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5.冬の北方樹海


 冬は日が短い。


 つまりは夜の寒さが早く訪れるという事で、その寒さに身を刺されながら積雪の中ラッセルして歩くのは、体力の消耗が凄まじい。それを避けるためにと森の手から”スノーシュー”と呼ばれるものを渡された。

 森では樹木にさえぎられ、雪の積もり方が均一でないので非常に歩きにくいものだが、スノーシューのお陰で深い雪でも埋まらずに歩くことが出来る。パウラもスノーシューに慣れているらしく、北方樹海付近で暮らす者達には常識なのだろう。

 前に来たときよりかなり早く陽が落ち、雪が降り始めて自分達の息遣いと雪を踏みしめる音しか聞こえない。辺りは一つの明かりもなく、月明かりが届かない高い樹木に囲まれた樹海では、手元にある松明だけが頼りだった。そして、その松明の明かりを30人が持っていても、どこからともなく不安が襲ってくるのが北方樹海という土地だ。


「隊長、間もなく第一哨戒ポイントです」

「大分掛かったな」

「仕方ありません、歩きづらいですから」

「あぁ、後は食料が問題になりそうだな……」


 ここまで半日歩いたが、小動物の一匹さえ未だ見ていないのだ。前回のように新鮮な肉を入手したり、キノコや野菜を取りながら食事の足しにすることも難しいだろう。これは、干し肉とカチカチのパンと野菜の漬物でしばらく我慢しなければならない。


「我々も、哨戒ポイントに長期保存用の食糧があるだけです。あっ……丁度ポイントが見えて来ましたね」

「やっとだな」


 先に森の手の先導部隊が到着していて、火をおこし夕食の準備をしている。今回は15人もの人間が先にいるので既にあふれ返っている。


「よし、皆!今日はここで宿営だ」

「了解」


 前回の10倍の人数が当然穴倉の中に入れる筈もなく、それぞれが分けて持ってきた天幕を建て始めた。食事の量も前回の比にならないので、集めてもらった枝と木をそれぞれ天幕前まで持っていき、火種を貰って調理を始めている。

 自分にとっての一番の違いは周りには部隊長たちが勢揃いしていて、自分達の代わりに食事やら天幕を用意してくれる部下がいる事だろう。

 染み付いた性というものは怖いもので、どうも甲斐甲斐しくお世話されるのは落ち着かず、手伝いそうになってしまう所を、エドガーに「堂々として、部下たちを導くことだけを考えるのが隊長の仕事です」と窘められた。

 

「飯が暖かいだけで美味いな」

「体が解けていくようです」

「そういえば、見張りは」

「ご心配なく、今回こそ森の手のみで回しますよ」


 サルキは今回こそ譲らないという表情だが、そこに厳しさはなく任せてほしいという目線だ。


「では、頼む。それにしても、コルテス家の鎧が重すぎるな。装備して動いてはだめなのか?」

「やめておいた方が良い。その鎧は間違いなく北方樹海で恨みを買っているから、見られると襲われるかもしれない。それにその鎧みたいに首元が鉄だと皮膚がくっついて剝がれるぞ」

「パウラさんの言う通り鉄は皮膚を持っていかれることもあります。それにヘルムとプレートアーマーで25組ですから交代しながら持つしかありません」


 ウィルがコルテス家の鎧について文句を言うと、パウラとサルキから倍以上の正論が返ってきた。ウィルは圧倒され「わ、分かりました」と完全に圧されている。


「まぁまぁ。今日はもうすぐに休んで、明日に備えよう」



 次の日もやることは変わらず、雪が不均一に降り積もった樹海の中をひたすら歩き続け、次の哨戒ポイントまで向かう。朝日が昇ると同時に出発した分、陽が落ちる寸前には第二哨戒ポイントまで到着することが出来た。


「いや、これキツイな」


 到着したと同時に、思わず声に出てしまうほどだ。今回は日数も多い分荷物も多い上に、チェストプレートを背負って、歩きなれない樹海の雪の上を歩きなれないスノーシューで歩く。そのすべてが負担だった。森に慣れていると言っても、知っている場所ではここまでの積雪が無かったのでほぼ未経験と言っていい。騎士団の面々もそれは同様で、今回自分を含めてかなりの遅れが出ていた。


「冬の樹海は歩きづらいですからね」

「それにしても森の手とパウラは早いな」

「慣れね」「慣れですかね」

「慣れか……荷物を運ぶのにソリとかは使えないのか?」

「木が多すぎてまともに歩けないから無理ね」

「そうか……」


 体が歩いただけで熱を持っていて、明日には筋肉痛が来そうなほど普段使わない筋肉を使っている。今は早いところ温かい食事をとってゆっくり寝たいところだが、今晩の内に話し合っておかなければいけないことがあった。


「パウラ、明日からの道なんだけど」

「まだ4日は歩くよ、支流は分かる?超えた先になるから」

「方向はこのままでいいのか?」


 サルキは森の手の責任者として知りたいようだ。


「いや、山側に寄って行って欲しい。3日目までには山の麓ら辺に着ける形がいい」

「そうか分かった。じゃあ斜めに突っ切って行こう」

「先導は引き続き森の手で大丈夫か?」

「お任せください」

「うん、任せたよ」

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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