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騎士団のアーチャー  作者: 都津 稜太郎
2.カーマイン辺境伯領
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4.調査


「リデル殿、騎射は出来ますか?」


 カーマイン領に来てから30日が経ち、訓練は2周目に入っていた。前教えたことを覚えているか、確かめながら指導していた時、ユーリ隊長に話しかけられた。


「もちろん」


 騎馬で移動する近衛騎士団にとっての基本技術だった。騎射が出来なければ、騎士団に入ることさえできない。


「それは良かった。歩きながら説明するので、少し来ていただけますか?」


 訓練場から離れ、向かう先は方向を見るに兵舎の方だった。最初の質問から考えるに、遠出をするのかと勘繰る。


「ここ最近10人ほどの不審な武装集団が、樹海周辺をうろついているという報告が来てまして」

「冒険者とかではなくて?」


 北方樹海は鉱石などの天然資源や、魔獣から取れる様々な材料の宝庫だ。それを求めてノルデン城下は、たくさんの冒険者で賑わっている。


「最初はそう思ったのですが、どうやら違うようでして。リデル殿がこちらに着任した時、案内出来なかったのは、その調査に出てたのが理由なんです」

「なるほど、ではこれから再度調査を行うんですね」

「そうです、武装と数日の泊まりの準備をしたら城門に集合でお願いします」


 詳しい話を聞き終える頃には、丁度兵舎の前に着いていた。

 部屋に戻り自分の装備を身につける。とは言っても皮鎧と胸当てはしているので短剣を佩く位だ。数日なら着替えは一枚で良いくらいだ、極力荷物を軽くすることにした。

 身軽な状態で城門へと向かうと、ユーリ隊長が今日の厩舎担当に指示を出している。馬が何頭も用意されており、そのうち一頭を預けられた。

 騎射の感覚を思い出すために馬上で弓を構える練習をしていると、続々と人が集まり始めた。数えたところ総勢15人の小隊のようだ。


「弓兵隊長のユーリです、今回の調査の指揮を取ります。こっちから弓兵のテラー、サム、ニコライ、弓兵教官のリデルです」


 ユーリ隊長を含めて弓兵は5名だ。名前を紹介されたときに軽く手を挙げてあいさつした。


「騎兵隊のカールです、右から...」


 次いで10名の騎兵の紹介をされたが、カールの風体に目を奪われ耳に入って来ない。

 カールという騎士は、6.5フィートもあろうかという上背に、溢れんばかりの筋肉を持っていた。更には顔の中央を横切る傷跡がある。気の弱いものが睨まれたら卒倒しそうな威圧感だ。

 そして極めつけは背負っている2双の戦鎚。頭の部分が普通の戦鎚の3倍はある、あれを叩きつけられたら無事では済まないだろう。


「では、行きましょう」


 圧倒されていると紹介がいつの間にか終わっており、他の騎士の名前は完全に聞き逃していた。


 調査の場所へは短い行程だった。とはいっても革製の鎧のアーチャーに比べ、鉄の鎧を身に着けている騎士たちは、道中暑さにやられていたようだ。

 途中の村で一泊し、翌日の昼には樹海に到着した。目の前には陽が高いにも関わらず薄暗い森が広がっている。この奥はさらに深い森が北の海に当たるまで続いているらしい。初めて見る樹海は、人を飲み込みそうな不気味さがあった。


「不審な集団は、この道から西側で主に目撃されています。ここからカーマイン領の西端に向け巡回します。怪しいと思ったらすぐに報告してください」


 通行人や冒険者の集団、物を売りに行く村人の馬車は通りすぎたが、その日はなにもなかった。樹海にそって続く道をひたすら進み、宿泊予定の村に到着する頃には陽が落ちてあたりは薄暗い。

 横に見る樹海は一足先に完全に闇に包まれていた。その樹海を見ていると、いつ何が飛び出してきてもおかしくないような恐怖を覚える。夜の人通りが全くないのも納得だった。


 今宿泊しているこの村の者が、不審な集団を見かけ通報してきたそうだ。目撃した者から聞いた話によると、その集団は統一した鎧を身にまとい歩き回っていたらしい。更に、男だけのパーティーに小さい子供を1人連れていたので不審に思ったと言っていた。

 カーマイン領の鎧は領民は知っているはずだし、冒険者が統一した装備を付けることはない。確かに怪しむのもわかる。ただ、魔獣狩りに来ている傭兵集団は、統一した鎧を身に着けていることもあるので、どこかの傭兵ではないかというのが調査隊の中で出た結論だった。


 次の日は、傭兵集団かもしれないという予想もあり、少し締まらない空気の中での調査だった。皆早く帰りたそうな顔を見せている。かくいう自分も、当初程ののやる気があるわけではなかった。

 ゆったりとした空気の中調査が進み、あと半日行けば帝国と辺境伯領を隔てる山脈に着くというところで、遠くに10人くらいの集団を見つけた。よく目を凝らさないと見えない距離だ。小隊の面々は気づいておらず、訓練や警備の話をしている。


 「うーん、見えづらいな」


 目がかなりいい自分でも、遠さと熱さに揺れる地面でよく見えない。止まってその集団を観察していると、最後尾にいたユーリ隊長が隣に並んだ。


「リデル殿、どうされましたか」

「隊長、5000フィートほど前にいる集団、怪しいです」


 遠目に見ると、確証はないが同じような鎧を着ているように見えた。それに同じ場所で何の行動もすることなく留まっている。それに1人背丈が低い者もいた、村で報告のあった集団だろう。

 隣でユーリ隊長が望遠鏡を取り出して覗いている。


「確かに怪しいですね」


 確認した隊長がぽつりと呟き、馬を促し動き始めたので慌てて後を追った。


「全員そのまま聞け!」


 年を感じさせるが、よく通る声だった。気づかず世間話をしていた騎士達が静かになる。


「前方に標的と思われる集団がいる。歩様はこのまま、気付かれたら一気に行くぞ」


 普段のユーリ隊長が使う丁寧な口調から、かけ離れた言葉遣いに驚いているのは自分だけらしい。周りの騎士たちは真剣な表情で前を見つめている。力強い言い方は頼りがいがあり、威厳があった。ユーリが何故弓兵の隊長なのか、わかった気がする。


 小隊は馬の速さは変えず、そのままの速度で距離を縮める。

 4000フィート、まだ向こうはこちらに気が付かず動かない

 3000フィート、集団に奥から三人組が合流したように見えた。

 2000フィート、話し込んでいるようだ、動きはない。統一されている鎧が見えてきた。合計10人

 1000フィート、集団の中心にいる男が何かしゃべっており、その手元を覗き込んでいるのが見えた。


 500フィートほどになった時、最後尾の男が振り返った。その男は少し驚いたように前の者たちに何かを言っている。


 気付かれた!!


「突貫!!1人は生け捕りにしろ!」


 隊長の号令と共に全員が一気に駆け出した。



はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。



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