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1.抵抗


「リデルさん!こっちにも取り付き始めた!」

「だぁ!多いな!!」


 自分がカレリア砦に到着して10日目。予想より大分掛かってしまったが、城壁の上で弓を握ることが出来る程度には手の状態は良くなっていた。まだ少し痛む右手を抱えながら、必死に味方と城壁に取り付いた敵を追い払う。


「フレディ!後は任せる!」

「はい!」


 城壁に長梯子を掛けようとしていた敵を倒し、後は騎士団のアーチャーに任せて他の場所を助けに駆け回る。それが騎士団長から自分に任せられた仕事だ。

 戦況は常にこちら側が押され気味、問題は敵と味方魔導士の数と質だった。帝国軍は日夜問わず常に風魔導士が動いていて、斉射した矢が通ることは無かったのだ。もちろん投石機やバリスタによる損害を与えられてはいるのだが、城壁に取り付いて来ようとする敵兵をすべてそれで撃退することは不可能だった。

 一方のコチラといえば風魔導士の数は2人と少なく、どうしても敵の攻勢全てに防御が出来るわけではなかった。そこを利用されている。


「…デルさん!リデルさん!!」

「んだぁ??」


 振り返るとそこには、険しい顔のウィルがすぐ後ろにいた。敵との近接戦闘がない今、騎士や一般歩兵は投石、補強や物資の運搬、伝令などを行っている。ウィルも待機の部隊ではなく伝令をしているようだ。


「ウィルか!なんだ??」

「風魔導士の支援が間もなく無くなります!魔力切れです」

「うわぁ、まじかよ、次の支援は?いつからだ?」

「少なくとも4刻はかかります!」

「なげぇな」

「えぇ、私は他の所にも行ってきます!盾持ちはアントンの部隊が来ます」

「あいよ!」


 城壁上を姿勢を低くして走り抜けていく、ウィルの後ろ姿を見送った。周りの者達に伝令からの言葉を伝えるのも、自分の仕事だった。


「マジすか!?夜に支援なしですか?」

「らしい」

「くそが、バレたらかなり厳しいっすよ!」

「やるしかない」

「あぁ!もう!」


 振り返りゆっくりと見渡すと、城壁の上に立つ者たちの影が伸び、陽が落ち始めていることを知らせている。朝からずっと戦い続けている我々は、皆疲弊し言葉遣いが荒くなっていた。

 だが言葉遣いなど問題ではなく、本当に厳しいのは夜に風の防御魔法が切れると、弓矢がいつ放たれたか見えない状態で戦わなければならないことだった。つまり盾の後ろに立つタイミングと、城壁から乗り出して敵に矢と石を浴びせるタイミングが計れない。怪我する者、戦死する者が必ず増える。





 風魔法が切れたことはまだ悟られていない様だ、帝国の弓兵部隊はまだこちらに接近してきていなかった。そして城壁下にいた敵部隊も夜戦に入る為に一時的に撤退を始め、こちらの体勢を整える余裕が生まれた。


「アントン!あと3枚は盾が欲しい!」

「待っててください!」


 急ピッチで進む城壁上の防御拠点の設営に身分の貴賤問わず、動けるものが総動員されていた。木の盾が城壁のいたるところに林立し、消耗した矢と石、そして人間の補充が行われている。自分も城壁の下に降りて、腰と背中の矢筒に出来るだけ大量の弓矢を詰め込み、また城壁の上に登る。

 10日目にして、風魔導士の魔力回復が追い付かず、防御魔法のリズムが崩れてしまったのは我々にとっては痛手だった。防御魔法が機能していないことを帝国側に知られると、いままで緩慢だった夜間の襲撃が手厳しいものになるかもしれない。更に我々にこれ以上の援軍が来ない事もいつかは知られるだろう。そうなったら帝国の攻め手は更に激しさを増して、我々に襲い掛かって来る。そうなった時にいつまでカレリア砦が持つかは、知識のない自分でも想像することができた。

 重たい体と重たい矢筒を背負いながら城壁の上まで登り切ると、西の山に沈み始めた太陽が徐々に周囲を綺麗な橙色に染め上げていた。遠くに隘路を満たす帝国軍が見えなければ、なかなか風情のある光景だったかもしれない。

 恐らく敵もすぐにはやってこないだろう。この短い時間でも休息を取る為に、兵士たちは胸壁にもたれかかり、体を休めている。自分もそれに倣って休息を取ろうと、ゆっくり腰を下ろして目を閉じた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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