22.ダルダリン城
「待て!!何奴だ!!止まれ!!!」
夕暮れと共にに到着したダルダリン城で、城壁の上から衛兵が叫んでいる。帝国は平時、城門前に衛兵が立っているが、先着した者達の話を聞いて既に門を閉じているのだろう。
「早く開けてくれ!後ろから追いかけられているんだ!」
「お前らは何処のどいつだと聞いている!」
誤魔化して中に入ろうとしたが、この門番は堅物だ。こちらが何者か答えるまで、頑として門を開けるつもりはないらしい。前線の城の門番としては優秀だが、私たちにとっては面倒臭いことこの上ない。
「コルテス家からカレリア砦の援軍に来た!」
後ろに控える他の衛兵たちと会話している姿が見えた。おそらく自分達が来る予定があったのかを訊いているのだろう。そして、その答えが返ってくるのも早かった。
「コルテス家から援軍が来るという話は聞いていない!」
「それは行き違いが有っただけだ!別にここに居座るつもりはない!早く開けて通してくれ!」
「少し待て!」
また何か話し始めた堅物の衛兵に辟易してきた。まだ熊の姿を見ていないので危機感が沸いていないのだろう。もし、自分達が山の尾根で遭遇した熊と同じ奴だったら、この少し立派な門でさえ、あいつの足を止める事が出来ないだろう。
そして待たされる時間は”少し”では無かった。どこまで相談しに行ったのか、城主にでも聞きに行っているのか分からないが、半刻は門前で待たされることとなった。その間にも後ろから巡視隊の生き残りが、次々とやって来る。その者達までまとめて待たされるので、負傷している帝国兵を介抱しなければいけなかった。今まで戦ってきて、これから倒す事になる敵の命を助けているのは納得いかないが、こちらが疑われるようなことは無闇にできない。
そして、その負傷者たちが来るたびに、段々と遭遇した場所が近づいてくるのだ。そして今度は自分達が一番最初に出会った巡視隊の一人がやってきた。負傷はしていないが、よっぽど急いで走ってきた様子の彼は、自分に尋問してきた隊長が熊にやられたことを報告してくれた。
その後に来る巡視隊員が言う遭遇場所がほぼ1刻の場所になった時、
「おい!いつになったら開くんだよ!!」
いい加減待たされることに限界が来たのか、カールが門番に怒鳴った。
「こちらで確認できるまで、少し待て!」
「少しって!こっちには負傷者もいるんだぞ!!」
「黙って、待てと言っている!!」
怒り狂うカールは、今にも戦鎚を振り回して城門に叩きつけそうな勢いだ。
「カール、落ち着け」
「ですが!このままだと」
「俺が、代わりに話そう」
カールに元の配置に戻るように促した。
「すまないが、城壁の外を歩く許可をくれ!反対側の街道に出る!」
「出来ない!」
「であれば、我々は少し戻って平原を歩くぞ!」
「勝手をするな!勝手なことをした場合、敵兵だとみなす!」
「んな、アホなことあるかよ!こっちはわざわざ援軍で来てんだぞ!」
「そちらの事情は知らん!」
このままこの場に留まっていると、動けなくなってしまいそうだ。今のうちに一度後退して平原を歩かないと、前は門が有り、後ろから熊に挟まれるという一番まずい状況になってしまう。
このまま堅物の門番共と話していても解決にならない事は明白だ。
「おい、巡視隊の!」
「な、何でしょうか?」
門の下から戻り、疲れた様子の帝国兵を呼ばわると、上官に呼ばれた時のように直立してこちらに向いたので、自分にそんな風格があるのかと少し驚いた。
「そう硬くならなくていい。ここから少し戻って、この平野を反対へ渡ることが出来るか?」
「えーっと、それは……」
「そこまで戻らなくてもいい。このダルダリン城を無視して街道の反対側に行きたいのだ」
「そ、それは無理です!味方と言えど必ず弓を射かけられますし、街道に出ると背後から騎馬隊の追手が出てきます」
「だが、このままだと後ろから来る熊に挟まれて動けなくなるぞ」
「で、ですが……」
彼は巡視隊の隊員だ。この辺の兵士であろう彼は、簡単に自分の領地を裏切るような真似を出来るわけがない。
「君はここら辺の出身か?」
「はい。近いです……四日ほど南ですが」
「家族は?」
「嫁と子供が二人」
「このままだと愛する嫁と、かわいい子供に会えなくなってしまうぞ……。別に裏切ってくれと言っているわけじゃない、私たちがいるから門が空かないだけで、私たちがここを離れることが出来れば君たちも中に入れるはずだ」
「それは……そうですが」
「君が教えたなんて、誰にも言わない。ただ……勝手に我々が移動するだけだ」
彼は少し逡巡する様子を見せていたが、家族に会いたい欲の方が勝ったのだろう。少し声を落として話し始めた。
「……わかりました。北側、樹海側を回ってください。南は罠が有りますが、北側は足場が安定しています。投石機やバリスタの射程は、あそこの木の辺りが目安です。木より城側に行かなければ、届きません」
彼が指し示す先には、まばらに生えた樹木が見えた。
「分かった。ありがとう」
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




