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騎士団のアーチャー  作者: 都津 稜太郎
2.カーマイン辺境伯領
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6.エルフ

 

 相手の力が強い。徐々に下がる剣が首筋にヒヤリとした感覚を伝えた時、強い衝撃と共に視界から男が消えた。


 目の前の男が消えたあとには壁がある。


 「ブハッ、ハァーハァー」


 踏ん張るために気づかず止めていた息を再開する。右を見ると、20フィート程の所にさっきまで自分に剣を突き付けていた男が転がっていた。


 視線を目の前の壁に戻し荒い息をしながら見上げると、壁と見間違える程の大きな肉体で戦鎚を軽々と持ち、佇んでいる男がいる。

 カールだった。

 

「ヨォ」


 軽い挨拶の言葉をこちらに投げかけ、脇腹を抱えヨロヨロと立ち上がった男にカールは歩み寄った。

 そして一言も発することもなく「トマ」と呼ばれた男の頭上に振り下ろした戦鎚は、受けようとした剣を砕き、緑と茶色の森に綺麗な赤色の花を咲かせた。

 

 カールは戦鎚に付着した鮮血やら何やらを、ブンブンと振り落としながらこちらに戻ってくる。


「リデル、だったっけか?無事か?」


 森の中だと風体も相まって、熊の唸り声と勘違いしそうな声だ。


「なんとか...助かりました。ありがとうございます」

「そこの、チビって震えてるやつは敵か?」


 結局逃げ出せなかったらしい男は地面を濡らしてカールを見上げていた。漏らすのは仕方がない。自分も目の前で味方が文字通り"粉砕"されていたら、漏らさずには居られないと思う。


「敵です。生け捕りにしろって言う話だったんで、足と腕を撃ち抜いてます」

「そういやそうだったな、コイツを抱えて街道に戻ろう」


 そう言うとカールは顔を洗ってタオルを肩に掛かるかの如く、ヒョイと男を抱えた。


「はい、先導します」


 手の甲や頬の傷を布で拭き取りながら森を南下する。木々の隙間からたまに見える太陽が頼りだった。

 男を担いでいるカールに合わせながら、ノロノロと半刻ほど歩いた後に街道に出た。出発地点より帝国側に寄っているのがわかる、山麓が近い。


 そしてまた街道をノルデン城の方向に歩き始めると、今度はすぐに出発地点にたどり着いた。

 出発地点には何人か残っていたらしい。自分達が森に飛び込んだ時に乗り捨てた馬が、樹木に繋がれている。


「カール殿、リデル殿、無事戻られましたか」


 先ほどまでの隊長然としたユーリ隊長の口調は、いつもの丁寧な口調に戻っていた。


「1人を倒して、1人は捕まえました」


 カールの担いでいる男を指さしながら言うと、カールも男をどさりと地面に置きながら、「俺も一人砕いた」と言っている。

 砕いたなんて表現は初めて聞くが、カールの言っていることは言葉の通りだった。他の者たちは見慣れ、聞きなれているのか眉一つ動かさない。


「ではその3人と最初ので合計4人ですか、そいつはノルデン城に連れて行きます。まだ何人か戻っていません、少し待ちます」


 残っていたと思われる、格好が綺麗な隊長と騎兵と弓兵の3名。追跡から戻って来たのだろう、鎧が土と草の汁で汚れている4人。今戻った自分達をいれて9人だ。6人足りない。


 人数を数え終えて、ふと隊長のそばに目を移すと小さい影が座っている。あいつらと一緒にいた子供だろうが、フードを被っていて顔はよく見えない。疲れている自分には気にかけている余裕もなく、草原に座り込む方が優先だった。



「全員揃いましたね。では一旦、昨日の村まで戻ります」


 陽が落ち北方樹海が完全な暗闇に包まれる前に、残りの6名は樹海から帰って来た。大分待ったおかげで自分も疲労が回復して元気だ。

 全員の話を合わせると討ち取った人数は合計して8人だった、逃げられたと見るか、途中で魔獣や動物に遭遇したか。どちらにせよ、これ以上探すのは無理だろう。


 増えた人数と自分達分の馬がある訳でもなく、馬の背に保護した子供と捕虜を皆で交代しながら乗せ、村に着いたのは夜も深くなった頃だった。村人を叩き起こす訳にもいかず野宿なのが、森を走り回った体には辛いところだ。


 翌日、最初の徒歩は子供を馬に乗せる自分と捕虜を乗せるカールだった。


「あなた、風魔法を使えるの?」


 暫く馬を曳きながら歩いた頃、いきなり問いかけてきたのは馬上の子供だ。


「15覚醒だがな、何故わかった?」

「だって、私エルフだもん」


 子供はそう言うと被っていたフードを外した。そこから現れたのは、暗い顔をした長いトンガリ耳が目立つ金髪ショートヘアのエルフだった。

 少年か少女か性別はよく分からないが、確かに童謡に歌われている通り、見目麗しい。


「なに?」


 不機嫌にもう一度フードを被るエルフを見て、見惚れてしまっていたことに気づいた。


「いや、すまない。エルフを初めて見たもんで」

「そう」

「ところで、さっき風魔法を使えるか聞いてきたのは何故なんだ?」

「人間で魔法使える人を初めて見たから。それだけ」


 結局エルフを乗せ替えるまでそれ以上の会話はなかった。こっちから話しかけようかとも思ったが、顔が暗く、周囲を拒絶する感じだったのでやめた。

 そのあと、乗せ替える時にフレディの話をふと思い出し、それとなく匂ってみたが、確かに森の香りがした。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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