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2.褒賞


 凄まじい音と共に体が後ろに吹き飛んだ。予想していた衝撃に受け身を取りながら、勢いを殺して立膝の体勢になる。

 手をかざして避けなければ痛いほど顔に雪が打ち付ける。ゆっくりと目を開けると、舞い上がった雪で視界が奪われて何も見えない。地面に手を付けていなければ、自分がどういう態勢をしているか分からない程だった。


 空高く舞い上がった雪が落ち着き始め視界が晴れて来ると、目の前には白と赤の混在する世界が広がっている。鮮血に染まった真っ白な地面は、敵を恐慌状態に陥れていた。

 ある帝国兵は腰を抜かしてその場に座り込み、ある帝国兵は漏らした尿が足元を黄色に染めている。マジックアローの威力を見た敵は、例外なく動くことが出来ずにいた。

 だがそれは味方も同様でシールドウォールを組んでいた分、まともに衝撃を受けていないが目の前の血と肉片が散らばる惨状に、動き出すことが出来ずにいる。


「おい!行くぞお前ら!!敵を殲滅しろ!!」

「「お、おぅ!!」」


 吹き飛んだ自分とは違い、もともと居た位置で踏ん張っていたカールが、周囲で体勢を崩して呆気に取られている味方を鼓舞しながら立ち上がった。

 それに続く者達が続々と立ち上がると、一歩一歩雪を踏みしめるように前進し、生き残っている敵を”刈り取り”始めた。その姿を見てシールドウォールの味方も徐々に動き始める。味方が帝国兵を仕留める動きは的確で速い。

 

 既に砦内に侵入した敵に戦意は無かった。

 徐々に包囲を狭め始めた味方に、敵は後退というにはあまりにお粗末、もはや逃亡と言っていい状態で砦外へと駆け出している。

 新たに侵入して来ようとする城門外の帝国兵と、状況が把握できておらず動くことが出来ない帝国兵、砦内から恐慌状態で撤退を始めた帝国兵が、城門付近で交錯して大混乱が生まれているのを遠目で確認できる。


「仕上げだな」


 いつの間にか自分の横に並んでいた辺境伯が呟いた。

 次の瞬間外門と内門の間、普段は投石や矢を射かける場所に用意されていた大量の石が、投下され城門を完全に塞いだ。背後を塞がれ味方を石の下敷きにされた帝国兵は、僅かに残った戦意がある者を残して投降、抵抗していた者達も直ぐに包囲殲滅される。その後は素早く、遠目に見える城門の内門が味方の手によって再度閉じられ、閂を掛けた上に厳重な補強が施された。

 

「素晴らしい威力だった」

「本当は、門の向こうまで貫きたかったのですが……」


 隣で事の推移を一緒に見つめ続けた辺境伯が感心したように自分を褒めてくれるが、正直なところ納得はいっていなかった。


「門の向こう?そこまでの物なのか?マジックアローというものは」

「これはあくまで自分の感覚での話ですが、多分マジックアロー自体の強度がもう少し有れば、砕け散らずにもう少し残ってくれると思います」

「そう深刻になるな。これだけ倒すことが出来れば十分だろう」

「ありがとうございます」


 マジックアローのフィードバックは全てが終わった後に、ルーシーに言う事にしよう。


「誰の事を考えているんだ?」

「んぇ?」

「顔に出ているぞ、市井の女で良いのがいたのか?」

「いえ!辺境伯の耳に入れるような話では」

「褒美の話は、その縁談にしてやってもいいぞ?将来有望な騎士団のアーチャーとの縁談なら断る者も居なさそうだ」

「違います!ただ私は、帰ってきたら開発者であるルーシー様に、マジックアローのフィードバックをと思いまして」

「うーむ、そうかリデルの思い人はルーシーか。それは難しいぞ~」

「ですから!違います」


 ニヤケながら茶化していた辺境伯が、いきなり真顔になり周囲に誰も居ない事を確認している。


「リデル。ルーシーを手に入れたいなら、貴族を目指せ」

「ですから「まぁ、聞け」」

「既に前の任務でこの辺境伯領の貴族たちに実力を見せた。今回の戦いでは類稀な働きを見せよ、”騎士爵”を与えられるような働きだ」

「……それは」

「マクナイト男爵家の跡取りは”いない”」

「ルーシー様がいらっしゃいます」

「女性が跡取りとして認められるのは、中央政府に対してそれ相応の貢献がある場合か、婚姻をするまでの3年間だ。このままだとマクナイト男爵家は取り潰しになる」

「そんな」

「それが現実だ。そして爵位を受け継ぐ為に婿入りしようとすると、元々貴族の一員であるか自身が貴族になる必要がある」

「騎士爵も貴族の」

「そうだ、一番下だがな。この王国では辺境伯以上の爵位を持つものは、騎士爵を”2人”独断で自分の騎士団の為に中央政府のお伺いを立てず任命できる」

「つまりラスティラヴァ辺境伯にも任命権が」

「その通り。今、私が任命しているのは騎士団長一人のみだ。もう一人できる」


 自分が息をのんでいると、真顔だった辺境伯が先程のニヤケ顔に戻った。


「まぁ、リデル君がルーシー嬢を手に入れたいかは別として、今君の手にはそのチャンスがある。そして責任も」

「必ずや成功させて見せます」

「すまないな。本来は領主であり軍指揮官である私が負うはずの責任なのだが……それ相応の褒賞を用意して待っている」

「はい」

「出発準備に掛かれ。騎士団長に伝えてくれれば、私に報告はいらない」

「行ってまいります」

「ルーシー嬢が待っているぞ!」

「辺境伯!」

「ハッハハハ」


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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