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23.迂回


 そこからは迅速に動きはじめる。味方に情報を共有し、出発準備を整えた。

 こちらの動きが、帝国の衛兵にばれないように天幕を広げ、焚火を消す。これは、尾根で会った樹海熊だった場合の対策も兼ねる。パウラ曰く一度獲物として認識した臭いに執着するらしい。

 負傷した帝国兵は無事な帝国兵に頼み、広げた天幕の中に置いていくことにした。彼ら巡視隊の帝国兵が至近距離に獣人が居ても分かっていないのは、夜の暗さと後ろから迫りくる樹海熊のお陰だ。


 後退の為の準備が終わり動けるようになったが、全員揃ってぞろぞろと移動する訳にはいかないので、森の手から徐々に動かし始める。暗闇の中に紛れて行われる後退だが、徐々に少なくなっていく人を見て気付かないほど、衛兵は鈍感ではなかった。


「おい!!何を勝手なことをやっている!!」


 門の上から衛兵がこちらに叫んでいる。


「我々は、ここから少し下がったところで熊を迎撃する!負傷者や巡視隊の生き残りはここに置いていく!回収してやれ!!」

「勝手なことをするな!反逆とみなすぞ!」

「黙れ!!!どちらにせよ入れないなら戦うしかないだろうが!!我々が少し離れた所で熊を迎え撃つ」

「おい!待て!!おい!!!」


 後ろから怒鳴り声が聞こえるが、門を開けてまで積極的に止めるつもりはないようで、一方的に門の上から罵声を浴びせて来るだけだった。一応未だに味方として認識しているという事だろう。

 啖呵を切った自分達の背中を撃つつもりが無い事が分かったので、一気に移動を開始した。残った20名の味方を引き連れて、臭いを残すことが出来るように荷物を置きながら、一気に街道を下がっていく。これで、樹海熊がダルダリン城の方に誘導できれば重畳だ。 

 樹海熊に正面から当たらないかは時間との勝負で、どれだけ自分達が素早く動けるかだった。


「ハァ、ハァ、大丈夫か!?」

「隊長!大丈夫です。樹海熊もまだです」


 息も絶え絶えで到達した目標の木の下で、先行していたサルキが部隊をまとめていた。


「よし、動き始めるぞ」

「はい、松明はどうしますか?」


 ここまでは良かったが、雪原の中を松明をつけて歩くのは目立ちすぎる。


「一応置いて行こう、火を付けたまま置いて行く。この月明かりの中で雪原を歩くのは、かなり目立つが、それでも少しの間の目くらまし位にはなるだろう」


 雪の地面や適当な棒に松明を括り付けて放置してみると、近くで見てもただ明るいだけだが、遠目に見れば集団が陣形を組んでいるように見えなくもない筈だ。


 月明かりに照らされた雪原の中を、スノーシューをつけて歩き始めた。右には帝国の城がにらみを利かせ、左からはいつ樹海熊が出て来るのか分からない恐怖があった。

 それでも城門前で少し暖を取ることが出来た事が功を奏して、体は温まり休憩によって足取りは少し軽い。

 徐々に視界の右端へと消えるように移動するダルダリン城は、背景に急峻な山々を控え、雪原の中に浮かぶ城として、とても美しい光景だった。これが敵地でなく、前後を挟まれている状況でなければどれほど良かった事だろうか。

 

 こちらの存在に気付いているのか、いないのか。ダルダリン城から何か動いてくることは無く、自分達は既に中間地点を超えて反対側に入り始めている。未だに樹海熊は見当たらないので、もしかしたら杞憂だったのかもしれない。そう思い始めた時、隣を歩いていたエドガーがボソリと何かを呟いた。


「ん、なんだ?エドガー」

「隊長……あれって」


 エドガーが指さす先に、皆の視線が集まった。


「あれは、俺たちが戦った樹海熊だな」


 自分の視力の良さがここで生きた。遠目に見えるその姿は、間違いなくアイボリー山脈を超えた先の尾根で見た、白い樹海熊そのものだった。自分達が残した荷物と松明の辺りで、何かを漁っているようで動き回っている。ふと、門前で介抱した負傷兵と巡視隊の帝国兵は、ダルダリン城に入ることが出来たのだろうかと気になったが、自分達には関係の無い事だ。


「こっちに来られても困るからな。急ぐぞ」

「はい」


 歩みを進め続ける自分達の後ろから、雪原に響き渡る大きな唸り声が聞こえて来た。樹海熊の姿が見えない事からみて、ダルダリン城に進んでいったのだろう。それ以降も大きな唸り声と、何かを破壊する音が聞こえた。人間の声まで聞こえないのは、無事なのかそれとも遠いだけか。

 


「これで街道の反対側に出れたな」

「はい……一応追手はいないみたいですね」


 エドガーと共に振り向き、目に入るダルダリン城は先程までと変わらない様子だった。


「樹海熊はどうなったのでしょう」

「さぁ、分からんが……一応200~300の兵士がいるんだろ?多少被害は出るかもしれないが、壊滅することはない。私たちの存在を帝国の本軍に知られる前に後背面に到達しなければ」

「はい」


 静かになったダルダリン城を背に、止まることなく進み始める。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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