺境伯も団長もフレディも、ここまで会った人たちは皆いい人ばかりだった。その事実が旅の道中、膨れ上がった不安を和らげてくれていた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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