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16.ビバーク


「引け!!」


 先にぶら下がっているのがウィルだけなのもあって、カール率いる力自慢達があっという間に引き上げにかかっている。尾根の西側は断崖絶壁と言えど、少し斜度の有る斜面だ。落ち着いた様子のウィルが雪の下からヒョッコリと顔を出すまで、大した時間はかからなかった。


「大丈夫か!?」

「いや~、風魔法ってすごいんですね」


 こっちの心配をかき消すような最初の一言に、少し笑ってしまう。


「そ、そうなのか?」

「えぇ!落ちてる途中に、このまま叩きつけられ死ぬんだと思ったのですが、すごい勢いで吹いた突風と、突き上げる風であっという間に減速したんですよ!後はふわりと斜面に着地して、引っ張り上げてもらっただけです!」


 余程感動したのか、ウィルは息を切らしながら止めどなく溢れてくる言葉を、そのまま吐き出し続けた。風魔法を使った本人であるパウラも、ここまで褒めちぎられたことが無かったのか、少し照れくさそうな顔をしている。


「パウラの風魔法はそんなにすごいのか……」

「ちょ、ちょっと待って!褒め過ぎだよ!普通に最大出力で尾根側と、ウィルの下側から風魔法を使っただけ!多分みんなできるよ!」


 その言葉を聞いた者達はそれぞれ知り合いの風魔導士の顔を浮かべている表情をして、更に自分が15覚醒の風魔導士だと知っている何人かは、視線を向けて来た。


「少なくとも俺は出来ないぞ!皆、期待するなよ!だから、この部隊の”本当”の風魔導士はパウラだけだ。しっかり全員で守れ」

「了解です」


 樹海熊の姿が消えたことで、少しだけ緊張の糸が緩んだ雰囲気だ。先程までは一切見えなかった笑顔も見えた。


「そういえば、ウィル樹海熊はどうなったか見えたか?」

「最後に見えたのは、崖下へ落下していく姿です。登って来る時に下を数回見たのですが、舞い散る雪でよく見えませんでした」

「この急峻な尾根を転がり落ちたら、無事では済まないだろうな」


 カールの言葉に他の者達も同意見のようで、ゆっくりと首を縦に振り頷いている。

 少し落ち着いたことで気になり始めた空腹で、樹海熊の肉をどうにか入手できる方法がないか一瞬考えを巡らせてみたが、山の麓まで下りまた昇って来る労力と時間が釣り合わなかった。今回はあきらめるしかないようだ。


「ふぅむ……これで障害は無くなった。先に進もうか」

「「はい」」


 作戦が上手く嵌り、結果的に一人のケガ人も出さずに樹海熊を撃退できたことが信じられない気持ちだ。今まで予定通り、作戦通りにいった出来事の方が少なかったが、今回ばかりは万事順調に進んだことを感謝した。


 後方で待機していた者達が合流し、また我々は進み始めた。樹海熊に遭遇した分の遅れを取り戻すために、必死に歩みを進める。そのおかげもあってか、予定のビバークには日没と同時に到着することが出来た。


「随分と良い場所だな」

「流石に50人だと手狭ね」

「風が防げるだけ、十分だろう。贅沢は言えない」


 確かに尾根の陰にあたるこの小平原は、部隊で利用するには少々手狭で隣の天幕を使う者達と、背中合わせで食事を摂るような状況だったが、尾根の上に野ざらしで一夜を明かすより何倍もマシだ。

 いくら極寒の世界と言えど狭い空間に50人が密集し、飯を食べていると暖かく感じる。ただ周りに燃料となる様な木が生えていないこの高山では、冷え切ったパンとカチコチになった塩漬けの干し肉しか食べることが出来ない。


「パウラ、明日の行程は?」

「明日は太陽が中天に登るまでに尾根の縦走を終わらせたいところね、あとは残りの半日を掛けて山脈を横断して次の場所に向かう。って感じ」

「次の宿泊場所は決まってるのか?」

「うん……私の村が無くなってから誰も手入れしてないと思うけど、多分交易拠点はまだ使えると思うから、そこを使おうと思う」

「そうか、分かった。行程は長そうだな」

「ほぼ一日かけて下山する感じだから、慣れてない私たちは到着が夜になる事もあり得るよ」

「わかった。おーい、全員!明日は明るくなり次第出るぞ!早めに休め」


 「了解」の言葉が方々から聞こえた後は、静かに食事の続きが終わり、ひしめき合う天幕の中に入ると、樹海熊と対峙することになった疲れからか、眠りに入る為に苦労することはなかった。



 次の日は暗い内に全員が起床し、暁の空を見つめながらの出発だ。空を時々見上げながら歩き続けても、まだ空の半分がいつまでも明けない夜に支配されてる。


 静かに明けていく夜を見つめながらこの日は恙なく進んでゆき、太陽が中天に登る大分前に横断する道に到達することが出来た。

 横断する道は両側に急峻な山が迫る細い道であり、僅かに体勢を崩すだけで谷底の川に落下してしまいそうな場所にある。ただ通過するだけなら多少の恐怖心を抑え込めば簡単で、特に躓くようなことは起きることなく横断が終わった。


「ここがそうなのか?」

「そう、一応大丈夫みたいだね」

「随分と立派だな」

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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