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8.敵陣


 捕まっていた者たちが、普通に走れることを確認して最後尾に回った。弓を背負い直して、短剣を収めながら走り出す。少し見えただけでも、間違いなく自分達より数が多い。真正面から相手にしてしまうと数の利で押し切られてしまうだろう。

 鉄の鎧を着用しているあいつらより、身軽な自分達の方が早いはず。時々振り返りながら走るが、差は開いていくばかりで、追いつかれそうにもない。

 敵陣の出入口に差し掛かったところで、しっかりと後ろを振り返ってみたが、距離が大分離れた。まだ振り切れていないが、この調子で行けば大丈夫だろう、心の中でひとつ大きなため息が漏れた。


 切り株だらけになった樹海の跡を、見渡しながら走り戻ると結構な範囲が切り倒された事がわかる。

 もしかしたら途中で会ったあの魔獣、トリポキシーはここら辺に住んでいて、住処を追われ樹海の浅い場所で出会ったのかもしれない。それだったらあの場所で出会ったのも納得できる。居場所を失ったあの魔獣に対して、少しの憐憫が心をよぎった。


 あと200フィート足らずで樹海の中に隠れることができる。後ろを振り返ると、まだ諦めずに追いかけてきているが、その姿は小さい。ひとまず安心だ。


「取り敢えず撒けそうですね!」


 フレディがこちらを振り返って油断の笑顔を見せるが、その後ろの樹海からゾロゾロと人影が出てきた。あと少しで逃げ切れそうだっただけに、暫くはフレディを恨むことになりそうだ。

 1、2、3...10人だ。


「えっ?なんですか?うわっ」


 全員の固まった表情をみてフレディも察したようだ。油断を吹き飛ばす正面の現状に思わず声が漏れている。

 こちらは長い距離を走ってきた後だ、無理やり突破して逃げ切るのは厳しい。今度は奇襲ではなく真正面から勝たなければならない、さらに長引くと後ろから挟まれると来たものだ。

 矢を取り出そうとするが、腰に回した手が空を切り、持ってきた分は使い果たしたことを思い出した。覚悟を決めるしかないようだ。


「やるしかない、素早く決着をつけるぞ」

「「「「おう!」」」」


 短剣を抜きながら前に歩き出し、徐々に加速する。相手も同じだ。


 横隊同士が正面切ってぶつかり乱戦に突入する。


 自分がやりあうのは、小柄でそこまで強くなさそうな男だ。手早く片付けて、他の者たちを手伝うことにしよう。と思った矢先、”ブン”という音と共に、顔の目の前を刃が通過した。危なく頭の上半分がなくなってしまう所だ。

 そこからは結局いつも通りだった。余裕だと思った相手にも、普通に押されてしまう。周りを見ても皆苦戦している。特に自分とフレディだ。その分他の者たちが複数人を相手にしている。両端のサルキとウィルは2~3人を相手にして互角に戦っている。

 相手の刃を避けたり、受け流したりするしかない自分に、辟易してきた。

 だがそこにチャンスが転がり込む。隣のラフが男を戦鎚で吹き飛ばし、自分の相手にぶつかりながら倒れた。


 今しかない!


 体勢を崩した相手に突進する。慌ててこちらに突き出してきた剣を弾き飛ばし、そのまま首に剣を突き立てた。

 血に溺れる男の手から剣を奪い取り、周りを見渡す。ラフも吹き飛ばした男にトドメを刺したところだ。

 なんとか人数差が縮まってきたが、それでもこちらが不利だ。更に振り返ると、先程まで小さかった追手が、表情が見えるくらいまで近づいている。

 もう乱戦を解けないくらいまで入り乱れている状況を見て、もう連戦は避けられないことを悟った。もしくはしんがりを作って何とか逃げるか。


「隊長!」


 乱戦中に後ろを見たのは迂闊だった。サルキと戦っていた1人がこちらの目の前にいた。

 振り下ろしてくる刃を横っ飛びに避けるが、完全に体勢が崩された。今度こそ確実に仕留めようと、相手が迫って来る。


「逃げろ!」


 死が迫る中、隊長としての責任がそう叫ばせた。


 振り下ろされる剣を受けようと短剣を頭の上に構えたが、死は一向に振り下ろされなかった。

 額に暖かい水があたり、見上げると首から突き出た鏃の先から滴り落ちている。

 首を抑えながらこちらに倒れ込んで来る男を這って避けると、首の後ろから飛び出た矢羽に見覚えがあった。森の手のカンブリーが使っている物だ。

 右から飛来する矢は、味方が戦っている相手の隙を作り、その隙を逃さない手練れの味方によって、一人また一人と倒れ、あっという間に片が付いた。


 矢が来た方向には、4人の男たちが立っている。我々の命を助けてくれたのは、カンブリーだった。


「早く!森へ!」


 今度こそ安全に後ろを振り返ると、追手は目と鼻の先だ。300フィートもなかった。それを見た全員が森へと駆け出すが、斬り合ったばかりで皆一様に足が重く、息も絶え絶えだ。


 このまま樹海に入っても逃げきれない。


 先に助けられて、まだ息は落ち着いている。味方を追い抜かし、一気に先頭に躍り出た。


「俺の矢筒を!」


 アントンが投げて寄越した、矢筒からマジックアローを取り出し、矢筒を投げ捨てた。


 マジックアローを構えながら、息を長く、そして深くする。


 振り返ると味方との差はさらに詰まっている。だが幸運なことに、敵はほぼ縦に並んでいた。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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