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12.川下り


「これムリだ」


 船主で踏ん張って艀を引っ張る作業は最初こそ順調だったが、維持することが出来ずにいた。


「どうしたんですか?」

「握力が無くなった。維持できない」


 風魔法を噴き出して、前に進もうとする矢を持ち続けるのは、かなりの力を使った。

 そこらのアーチャーより強弓を使っている分、握力には自信があった。だがこれは無理だ。ずっと綱引きをしているような感覚になる。


「コイツに矢を突き立てるのはどうでしょう」


 疲れで腕を投げ出して、休憩していると声がした。その方向を見てみると、アントンが鹵獲した敵の盾を持っている。


「やってみよう!」


 3枚の盾を船首に重ねて括り付けた。1~2枚だと貫通しそうな気がしたからだ。下には適当な土台を置いて、そこに矢を置いた。いきなりブチ破られても困るので、極限まで魔力を絞ってから、徐々に魔力量を増やしていく。


「いいんじゃないか?コレ」

「楽ですか?」

「楽だし、壊れ無さそうだ」


  鹵獲品に括り付けたマジックアローに、指先だけで魔力を注ぐこのやり方だと、矢を握ることに意識を持っていかれない分、先程より更に長い時間維持できそうだ。

 暫くその姿勢を続けて、ふと冷静に自分を俯瞰で見ると何とも情けない姿をしている。

 自分の放ったマジックアローで吹き飛ぶ上に、矢に手をちょこんと乗っけて”ぼーっ”としていたりと、自分が理想とする隊長としての格好良さとは、程遠い姿な気がした。

 よくない方向に向かっている自分の思考を、元に戻すためには違う話題が必要だった。


「そういえば、エドガーは貴族に詳しいんだな」

「えぇ、まぁ趣味みたいなもんです。カーマイン辺境伯は、図書館を平民にも開放してくれていますし、部隊長クラスまでは最新の情報を共有して下さるんです。なので趣味で、帝国の土地持ち貴族の家紋や、人口規模、特徴とかを頭に入れてるんです」

「それは…凄いな」

「だから、今回の調査隊に選ばれたんだと思いますよ」


 今回の目的は”何者が何処いるのか”を探ることだった。帝国に詳しいエドガーは適任と言えるだろう。

 それにしても、図書館まで解放しているとはカーマイン辺境伯は貴族らしくない。本を読んだりなどの勉強は、貴族や商人、魔法を扱える者しかしないものだ。それ以外の人々が勉強することを嫌がる貴族も多い。

 魔法学校でさえ、貴族以外を入れるなと主張する貴族もいる。近衛騎士団を離れる原因になった、アーロンの出自であるクレース侯爵家なんかがその筆頭だ。

 結局この主張は、魔導士の人数確保が困難になるという事で消えたのだが、それでも未だ主張し続けているらしい。


「隊長こそ、口調とか所作がおおよそ平民らしくは無いんじゃないですか?」

「親がな…。あとは魔法学校に一年だけいたのと、王都の訓練騎士団にいたからかな。そこで叩き込まれるんだよ。寝る時以外は全て勉強や訓練に使う3年間だったから」


 ここに来てから沢山の事を経験している分、魔法学校に始まり、訓練騎士団、近衛騎士団に居た頃が、かなり昔のことに感じる。

 森の手の者たちが都会のお坊ちゃんと誤解していたのは、そこの教育のせいかもしれない。

 しばらく無駄話をしていると、そろそろ魔力切れが近そうな感覚が来た。長い距離を走り切る寸前のような身体中が重い感覚だ。


「そろそろ魔力が切れそうだ」

「わかりました。漕ぐぞー、起きろー」

「「「はーい」」」


 今の状況を知らない人が見たら、エドガーの方が隊長然としている気がする。掛け声に4人の男がノロノロと休憩から起きて来て、櫂をもったと同時に魔力が切れる。


「「「「せーの」」」」


 掛け声と共に漕ぎ始め、艀の速度は少し落ちたが、それでも順調に進んでいく。


「サルキ、ノルデン城まであとどれくらいで着く?」

「多分、あと1日くらいでしょうか。その特製の矢に魔力を使うのであれば、もう、さっきの様な進み方は出来ないですし」


 確かに、これからノルデン城での戦闘を控えているかもしれない、魔力の無駄遣いはしない方が良い。


「また休んだら如何でしょう」

「そうさせてもらおう」


 魔力が切れることで、体調が悪くなったりすることはないのだが、体は疲れているのか毎度よく眠れる。またもや意識があっという間に遠のいた。



 前と違って寝起きはすこぶる悪かった。なんせ艀が揺れ過ぎているのだ。レイトリバーを照らすのは月明りのみで、周りはまだ暗い。


「ぉはよう、揺れが凄いな」

「レイトリバーが増水することはあまり無いんですが、お陰で早く着きそうです」


 指揮はサルキに変わっている。しばらく降った雨によって川は増水して濁ってる上に、流れが随分と早い。夜目が利く獣人族でないと、この濁流では直ぐに座礁してしまうのだろう。櫂を持つのも全員、森の手だ。


「昨日は増水していなかったから、このまま行けるもんだと思っていたぞ」

「樹海のレイトリバーが増水する時は、何故か雨の降った次の日かその次の日に増水するんです。理由はよくわかりません」

「初めて知ったよ」


 夜が明け始めて夜目が効かない自分も、ぼんやりと周りが見える。フレディが怯えて眠れていないようで、横になっているというより艀にしがみついているように見える。この環境で他の騎士団の者たちは寝ているのが、図太いとも言えるだろう。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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