「第四話」悲鳴
──初見です
──対戦よろしくお願いします
──初っ端からダンジョン配信って蛮勇にもほどがあるやろ
告知も何もしていないのに、視聴者数が10人を超えた。ボクは生まれて初めて、ネットの人との交流を持った……現実でのコミュニケーションとはちょっと違う、しかし不快ではないその感覚は、徐々に高揚へと変わっていく。
「蛮勇って……ヤダなぁ、ボクはこれでも女の子なんですよ〜?」
──ボクっ娘助かる
──もっとよくお顔見せて
──今何歳なの?
「年は今日で15歳ですね〜なにげに誕生日なんですよ」
──へぇ
──免許取ってからすぐに来たって事か
──蛮勇過ぎて草
とまぁ、家出のつもりでダンジョンに来たとは実に言いづらい。正直この配信は楽しいが、翌々考えてみればこれは自殺行為である。武器になるものも薬も何も持ってきていないようなボクは、ダンジョンに住まう魔物にとっては格好の餌であるに違いない。
──ってか、全然魔物が出ないのな
──なんでだろ、初配信といえばいきなりピンチのはずなのに
──服を溶かすスライムはよ
「確かに……なんというか、もぬけの殻っていうか……」
もうかれこれ10分はダンジョンを歩いている。そろそろスライムやらなんやらに出くわしてもいい頃合いなのに、気配すらない。これは一体、どういうことだ?
──直後、首を傾げたボクは大きく揺れた。
いや、違う。
ダンジョン全体が揺れたのだ。
「!?」
思わずへたり込んでしまうボク、コメント欄は盛り上がりを見せているが、それどころではない。グラグラと揺れるダンジョンは、いつ崩れてもおかしくなさそうだった。
……きゃあああああああああああ!
(悲鳴!?)
──奥に誰かいる!?
──何だこの揺れ
──助けないと!
怖い、怖い。そんな感情がコメントに混じって渦を巻いていたが、ボクはそれでも立ち上がった。
(人一人助けられないで、何がダンジョン配信者……!)
まだかすかに揺れ続けるダンジョンを、壁伝いに進んだ。