3.作戦会議
馬小屋の中で随分と長話をしてしまったのか、作戦会議の集合場所である壁のない村の集会場には、既に全員が揃っているのが遠目にも見えた。
「おはよう」
「「おはようございます、隊長」」
返事をくれたのが、エドガーとフレディだけなのが悲しい。ユーリ隊長は何故あんなに人をまとめられていたのだろうか。泣き言を言っても仕方がないが、今からアドバイスを貰いに行きたいくらいだ。
「それでは作戦会議を始める。まず最初に、全員の情報の共有をしたいと思う」
全員の表情がピリッとした。それぞれの表情を確認してみると、いつも軽い感じのフレディでさえ頼り甲斐のありそうな仕事の顔だった。
「まず最初に、団長から伝えられた話をみんなに話そうと思う。今回情報を提供してくれたエルフは、案内役をさせられていたのだが、もっと西の方出身でここらに詳しくないそうだ。その為、私たちが打ち取った部隊は森の中を迷いながら進み、街道に出るまで南南東方向に5日かかったらしい」
ここまで話すと、森の手の面々は大体の場所を考えているようで、虚空を見つめたりして思案顔だ。
「続いて敵のいた場所についてだが、川のそばに拠点を作っていたことが分かっている」
「自分達が接敵したのは街道のここら辺」
机上にユーリ隊長から預かった地図を広げ、地図を指差した。
「情報は少ないが、大まかな索敵範囲を決めたい、意見のあるものはいるか?」
獣人の1人が手を挙げて一歩前に出た。毛色が黒で背中に戦斧を背負っている。確か名前はサルキだった筈だ。
「サルキか、言ってくれ。ここらには詳しくないので、初歩的な所から頼む」
サルキはおそらく森の手の人達のリーダーのような人だろう、風格がある上に他の団員からも信頼されているような感じがあった。
「分かりました。まず、カーマイン辺境伯領と北方樹海の地形について話します」
中央の机の上にある地図が見える位置に、全員が身を寄せたことを確認して、サルキが話を続けた。
「大陸中央北部は”馬蹄”のような形で山脈があり、南の先端に位置するのがカーマイン領です。カーマイン領の中央にはレイトリバーが流れていますが、その支流は確認されているだけで東側に三本、西側に二本あります」
「なるほど、では遭遇地点から考えるに中央より西側の二本が怪しいという事だな」
「そういう事になります。西側で1番手前の支流は我々の足で4日なので、手前の支流が怪しいかと」
分かりやすい説明だった。”森の手”の足で4日という事は、慣れていなければ5日以上はかかるだろう。
事前情報と合わせても西側手前の支流が1番の候補になる。
「わかった、その手前の支流から索敵を始めよう。ルートの意見とかはあるか?」
「それは、わたしから」
そう言って前に出てきたのは、栗色の毛並みが森の中では目立ってしまいそうな、"森の手"アーチャーのカンブリーだった。
「隊長が以前遭遇した地点から、西の支流にまっすぐ向かいましょう。そこから森に入って行こうとしていたとのことなので、敵拠点と最短距離の可能性があります」
「分かった。それで行こう」
調査する地域と、そこに向かうルートはこれで決まりでいいだろう。日数はあまり残されていないので、一番可能性の高いところから潰したい。
「次に樹海を歩く時の陣形だが、森の手と騎士団の人間が交互になるようにした『いや、我々森の手が先導させてください』」
被せるように言ってきたのは、森の手のクレスだった。目からそこは絶対に譲らないという強い意志を感じる。
「理由は?」
もし、これが”森の手”としてのプライドと言うのであれば、意見を退けなければならない。
エドガーの話だと樹海の奥地に入っていくには、100単位の人が必要という話だった。たった10人しか居ないこの隊を、分散させるとそれだけ危険度が増す。
「我々森の手は基本的にペアで行動し、樹海の危険な動物や魔獣に遭遇する前に避けてます。少人数の方が我々の武器である鼻と、耳を生かすことが出来るんです」
「もし危険に遭遇した時はどうするんだ?」
「その時は戻って伝えるか、その場に待機して合流を待ちます。」
「うーん」
判断をしかねていると、エドガーが発言許可を求めてきた。
「森の手の面々は北方樹海に我々の誰よりも詳しく、歩き方も危険も熟知しています。任せてみてもよろしいかと」
難しい決断だが折角獣人達がいるのだ、それを生かさない手もないだろう。それに、出してくれた意見を無視してしまうと、森の手のメンツを潰してしまうことになりそうだ。
「・・・わかった。だが、全員に今回の目標の共通認識を持ってもらう。今回の目的はあくまで敵拠点の発見と人数の把握、そいつらの目的の調査だ。戦わずに静かに偵察し、あとは森の手が編成する討伐部隊に任せる。独断専行は絶対にしないでほしい」
許可が出た事で満足している獣人達、一人一人の目を見てしっかりと伝える。
一方の騎士団から来た者達はというと、ついていきます位の心持ちなようだ。張り切って、うんうん頷いているのはフレディだけだった。
「では、出発する」
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




