1.もう一つのカレリア砦
「こんばんわー、ここがカレリア砦で合っていますよね?」
「もちろん!何用ですか?」
「今回コルテス家から援軍として派遣されました50名です。通過の許可を頂きたいです」
「ほう!援軍ですか!」
門前にいた衛兵は明るい表情と口調で話しかけてくるが、目にはこちらを信用するような表情は一切見せず、疑いしかなかった。我々の一人一人を品定めするように、松明を高く掲げ、後ろの方まで光を照らしている。
「許可を頂けますか?」
「どちらを通ってこられましたか?」
「えーっと、北の街道からです」
「最初からお願いします」
「最初とは?出発からですか??」
「はい」
困惑したが、様子を見るに彼らは我々を試すつもりなのだろう。だが、こちらも聞かれた時の為に頭に叩き込んだ順路を読み上げていく。
招集によりガリタニア湖北西岸から船で東岸に上陸、コルテス家の本城を経由して命令の下命を受けた後に、北の街道を使用して北方樹海南端を東進しダルダリン城に到達、その後先程見つけた物資集積所で場所を聞きここまで来た。
「ふむ、なるほど。なぜダルダリン城から、あなた達の部隊が到着する報告がないのでしょうか?」
怪しまれる理由は、ダルダリン城からの報告が無かったから。それも当然で、我々はダルダリン城を素通りしてきているし、何なら樹海熊を押し付けてきた影響でそれどころではないだろう。
「実は、ダルダリン城は樹海熊の襲撃に遭いまして……」
「なんと!?それは、どういうことだ!ダルダリン城は大丈夫なのか!?」
「恐らくは……私たちも門前にいた所を、急いで通過させてもらったものでして……その後の事は分からないのです。ですが、一頭だけだったので全滅はないかとおもいます」
「分かった!貴重な情報をありがとう!」
振り向いた衛兵は援軍の要請やら、報告の準備と大忙しで働き始めた。
「あの、私たちは通過してもよろしいのでしょうか?」
「えっ、うーむ。ダルダリン城からの報告がない理由も分かった。通っても構わんぞ」
「ありがとうございます。ちなみに味方の陣地まではどれくらい歩けば?」
「半日くらいだ。今すぐ向かうのであれば、恐らく夜明けと同時に到着できるはずだぞ」
「ありがとうございます。よし、皆!向かうぞ!」
開門と同時に、なるべく他の作業を始めた衛兵たちに紛れながら、帝国のカレリア砦を進んでいった。静かな砦内は自分達が起こした騒ぎのせいで若干騒がしいが、私たちの存在を気にするようなそぶりを見せる者は少なかった。そもそも援軍や兵站の任務が有ればここを通っていくのだから、いつもの光景で当然ともいえる。
カレリア砦に入る時と違い、砦の内から抜けるのにそう時間はかからず、怪しまれるようなこともなかった。門番はこちらを見ようともせず、開門を促しそれまでしてきたように、私たちを通す。
「無事抜けられましたね」
少し安堵した表情をみせるのは、隣に並んで来たエドガーだ。
「あぁ、ここから少し歩くらしいがな。皆、陣形を作れ」
小声の指示は後方へと伝言されて行き、先頭を歩いていた自分とエドガーの視界に、カールの大きな背中が加わった。先程まで列の内側に隠れていた森の手の獣人達が、前面に出て来てカールをサポートし、今度は自分を守るように陣形が組まれる。人間と比べてスピードもパワーも勝る獣人達よりも、カールが前に出ている事実は、どれだけ彼が純粋な力と突破力を持っているかの証左でもあった。
内側で合流したパウラは少し不安げな表情をしていて、彼女は北方樹海で来た道を返してあげた方が良かったのではないかと、申し訳ない気持ちになる。
「敵の兵力は意外に少なそうですね」
自分の左側に合流したサルキがこちらに呟いた。
「物資集積所が2か所で多分150~200、カレリア砦に守備兵と軍医含めて200、ざっと見た所負傷者は200くらいか?」
「既に帝国領内に後送されている負傷者もいるでしょうから、足すことの200程度でしょうか。あとは我々がこれまでの防衛戦闘で片付けたのが300~400、多く見積もれば500で、残り700がいるでしょうね」
「カレリア砦の話し合いで出た予想は、1200だったか?かなり楽に聞こえるな」
「楽に聞こえますが、如何に敵の中心部まで気づかれずに行けるかでしょう」
帝国側が陣地を張るのは我々のカレリア砦までの間にある、この道幅が狭い渓谷で唯一広がっている場所だろう。あくまで聞いた話だが、そこは一段下がった場所で、渓谷の道沿いに行くと見渡せるらしい。
「そしてどうやって指揮官を判別して、誘い出すかだな」
「敵指揮官を仕留める速さで、我々の何人が生きて帰れるかが決まります」
随分と責任を背負わせる言い方をしてきたが、正論であることは間違いない上に、責任重大であることも変わらない。
言葉を続けようとした時、自分の両側を囲む獣人の幅が一気に狭まくなり静まり返る。どうやら帝国兵が負傷兵を運んできたようで、通すためだった。自分達の最後尾を通り過ぎたのを確認して、また話し始める。
「そうだな、細かい所を少し話しながら行くとするか」
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




