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3.半端者


 カーマイン辺境伯の号令で解散となった後、ユーリ隊長の後ろに続き2番目に部屋を出た。


「おめでとうございます、リデル殿」

「もしかしてユーリ隊長の推薦ですか?」


 自分の動きが報告されているという事は、ユーリ隊長が推薦してくれたに違いない。


「事実を報告しただけですよ、それと騎士団と森の手からの人選は私に伝えて頂ければ話を通します」

「わかりました、何から何までありがとうございます」


 これからどうしようか考えようとしていた物も、先回りしてくれている。ユーリ隊長には全く頭が上がらない。


「ユーリ隊長、リデルくん」


 下の階に降りようと階段に差し掛かった時、唐突に後ろから呼び止められた。


「ローガン男爵、如何されました?」


 呼び止めてきたのは、さっきまで同じ会議にいた立派な髭の男、ローガン・マクナイト男爵だった。


「急に呼び止めてすまないね。ユーリ隊長、リデルくんがカーマイン辺境伯領で、1番弓が上手いと聞いたんだが」

「えぇ、ノルデン騎士団では間違いなく1番です」

「であれば…そうか。風魔法も使えると聞いたが」


 ユーリ隊長がこちらを見る。「自分で返答しろ」という事らしい。


「15覚醒ですが、一応使えます。なぜご存知で?」


 何故、男爵は自分が魔法を使える事を知っているのか、辺境伯領に来てからは使ってないし、使えることも言っていない筈だった。


 魔導士は2種類に分けられる。

 7歳で能力が発現する"7覚醒"と、15歳で発現する"15覚醒"だ。


 世の親は子供に7歳で一回魔法を使えるか試させる。魔法が使えるとなれば研究者や騎士団、医者等働き口に困らないからだ。

 7歳で魔法を使える事が判れば、それぞれの国や地方にある魔法学校に、10歳から無償で通わせる事ができ、あとはそのまま16まで学校生活をする。卒業後はそれぞれの働き口へ、という形を取ることになる。

 15覚醒も一応、無償で魔法学校に1年だけ行くことが出来る。せっかく魔法が使えるならと自分も父親に送り出され通い、そこから試験を受けて訓練騎士団に入った。


 ただ、15覚醒はとにかく弱い。

 

 威力、精度、操作、魔力量等、魔法に必要な全ての能力が、7覚醒の100分の1、ひどいと1000分の1と言われている。

 それでも、火魔法や水魔法は20歳まで訓練をした後に軍医になる道があるのでまだマシだ。他の属性は箸にも棒にもかからない。


 自分は風魔法が使えるが、夏にそよ風を合計一刻位吹かせて涼しくするとか、火の番をしてる時に、消えかけた火を復活させるくらいしか使い道がない。


 だから、隠していた。知られると馬鹿にされる。


 また、近衛騎士団にいた時の様に”半端者”と馬鹿にされるのかと、心に暗雲が立ち込める。


「使えるとエルフと話していたんだろう?ユーリ隊長には、風魔法を使える人を探すように頼んでいてね」


 ユーリ隊長を見るとこっちの気も知らずに、”良いことをした”とにこやかな顔だ。


「申し上げましたが、自分は15覚醒です。お役に立てないかと」

「いや、15覚醒を探してたんだよ。ユーリ隊長と一緒に、今日の午後一番に第三訓練場に来てくれないか?」


 わざわざ15覚醒を探すとは珍しい人だ。

 恥をさらしたくない、だれにも見せたくないという気持ちはあるが、これが男爵の依頼である以上断ることはできない。


「分かりました」

「それじゃあ伝えとく、よろしく」


 そう言葉を残すと、男爵は忙しいのか足早に去って行った。と思いきや、10歩ほど行ったところで引き返してきた。思わず一歩後退りしてしまう。


「リデルくん、言い忘れてたけどね、私も10年前に剣技の指導教官として、近衛から派遣されてきたんだ。ここはいい所で、いい領主がいる。共に頑張ろう」


 そう言うと今度こそ、足早に去っていった。

 マクナイト男爵も同じ境遇らしい、励ましには悪意のようなものは感じなかった。忙しないが良い人なのかもしれない。



 調査は明日の昼には出発で、午後までには人選をしておかなければならなかった。とは言っても、騎士団と森の手の人を把握してる訳ではないので、細かい人選はユーリ隊長任せだ。


 「では、リデル殿の要求する人は、樹海を知ってる若しくは、森を歩いた経験があるのが前提で、剣が得意なのが7人、弓か投げ物が得意なのが2人欲しいと」

「そうです、それで自分を含めて10人になります。あと、出来れば体格が普通か小柄でお願いします。正面切って戦う訳ではないので」

「分かりました、ある程度私がピックアップしてから伝えておきます」


 会話に少しの間が空いた。こちらの返事が無いので、ユーリ隊長が不思議そうに見ている。

 これは唐突な思い付きだった。


「弓兵の1人はフレディに出来ますか?」

ユーリ隊長は驚いた顔をしている。

「第二騎士団の新人弓兵のフレディですか?」

「そうです」

「リデル殿がおっしゃられた要求の、どれも満たしてないと思うのですが」


 こっちで関わった人の中で1番仲がいいし、後輩みたいなもので可愛がっているというのもあるが


「フレディは飲み込みが早くて、要領がいいです。筋が良いので将来はノルデン騎士団いちのアーチャーになると思ってます。今の内にいろいろ経験させましょう」


 本物の教官みたいなことを言っている気がして、少し恥ずかしい。


「分かりました、フレディを編成に入れておきますね。もうそろそろ約束の時間になります、第三訓練所に向かいましょう」

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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