表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/100

21.帝国領内


 疑う隊長の視線に気づいたのか、帝国兵達も雑談をして柔和な雰囲気だったものが、またもや最初の敵愾心がむき出しの空気になってしまった。


「それは……大変ですね。ここまではどうやって来られたんですか?」

「私たちは……ガリタニア湖北西の村出身者で集まってまして、最初は船でガリタニア湖を横断するところから始まりましたね。そこからは隊商に混ぜて貰ったりしながら帝国北の街道を移動しています」

「ふむ、なるほど」


 ガリタニア湖云々は、雪が降る前に樹海の川を艀で下っていた時、エドガーが言っていたことだ。さっきエドガーが起こしに来たことで、鮮明に思い出すことが出来た。


「特に、怪しい所はなさそうですね。失礼しました」

「いえ、こちらこそ紛らわしくてすいません」


 部下たちを促した隊長が、ゆっくりと私たちの野営地から離れる後ろ姿を見送っていると、エドガーがやってきた。


「お見事です」

「エドガーが対応した方が簡単だったかもしれないぞ」

「いえ、そんなことは無いと思います。一応、みんな準備できてましたよ」


 振り返ると天幕の隙間から、部下たちが控えめに覗いていた。いつでも飛び出す準備が出来ていたのだろう。心強い限りだ。


「怪しまれるのが今回だけだと良いんだがな」

「それは難しいでしょうね……血を流さなければいけない場面がありそうです」

「ダルダリン城か」

「無視して平地を歩くと、怪しまれる上に時間が掛りますから」

「どちらにせよ。だな」


 エドガーの背後から朝日が昇り始めた。出発の時間だ。



 ダルダリン城に到着する一日で巡視隊を3度は見たが、皆5人程度の部隊で特に怪しまれることもなかった。休憩中にすれ違った部隊など世間話をしに来るほどで、ここら辺は前線の空気とまた違うのだろうという事を思い知った。

 太陽が中天を過ぎ、ダルダリン城に到達する前の最後の休憩では、話し合いがもたれた。


「さぁ、ここまでは順調だが……ダルダリン城をどう突破するか」

「北側の関のような役割ですからね。あそこは」

「強行突破は出来ないのか?」

「無理だな。一応規模は小さいが硬い城だ」


 一番乱暴な案が、一番出てこなさそうなパウラの口から出て来た。それを一番乱暴な案を出しそうなカールが止めている。森の手はどちらかと言えば血生臭い案を出したそうだが黙っていて、エドガーが自分の質問に答えてくれた。


「城内に入ってすぐに出発できないのか?」

「素通りしようとしても、城内を通らないと反対側の街道に出られないので、必ず2回門を通ることになりますね」

「よく見えない夜に行くべきか?それかどうにか森の手を隠す方法を探すか」

「荷車がある訳ではないですし、森の手25人の姿を隠すのは難しいでしょう」

「となれば、夜に行くか。ダルダリン城の兵力はどれくらいいるんだ?」

「いつもは100~200人、戦時だと少し増えるかもしれません。200~300とか」

「北方樹海の中に兵力を撒いているのに、そんなにいるのか」

「いると見た方が妥当でしょう」


 難しい問題だ。どう頑張っても安全に突破する方法を見つけることが出来なかった。


「だが、向かわないといけないな。少し時間を調整して夜に到達するぞ」


 進まない事には始まらないので、少しでも安全な夜に向かう事を決めた。少し時間が経つのを待ち、十分な休憩を取ったところで、重い腰を上げる。十分な休憩を取れたお陰で、足取りは軽いが気持ちは重い。もしかしたら敵の後背面に到着する前に戦闘になってしまう。


 そんな戦闘の覚悟を決めた自分達の後ろから、「途中ですれ違った巡視隊が戻って来た」という報告をカールから受けた。内心怪しまれたのかと焦りながら様子を見に行くと、巡視隊の姿は血だらけになっていて人数も少し減っている。


「どうした!なにがあった?」

「熊が……白い熊が」


 白い熊と聞いて思い浮かぶのは、数日前に山の上で遭遇したあの巨体だ。あれはウィルの活躍で崖の下まで真っ逆さまなはずだが……また別の個体なのだろうか?


「熊がどうした?」

「いきなり樹海の中から出て来て、散々人間を追い立てて襲っています!逃げてください!」

「分かった!お前らはダルダリン城まで走って報告してくれ!」

「了解!」


 エドガーとカールが深刻そうな表情をしている。その後ろでこちらに背を向けて話を聞いていたサルキとパウラが合流した。


「あいつだと思うか?パウラ」

「思う。死体を見てないし」

「俺らの後を付いてきたか、急がないといけないな。エドガー、パウラと先頭に立って城まで先導してくれ。カール、サルキ一緒に殿だ」


 部隊が走り出すと、後ろからバラバラになった巡視隊が追い付き、追い越していく。全員が全員、白い熊が襲ってきていると話していた。本来真夜中につくはずだったダルダリン城には、陽が暮れる前後でついてしまいそうだった。だが、白い樹海熊の報告を受けて混乱している時に到着できるのは、こちらにとって好都合なことだ。

 

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ