表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

9.お菓子を作ろう

 今日は第一回お菓子作り会の日だ。この世界で料理は女の領分で、男性がする事は少ないのだが、私の巻き起こした多様化運動のお陰で今日の席を設けることが出来た。

 陛下も世の中の流れには逆らうべきではないと、今日のことを許可してくれた。

 今日作るのは初歩の初歩、パウンドケーキである。言ってしまえば小麦粉、砂糖、卵、バターを全て同量ずつ入れて混ぜるだけのケーキなのだが、なかなか奥が深いケーキである。生焼けになったり固くなったりしやすいのだ。

 

 私はエプロンをつけたみんなを見回す。イライジャ様のエプロン可愛いな、手作りかな?

「メラニア様にもお作りしましょうか?」

 キラキラした目で見つめていると、イライジャ様がそう言った。是非お願いします。

 

 少し脱線してしまったが、お菓子作り開始だ。今日は一人一つずつ作って味を比較する。それで料理の奥深さが分かるだろう。

 まずは常温のバターと砂糖を混ぜて空気を沢山含ませる作業である。みんな私の手元を見て真似をしている。ジョシュア様、すり潰しちゃダメです。

 レイフ様はなかなか纏まらないバターに悪戦苦闘していた。

器用なオズワルド様とイライジャ様、真面目なデニス様は見よう見まねでも上手くやれているようだ。

 

 次は卵を少しづつ入れて混ぜる。ここで失敗すると分離してしまう。ジョシュア様、もっと少しずつです。横着しないで。

 滑らかなクリーム状になれば成功なのだが、約二名見事に分離していた。ジョシュア様とレイフ様である。レイフ様は少しだけだが、ジョシュア様はヤバい。折角目を治してあげたんだから私の手元をちゃんと見てほしい。

 ちょっとしょんぼりしているレイフ様に粉を混ぜたら大丈夫ですよと言ってあげる。実際粉を少し入れたらちゃんと混ざった。レイフ様はホッとしていた。


 最後に小麦粉を少しずつ入れて切るように混ぜる。ここでくちゃくちゃに混ぜてしまうと何故か固くなってしまうのだ。

 ジョシュア様はどうしてグチャグチャに混ぜちゃうのかな。人の話を聞いて欲しい。

 切るように混ぜるのはなかなか難しいらしく、混ざらなくてみんな苦戦していた。どれくらい混ざっているのか分からなくて不安になるんだよね。そして混ぜすぎて失敗するんだ。わかる。

 

 あとは型に入れてオーブンで焼くだけである。十分くらいしたら一度出して真ん中に切れ込みを入れる。生焼け防止だ。

 そして焼きあがったパウンドケーキを皆で試食することにした。

 

「メラニアのはすごく美味しいね!さすが先生!」

 オズワルド様が私の頭を撫でて褒めてくれる。私はオズワルド様のケーキも食べてみた。

「オズワルド様のも美味しいですわ!初めてとは思えません」

 先生がいいからだよと、オズワルド様が笑う。私はついリスのように頬張ってしまった。ここにマナーの先生がいたら叱られていただろう。

「嘘、同じ材料使ったのにこんなに違うの?ビックリだよ」

 レイフ様が食べくらべて驚いている。ふんわり感が随分違うからだろう。

「ジョシュア様のちょっと凄いですよ、食べてみてください」

 デニス様の言葉にみんなジョシュア様のケーキを食べる。すっごいモソモソする。口の中の水分が持っていかれる気がした。

「おかしいな、同じ材料で作ったのにね」

 ジョシュア様は不思議そうにしているが、私は知っている。彼は初心者が失敗する要因をすべてコンプリートしていたのだ。最高の反面教師である。きっと料理に向かない性格なのだろう。ジョシュア様はおおらかすぎるきらいがあるからな。

 

 

 

「お菓子作りとは楽しいな。僕もメラニアと一緒に料理の授業を受けようかな?

 オズワルド様は料理が大層お気に召したようだ。いいじゃないか料理が趣味の王子様。民も親近感を持ってくれるだろう。

「僕も一緒に受けられないでしょうか?」

 イライジャ様もハマってしまったらしい。二人は料理には向いてそうなのでそれも良いだろう。

「先生にお話してみましょう。きっと大丈夫ですわ」

 他のメンバーは料理はもういいらしい。三人で授業が受けられるといいな。

 

 

 

 数日後、先生から許可が降りたと連絡があった。

 今度からは三人で料理の授業だ、楽しみである。

 

 あれから私は家でもよくお菓子を作るようになった。

 オズワルド様がお茶会の度に手作りのお菓子を振舞ってくれるからだ。これがとても美味しいのだ。

 だから私もオズワルド様のためにお菓子を作るようにしている。私の作るお菓子は可愛いを目指した。前世の記憶を頼りに、見た目が可愛らしいお菓子を研究している。

 前世ではよく、推しキャラの誕生日にケーキなどを作っていた、その名残である。飾りつけは得意だ。

 ただ一つ、花姫選考会の時に作る予定のお菓子だけ作らずにおいていた。みんなをビックリさせたいからね。

 

 

 

 さて、ところ変わってここは出版社だ。今日私はハリーに呼び出されていた。

「実はオトメンの時のリコリスの絵が大人気でして、リコリスデザインの服を売り出せないかとブティックに相談されました。洋服のデザイン画を描くことは出来ますか?」

 リコリスも行き着くところまで行った感があるな。私としてはデザインなら問題ない。ブティックとコラボなんてお金になりそうだし、断る理由はないだろう。

 私はさらに、服を買うとその服のデザインの絵のカードが貰えるとか、簡単な作りのバッグに私のイラストを印刷したものを売り出すだとか提案した。

 ブティック側からも二つ返事でOKが出たらしく、完成するのが楽しみになった。私は五パターンほどデザイン画を描いて渡した。それぞれ男女の子供服、男女の服、ユニセックスデザインの五つである。

 今までにないデザインだったからか制作には時間がかかったが、クオリティーは最高である。

 この服も飛ぶように売れた。

 ドロシーのサイン会に行くと、この服を着た人たちで溢れかえっていてちょっと笑ってしまった。

 

 私はドロシー&リコリスの人気を見て、そろそろ禁断のイベントを開催してもいいかと思い始めていた。

 それは同人即売会である。私は同人活動が好きなのだ、互いの好きがぶつかり合うあの魅惑の空間が大好きなのである。

 この国に同人誌の概念は無い。無いなら作っていまえばいいのだ。

 いや、同人誌だけでなくてもいい、キャラクターイメージの雑貨やイラストなどを売り買いできる空間が欲しい。

 

 私はハリーに相談した。ただの交流会ではなく、ファンアートを売買できる企画がしたいと。ハリーは難しい顔をしていたが、ファン限定のバザーのようなものだと説明すると、納得してくれたようだ。

 私たちは細かい決まりを考えた。ドロシーとリコリスの作品をテーマにした小説やイラストや漫画、装飾品や小物以外の出品は禁止。出品者の募集は早い者勝ち。小説や漫画を書いた出品者には印刷機の使用許可がおりる。などなど、色々な場合を想定して規則を考えるのは大変だった。

 企画を盛り上げるために、他の専属作家さんにもドロシー作品の同人誌を書いてもらうことを提案したら、みんな乗り気になってくれて、即売会は豪華な物になった。

 人々がどのような反応をするのか、それが不安である。

ブックマークや評価をして下さると励みになります。

お気に召しましたらよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ