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第99話 炎の星


 飛び出して行ったショナは雷の剣で物を言わさず斬りかかる。

 だけど、相手も剣を取り出して攻撃を受け止める。


「ここで出てくるとは……ガキめ」

「当たり前でしょ……!人をこうも簡単に殺すなんて!!」

「それくらいで怒るなよてかどうやってここまできた?」

「封印魔法を解きました」

「は?お前らが?このレオ様の封印魔法を解いただと?」


 このって言われても誰か知らないんだけど……。

 

 そしてやはりというか、見たことのあるフードを被っているってことは……。


「魔王教団……?」

「見ての通り……そしてそれを見られたからにはお前達を殺さないといけない」

「命を何だと……!!」

「命は我らの神……魔導王へ捧げるもの……!!」


 レオは魔力を持っているのでおそらく魔導騎士(エーテルナイト)!!

 

 魔王教団でも1人なら何とかなるはず……。とりあえずいつも通りフーリアとショナに攻撃を任せて私とユウリはサポートへ周る。

 

 レオはこっちが準備をする前に炎の魔法を使ってくる。

 牢屋の中が、ピカピカピカッと星のように輝くとそこから爆熱の炎が吹き荒れる。


「炎耐性を付与!!」


 私だって炎の魔導士、ここに居る仲間へ炎に対する強化魔法くらい使える。

 熱さに少し苦しんでいた3人だけど、すぐに調子を取り戻す。


「炎への耐性付与……。お前炎の魔導士か」

「そうね……それが何?」

「ダメだ……ダメだダメだ……炎は俺のモノだ!!」


 さらに炎の温度と威力を上げてくる……。

 どうやら炎に絶対の自信を持っているみたいだけど、こんな地下で炎の魔法をバンバン撃って大丈夫なの……?

 

 多分だけど、これだけで地下の酸素が結構減ったはず。

 最悪ここに居る全員が酸欠で死ぬことになる。はやく4人でここを脱出しないと!!

 

「フーリアの風でこの炎を散らせる?」

「余裕よ」

「じゃあその後、すぐに階段を上って――」


 そんな考えを巡らせながら、皆に指示を出す。しかしそこで私はあることに気づいてしまった。

 もしこのまま放置していったらここに捕まっている人達はどうなるのか……。酸素は先程よりも薄くなっていると思うし、炎の熱気に当てられているはず……。

 さすがにここに居る全ての人達へ炎の耐性を付けるのは不可能。


「ていうか、あなた……あまり殺すのは良くないって言ってなかった!?」

「実験はほとんど終わっているとも言った。見られてしまったのもあるし、もうここは破棄する!!」


 レオはさらに炎の温度を上げている……。

 このままだと地下のに居る人達は助からない、それに気づいたショナは怒り狂う。

 

「やめろぉぉぉぉおおおおおお!!」

「ショナ!!」


 そんな光景を見ていられなかったのかレオへ向かって剣を構え、突っ込んでいくショナ……。炎への耐性は付けているんだけど、それでも限界はある。それにフーリアの風で炎を散らせるはずだったのに、射線にショナが居る事で魔剣の力を使えない。


「このままだと風が使えないんだけど!!」

「くっ……こうなったら私達もショナに付いていくよ!」


 私は牢屋に閉じ込められていた人達を…………諦めた。

 

 あんな状態でずっと放置されていてもいずれ死んでしまうだろう……それにここを破棄すると言ったからには閉じ込められている人達がどうなるのかは予想が付く。

 私が皆に作戦を伝えたり、考えたりしろとエキナに言われて最初は無理だと思っていた。

 

 だけどこんな今の状況なら私でよかったのかもしれない……。

 私の精神は40年くらい経験している。故に16歳程度の少女達にこんな選択をさせずに済んだ。

 ……そう思い込むことで罪悪感から目を逸らす、私だって苦しくないわけじゃない……っ!!


「ここから離脱するから……ユウリはショナを無理やりにでも引き剝がして!!」

「わ、わかった……!!」


 レオへ向かって行くショナ、そしてそれに付いていく私達3人。

 この廊下の空間はある程度把握している。ルミナの目のおかげでね。

 

 雷を纏った剣がレオへ振り下ろされる……しかし、レオは炎を使って雷の剣を押しのける。炎と雷、相性的には雷の方が少しフリか。


「この程度じゃ俺の炎には勝てないぞ!!」


 狂気の笑みを浮かべるレオはショナへ向かって炎を放つ。

 その瞬間、ユウリは植物の魔法を使ってショナの胴体を掴んで、階段の方へ放り投げる。

 階段の方へ移動していたユウリは大きい身体でショナを受け止めるとそのままがっちり掴んで放さない。


「ちょ、ユウリ……!!」

「ごめんね……ショナなら多分あいつを捕まえるまで戦い続けるから……でも今はダメ!!」

「なっ……放して!じゃないと……!!」


 ユウリはショナの言う事を聞かずに階段を駆け上がる。

 

「逃がすか!!」


 レオはそんな2人を逃すまいと魔法で攻撃、その隙を私は見逃さない。

 私が炎に紛れて近づいている事に気づいていないレオへ至近距離の――。


不死鳥の炎(フェニックスフレア)!!」

「ぐあっ!?てめぇ……」

 

 レオの頭部へ向けて炎を放った。

 相手が私の炎を食らっている間にフーリアと一緒に階段を駆け上がる。


「はぁ……はぁ……フーリア、大丈夫?」

「ゲホッゲホッ……煙を少し吸い込んだけどね」

「ショナとユウリは?」


 先に前へ行っていた2人の姿は階段を上ったすぐそこにあった。

 だけど、何やら言い合っているみたい……。


「ユウリ!どうしてこんなことを……」

「ご、ごめん。でもあのまま下に居ると多分死ぬから……」

「それでもあの牢屋の人達を見捨てるなんて……」

「それじゃあショナは私達が死んでも良かったの!?私はショナが死ぬなんて考えたくもないくらい嫌なの!!」

「ユ、ユウリ……」


 私が逃げるように言ったんだから、ユウリが怒られるのは筋違いだ。


「ごめんねショナ。でも私もユウリと同じ考えなの……それに牢屋に閉じ込められていた人達を無駄にしちゃダメだと思う……。生きてこの事を伝えるしかない」

「わ、分かってるよ……」


 レオがどうなったのか分からない……ほぼ0距離で私の魔法を受けたんだからダメージはあるはず……。

 あの炎の中で酸素はほとんど消えて動けないのなら死んでいてもおかしくない……。

 

 こんな嫌な終わり方をしたんだから、せめてレオは倒していて欲しい、そんな事を考えながら私達はギルドへ戻った。

 

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