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3.久しぶりの顔ぶれ


 大ホールが近づくにつれて、更に敵味方の屍の数が増え、怒号と歓声が聞こえ始めた。大ホールはこの城で一番広い廊下が繋がっており、その中をこだましながら、こちらに伝わってくる。声が聞こえるという事は、生きている者達も多いのかもしれないという希望が湧いてくる。


 人のいない廊下をひたすら進み、角を曲がると大ホールにつながる廊下に出た。大ホールの前に大量の敵兵が見える、数はパッと見ただけでも100以上。声の主はこの男達だ。


 いちばん手前にいた男が振り返り、二度見をする。こちらに気がついたようだ。周りに声をかけこちらに向き直った。

 何故こんなところで溜まっているかは分からないが、このままだと数で押しつぶされてしまう。だが、ここにいる奴らを全部倒せれば、敵の3分の1は減らせる事になる。


「避けてくれ。なるべく壁際へ」


 マジックアローの最後の一本だ。これで3本も使う事になるんだ、「これで1年間給金無しかもな」なんて考えが頭によぎった。


 こちらに気付いた敵が、人数を見て余裕の表情でこちらに歩み寄ってきた。


 味方が壁際に寄ったのを確認して、矢を番え、魔力を込める。


 魔力を全部使っても、ここにいる敵全てを消し飛ばすのは無理だろう。横に広すぎる。


 魔力の3分の2だ。それ位であれば壁際の味方に被害が及ばないはずだ。


 この矢の正体を知らない敵は、ゆっくりと引き絞る弓に臆する表情を見せない。


 自分がマジックアローに負けて、吹き飛ばされる事は分かりきっている。受け身を取ってすぐに復帰しよう。


 何度放とうと慣れない衝撃が全身を打ちつけた。その衝撃を受け流すように後ろに転がり続ける。


 受け身を取ったお陰で、今度はすぐに起き上がる事ができる。心と受け身の準備をするだけで、みっともなさが、かなり緩和されたはずだ。

 ゆっくりと視線を前に戻すと目の前には、狙った兵士を中心に敵が円状に砕け散っている。

 自分の行った事から思わず目を背けてしまった。樹海の時は粉々過ぎて、グロテスクさを感じなかったが、右上半身だけ吹き飛ばされ、立ったままの兵士を見てしまうと吐き気が止まらない。

 何とか勇気を出して視線を前に戻すと、奥の無事な兵士が死の円筒を通し、唖然としてこちらを見ている。


「ウッ」


 ダメだった。耐えきれなかった。喉の焼けるような痛みと共に、胃の中身が全て出ていく。

 何とか直視しようと、2度3度と見るたびに抵抗のしようがない吐き気に襲われた。

 すでに中身のない5度目の嘔吐が終わり、何とか視線を上げると、勇猛にも味方の屍を超えてこちらに向かって来ていた。それをこちらの前衛が何とか受け止めていた。フレディだけが壁際にまだいるが、彼も吐いていたらしい。足元が吐瀉物まみれだった。

 マジックアローによって敵は半分以下になったが、このままでは結局押し込まれてしまう。

 矢を放つときに置いた矢筒から矢を引き抜きながら、なるべく死体を視界に捉えず矢を放ち続ける。別のことに集中していないと、また吐いてしまいそうだった。


 ひとつ目の矢筒が切れ、ふたつ目の矢筒を少し使った時、戦闘が終わった。弓の弦を引き続けた右腕は熱を持ち、指は千切れそうなほどの痛みだ。


「終わったか」

「はぁ、はぁ、この廊下は、なんとか」


 必死に3人のアーチャーを守っていた前衛は、息も絶え絶えで血に塗れていた。側には何本もの切れ味の落ちた剣が突き立てられている。


「進もう」


 奴らが群がっていた大ホールを確認しなければいけない。誰がその中に篭っていたかは分からないが、これだけボロボロになったのだ。無事でないと割に合わない。

 残りの矢が入った矢筒を背負い直し、大扉の前まで行くと、両側には大量の椅子や机で作られたバリケードで入り口から奥を狭めてある。

 そのバリケードの間には、外の惨状と目の前の脅威に挟まれ、困窮した男たちの背中が見えた。奥には一際目立つ、熊のような血だらけの男。カールが大きな戦鎚で、10人以上を牽制している。


 落ち着いたフレディと、矢が残り少ないカンブリーに目線を送った。前衛はもうヘトヘトだ、まだ元気な20人近くの敵がいる。

 右腕と指はもう既に限界だったが、1人ずつ背中に矢を射かけた。ギョッとしたように振り返ってこちらに向かってくる敵は、味方が数で抑える。


 最後の1人を射抜いた時、手は震え、弦には血がついていた。返り血ではない、自分の指から出たものだ。


「よく戻った」


 懐かしい落ち着きのある声の主は、カーマイン辺境伯だった。傷を負った左腕と、血だらけの剣が激戦を物語っている。


「リデル、調査から戻りました」

「助かったぞ、もう限界だったからな」


 あと少しで死ぬところだったにも関わらず、そう言いながら笑う辺境伯は、肝が座っている。


「こいつはまだまだ元気そうだがな。血だらけだが、全て返り血だ」

「辺境伯、ご冗談を」


 カールの全身を赤く染める血は、全て敵のものらしい。その後ろで介抱されている人に目がついた。


「ユーリ隊長...」

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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