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騎士団のアーチャー  作者: 都津 稜太郎
4.北方樹海
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2.助言


 10人は、前回の調査で使った村に向かって、出来る限り馬を飛ばした。

 その甲斐あってか前に調査に来た時より3刻ほど早く、陽が落ちてすぐに到着することが出来た。


 到着した村の雰囲気は物々しい。村の正門は閉じられていて、櫓には見張りが立っている。警戒態勢を取るように、ノルデン城から急使が走ってきたのだろう。


 「フレディ、団旗もらえる?」


 フレディが背負っている団旗を指さしてもらい受けた。暗い中で分かりにくい、遠くからは見えないだろう。馬を降りて門前まで歩くことにした。


「こんばんわー」


 見張り兵に不審がられないよう左手で松明を掲げ、右手には深紅のノルデン騎士団旗を付けた槍を掲げる。そのままの状態で門の前、見張り櫓の下まで向かった。


「ノルデン騎士団、リデルです。村に泊めさせて下さい」


 櫓の上では何人かが話しているのが聞こえた。

 少しすると櫓から一人の若者が顔を出し、「騎士団の証拠がない」と入村を突っぱねられてしまった。

 

「これ、ノルデン騎士団旗なんだが、見えるか?あと、自分は前にも来たことがある」


 松明を顔だったり団旗の近くに寄せてみるが、反応が薄い。


「すまないが、本物かどうかわからないんだ。他に証明できるものはないか?」


 団旗だけじゃダメか…

 他に証明できるものを記憶から探していくが、思い当たらなかった。

 これは野宿になるかもしれない。


 どうしようかと悩んでいると、隣に人影が並んだ。


「おーい、ショーン。俺だ、ウィルだ。騎士団の任務で来てんだ、入れてくれ」

「おー、ウィルじゃねぇか。久しいなー、お前がいるならノルデン騎士団なんだな!」


 隣に並んだのは、第三騎士団ウィルだった。

 彼の黒い瞳と髪は松明に照らされて、キラキラと光っている。


「助かりました。この村出身ですか?」


 門扉が開けられるのを待つ間ウィルに話しかけてみたが、特にこちらを見ることなく「えぇ」と短い返事が返っていた。

 おおよそ隊長に接する態度ではない気がするが、致し方ない。まだ隊長たるに相応しい者だということを、証明できていないのだ。


「ありがとうございます、ウィルさん」


 軽く頷いたウィルは開いた門の中に入っていくと、知り合い達と話し始めた。

 

 取り敢えず彼のおかげで、屋根のあるところで眠ることが出来そうだ、野宿を避けられただけ良しとしよう。




 翌朝、村の中含め辺りは深い霧に包まれていた。早朝の屋内というのも相まってなかなか暗い。

 作戦会議の前に荷物をまとめようと馬小屋に来たが、闇の中では手元が見えづらく覚束なかった。苦戦していると、うしろから松明を持った男が近づいて来る。


「おはようございます隊長。照らしましょうか?」

「エドガーさん、おはようございます。ありがとうございます」


 近づいてきたのは第三騎士団から来たエドガーだった。松明の光一つで手元は作業するのに十分な明るさになり、さっきの苦戦が嘘のようにすぐに終わった。

 今度は代わりに松明を持ち、エドガーの手元を照らす。


「エドガーさん」

「さん付けはやめて下さい、他の者たちにも」


 こちらに有無を言わせない、厳しい口調だった。

 荷物がまとめ終わり紐をギュッと締めたエドガーは、こちらを振り返って続きを話し始めた。


「敬語も必要ないです。貴方はこの隊の指揮官、隊長なんですよ。部隊を統率するために、威厳を示すべきです」


 確かにエドガーの言う通りだった。隊員たちに遠慮しすぎているのは、自分でもわかっている。

 隊を率いて、与えられた任務を達成する為に、ここはエドガーのアドバイスに従うべきだろう。


「わかり、分かった。エドガー、君は何の目的であいつらが来ていると思う?」

「自分には分かりかねますが、帝国の侵略の予兆の可能性もあるかと思います」

「なぜ、そう思う」

「リデル隊長はご存知ないでしょうが、8年前の開戦前夜、帝国は今回のように樹海からの偵察を行なっています。結局樹海は突破できず、カーマイン領西のカレリア砦に主攻約1500の軍が押し寄せて、撃退されています」


 訓練騎士団にいた時、聞いたことがあった。

 開戦寸前には、各地で30人規模の帝国兵がよく見かけられたらしい。

 その後の帝国は宣戦布告直後の最初の侵攻で、大陸北部、中央部2か所、南部の4つに分けた軍を同時侵攻させて、一時期王国は南部と中央部の3分の1を占領されたという話だ。 


「今回もそれだと思うのか?」

「この8年間、大陸中央で押したり引いたりで国境は変わっておりませんし、打開策を見つけたいとすれば納得でしょう」

「だとすれば、今回は本腰を入れて来そうだな。前回の樹海の偵察はどんなものだったんだ?」

「30人規模の敵偵察中隊が3つです。そのうち一つの中隊は、当時まだ傭兵団としてノルデン城周辺の魔獣狩りをしていた、森の手により壊滅しています」


 この話は初耳だった。森の手には同じような経験と実績がある分、余計にぽっと出の新人に隊長を掻っ攫われるのは納得いかないだろう。


「そこで捕らえた者が、残り2つの中隊がいることを吐いたのですが、結局見つかりませんでした」

「撤退したか、樹海で魔獣や魔物の類に襲われた。といった所か」

「えぇ、まぁそんな所でしょうね。樹海の奥地で生き残ろうとしたら、100人単位で動かないといけません」


 ん?だとしたら、いまからたった10人で樹海に入ろうとしているのは間違っているのではないか?という疑問が頭に浮かんだ。聞いてみなければと思い声を掛けようとしたが、エドガーは気にする様子もない。


「さぁ、もうそろそろ会議の時間でしょう。先に向かっています」


 エドガーの背中を目で追うと、外は陽は昇り周囲の霧が薄くなっていることに気づいた。


 自分も松明の火を消して、集合場所に向かうことにしよう。



はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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