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13.囮


「俺がやろう」


 騎士団の中だったら自分が一番動けるという確信がある上に、身のこなしも軽いだろう。囮は自分が一番適任だ。


「はぁ!?」「なにを言ってるんですか!?」「馬鹿かおめぇは」


 周りから散々な言葉を浴びせられる中、エドガーだけは冷静だ。


「リデル”隊長”。あなたはこの50人の”隊長”であり、”指揮官”ですよ。今、この場であなたの命は部隊の隊員一人の命より確実に重いんですよ。そして責任もあることを自覚して下さい」


 エドガーから正論を滾々と諭され、確かに自分が口に出した考えは迂闊だったと反省した。だが自分が囮をできない事で、新たな問題が生まれる。


 誰を囮にするかだ。


 安易に自分が行こうと言ったのも、この命題を避けたいという無意識な思考が生んだものでもある。

 囮に適しているのは、雪の上を歩くのを慣れていて、山になれていて、動きが俊敏で、持久力があること。

 この条件に一番当てはまるのがパウラだが、彼女がいなくなれば我々はただ北方樹海で遭難する運命が待っているだけなので、選ぶことは絶対にない。次点で出て来るのが森の手の面々なのだろうが、今回の白い樹海熊の件に限っては頼れないので、選択肢から除外される。

 

「騎士団の中で動けるのは誰だ?」

「……機敏さで言うなら、私でしょうか。武力的に言えばカールかと」


 ウィルが名乗りを上げた。確かに武力で言えばカールが圧倒的かもしれないが、パウラはその言葉に対してあまりいい反応を示していなかった。


「武力が有っても、白い樹海熊は30人以上で何とかなる話だよ?それに多分狂暴化してるあいつは、50人いないと無理だと思う」

「戦いながら、誘導するのは無理という事か?」

「絶対に無理よ、ここから見るから小さく見えてるけど、あいつ近づいたら10~15フィート(3~4.5m)あるんだよ?」


 という事はカールより3フィート以上大きいので、その大きさの敵と戦うべきではないだろう。


「じゃあ、カールは完全に命綱を持つ係だな。そういえば、白い樹海熊は魔獣ではないのか?」

「そうね、違うわ。そもそも樹海熊の変異種だと言われているのよ。だから、茶色の樹海熊と同じく、魔法が使えるわけじゃない。ただ圧倒的なフィジカルで押してくる」

「それはそれで厄介だな」

「魔法が使えなくても、力のみで生き残ってるからね。また一つ別格の強さだよ。ただアイツはそんなに俊敏じゃないからそこが狙い目」


 その後も3人の部隊長たちと、騎士団員で良い候補がいないかそれなりの時間話し合っていたが、結局帰結するのは、ウィルが一人で囮をするのが一番生き残れて確実ではないかという結論だ。


「……ウィル頼めるか?」

「それはもちろん」

「必ず生きて帰れよ」

「それももちろん」


 囮役が決まれば、あと必要なのは作戦だった。作戦自体は雪庇に誘導して落とすという根幹となるモノが既にあるので、あっという間に決まっていく。


「エドガー、騎士団に指示してロープを、あとは尾根の上に一応シールドウォールを作ってくれ」

「了解」


 作戦はウィルを先頭にして、ロープの限界ギリギリの所に自分とカール、あとカールの部隊員で力持ちが4人、それと雪庇を見分けるためのパウラを伴って8人で白い樹海熊に近づき、一番近い雪庇に誘導する。失敗しても退いて同じ手順を繰り返し、今自分達から見える2,000フィートにある最後の雪庇まで繰り返す。そこにはシールドウォールの騎士団を置いて、最終手段として無理矢理誘導する算段だ。


 だがそれとは別にして、自分にはひとつの覚悟がある。

 

 最後の防壁であるシールドウォールに向かってくるようなことが有れば、必ず騎士団に死者・負傷者が生まれるだろう。


 それだけは避けたい。


 今自分達が一番優先するべきは、この精鋭50人を敵の後背面に送り届けて敵を倒すこと。

 もし、誘導が上手くいかなかった時は、自分が持っているマジックアローの一本を使う。ここで使ってもマジックアローはあと一本残る。その残った一本でも、自分は必ず敵指揮官を仕留めるし、仕留めることが出来る。


 目の前でロープの準備が終わった。


「隊長命綱の準備が出来ました」

「ウィル!」


 カールに呼ばれたウィルは、体にしっかりと巻き付けると、その縛りを確認するようにカールが締め直した上に、持ち上げて見せた。


「うわぁぁぁ、ビックリしますよ!」

「これで、崖下に落ちても大丈夫そうだな」

「ウィル、ちょっと」


 宙ぶらりんとなっているウィルを見ていたパウラに呼び止められ、崖下に転落した時の対処法を教えて貰っている。

 その姿を見ながら、自分のマジックアローを矢筒で一番手に取りやすい場所に移動させた。ギリギリまで使用するのは控えるが、こいつの出番が無くうまくいってくれる事を祈るばかりだ。


 パウラの説明を受け終わったウィルを伴って、森の手たちが待機している尾根の東側を通り越して、元の場所まで戻った。尾根の上はほぼ無風で、太陽の暖かさを感じることのできる天気だった。


「それじゃあ行こうか、ウィル……頼んだ」


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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