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1.始動


「どうも」「久しぶりじゃないですか?」

「ラフとラナーか!元気そうだな!」

「我々は北方樹海で暇を持て余してましたよ。リデルさんは元気でしたか?」

「うーん、まあな。擦り傷くらいしか無いから、運はいいんだろうな」

「それは、よかった。あっ、おーい」


 ラナーが手を振る先には、到着した森の手たちの一団がいる。その中から3人が外れてこちらに寄ってきた。サルキ、クレス、カンブリーの3人だ。


「どうもリデル”隊長”」「またあなたが隊長ですね」「お久しぶりです」

「3人とも久しぶりだな。元気だったか?」

「えぇ、それにしても苦戦していますね」

「そうだな、兵力差がかなりある上に援軍がないのだから仕方がない。逆に何故持ち堪えているのか不思議なくらいだよ」

「辺境伯は防衛戦だと王国一上手いと噂ですからね」

「そうだったか」

「そうですよ、防衛だと野戦でも籠城戦でも群を抜いています」

「サルキは詳しいな」

「伊達に長いこと生きてませんから」

「メンバーの選抜は済んだのか?」

「勿論、終わっています。この5人をそれぞれ小部隊の隊長として5人ずつ選びました」

「心強いな。それじゃあ、これからよろしく頼む」

「お任せを」


 北方樹海の調査をした時以来、久方ぶりに5人と再会したが全く様子が変わっていなかった。それも当然、解散した時からひと季節も経っていないのだ。このカレリア砦に来てから、いつまでも終わらない帝国の猛攻に1日が長く感じるようになった弊害だろう。


 パウラと参加した会議から2日が経っている、今日が作戦の始動日だった。上空では一切の矢を通さないように二人の風魔導士による防御魔法が発動していて、その下の砦内は慌ただしく動き普段より人がかなり多い。徐々に準備を完了させた兵士たちが門から真っ直ぐ整列を始めた。

 第一城門を完全にふさぐ為の石の調達と設置、その他作戦の微調整をこの3日だけで終わらせられたのは、ひとえに我々の上に立つ辺境伯を始めとする貴族たちの力量に他ならないだろう。

 少し気を緩ませながら、忙しく動く人を眺めていると肩を叩かれた。


「よぉ、緊張してるのか?」


 振り返ると壁、もとい壁のように大きい男が立っていた。見上げた先には大きな戦鎚を担いだカールが茶化したような笑顔でこちらを見ている。


「いや、何故か意外に緊張はしてないんです。ただ、こういう役回りが多いなと思っただけで」

「”男”に生まれたからには、目立たないより目立つ人生の方が良いだろう」

「それもそうですね」

「あと、丁寧な言葉を使わなくてもいい、今日から暫くあんたが隊長なんだからな」

「わかった。それじゃあ、護衛を頼むよカール。俺が矢を放つときには合図をするから」

「合図が来たらどうすればいい?」

「敵をなるべく遠くまで弾いて、俺の左横でしゃがんでくれ。後ろも前もだめだ。真横で」

「了解”隊長”」


 その会話から間もなく、全ての準備が整った。朝に降り止んでいた雪が、静かに居並ぶ兵士たちの肩に積り始め、鎧が白くなっている。シールドウォールが両側に展開され、その後ろには厚みを出すための兵士たちが居並び、本来の目的を隠すために予備の弓兵たちが斜面に展開した。今、戦える全ての兵力がいると言ってもいいだろう。


「リデル、準備はいいか?」

「はい団長、いつでも」


 団長が上げた右手を静かに振り下ろすと、城壁の上に対する防御魔法は無くなり、特に城門周りからの抵抗が弱まる。それを弱体化と見た帝国は城門周りに兵士たちを集結させ、破城鎚を用いず自らの手でもって丸太を打ち付け始めた。その鈍く響き渡る音が10を数えた所で、外門がわざとこちらの手によって解放される。

 内門は最初から一撃で開くように閂を外されていて、勢い余った敵兵が丸太に引きずられるように出てきた。

 その転倒した帝国兵に向かって弓矢が浴びせられると同時に、転がる味方の死体を乗り越えて帝国歩兵が大量に流れ込む。

 あっという間にシールドウォールの内側を敵が充満し始める。大量の帝国兵が後ろから押すように入ってくるため、もはや内側の敵は剣を振ることは叶わず、敵味方の兵士同士で押し合いが発生している状況だ。

 味方弓兵が斜面から一方的に敵を射抜き続けるこの状況を続ければ、いつかは敵が倒れるがそうもいかない。数か所シールドウォールの綻びが見え始め、予備隊として控えていた部隊が次々に突入される。


 もう十分だろう。


「カァーーール!!!」


 自分の声に反応したカールが、他の精兵たちと共に一気に敵を押し返すと敵が転倒した。折り重なるように倒れた帝国兵は、重い鎧と味方に挟まれ身動きが取れない状態だ。

 ここからは”全てが自分に掛かっている”と言ってもいいが、不思議と心は乱れていなかった。失敗すればカレリア砦が落ちるという重圧も感じることはない。自分は自分の力量を信頼している。


 重心を意識して、姿勢を整え、弦に指をかけた。



 弓を持ち上げ、矢に魔力を込め始め。



 弓を引く時に鏃に向かって流すイメージに変えて引き切る。



 今回は一撃に全ての魔力を込めるのだ、体から全ての魔力が流れ出ていくのを感じる。



 精兵たちが左右に散開し、戻って来たカールが自分の左側に張り付きしゃがんだ。



 今自分の目の前に味方は一人もいない。転倒し立ち上がろうとする帝国兵のみだ。



 「風よ」


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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