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第97話 地下の囚人

 

 謎の階段を下りて行くと人の叫び声のようなモノが良く聞こえてくる。

「うがぁぁぁぁああ」とか「助けてぇぇ……!」とかなかなか怪しげな叫び声が響いてる。

 

 封印魔法で音を抑えていたんだろうけど、こんな大きな声だからか、外に少しだけ漏れていたのかあるいは少し緩んでいたのか。後者だとすると相当昔に封印された可能性がある。

 

 それだけ人が苦しい思いをしているってこと……。


「ねぇ……本当にお化けじゃないんだよね?」

「そ、そうに決まってるでしょ!誰かが居るのなら確かめないと……」

「うぅ……フーリアは強いね……」

「と、当然でしょ!怖くないんだし!!」


 お化けのようなモノの類じゃない。それは分かっているんだろうけど、見ない事には分からない……だからこそ、まだ2人は少し怯えている。

 実の所、私も少し恐怖心を持っている……というのも灯りは壁に穴を開けてそこに蝋燭が置いてある程度でほぼ真っ暗と言っていい。

 私が怖いのはそんな暗い空間でもし敵に襲われたらと考えたもの。

 

 暗い所はむしろ好きだったんだけどね……それは場所による。

 石レンガの階段を最後まで下りる。なるべく音を立てず、バレないよう慎重に部屋を覗く。

 

 しかし――。


 ガラガラッ。


 やってしまった……。

 

 足元に何やら鎖?のようなモノが落ちていてそれを蹴ってしまった。

 

 音は部屋中に響き渡る――。


「ひぃぃぃぃぃぇぇぇぇぇえええ!!」

「ちょ……ショナ静かに!!」


 私の出した音だとは知らず、ショナはこれでもかと叫び声をあげた!!

 すると先ほどまで苦しそうな声が聞こえなくなる。少しだけ間を置いてすぐに――

 

「だ……れだ……」


 どこからか男性の声が聞こえる。しかしどこか弱々しい。

 階段を下りた先にある部屋のすぐ近く、おそらく私達との距離はほとんど無い。壁1枚挟んだ所に誰かいる。

 苦しそうで今にも消えかかりそうなその声はここで悪だくみをしている悪党とは思えなかった。

 

 どちらかというと……被害者……?


「どうしよ……魔法で照らしてみる?」

「そんなことをして誰かにバレたら面倒だよ?」

「まあでもその時は皆が居るし……」


 4人居れば何とかなる。

 そう思っていたんだけど、まだ2人は少し不安そうに怯えていた。この状態だとまだ戦えそうにない……か。

 どうすればいいのか悩んでいると服の中からルミナが出てくる。

 

 突然出て来るから色々と驚くんだよね……。


「んっ……どうしたのルミナ?」

「きゅぅぅうん!」


 まさかルミナが私に力を貸そうとしている?

 ここでその力を使うと後が大変だ。敵を倒せるかもしれないけど、ここで誰か何をして、敵も何人いるか、どんな実力を持っているのか分からない。

 

 だけど、そんな私の意志とは別にルミナは私に力を与えてくれた。

 それはいつもの狐の耳と尻尾、そして魔力じゃない。これは――。


「どうしたの?何かあったの?」

「う、うん……ルミナの力で目が良くなった……?」

「狐の目を貸してくれたとか……?この暗がりでも見える?」

「うん、良く見えるよ。フーリアとショナが怯えてる顔が」

「なっ……!?」

 

 私がそう言うとショナは顔を赤くして、フーリアは頬を膨らませていた。そんな可愛い二人を見ていたい気持ちはあるが……今はこの声が何のか見ないとね。

 私は部屋の中を覗き、壁1枚先にある方へ視線を向ける。


 そこには牢屋があり中に人が居た。

 

 やせ細った身体、ぼさぼさの髪、そして微弱な魔力……。


「魔導士が囚われてる……」

「やっぱり人が居るのね……という事で怯えてるフーリア!ショナ!どうやら人みたいだよ」


 今までは人の叫び声だと分かっていても確証がなく、お化けである可能性に怯えていた2人だけど、どうやら完全に復活したみたい。


「べ、別に私は怖くないけど……それは助けないと!!」

「エキナさんの代わりだからね。きっとこれをこなせれば高く評価されるはず……!!」


 やる気になった2人を確認して私は部屋の様子を隅々まで見回す。

 どうやら牢屋の中に囚われている人が居るが、自由に歩き周って見回りをしている人は居ないみたい。

 

 ということは出て行っても大丈夫そうね。

 階段から離れて部屋へ入り、牢屋に閉じ込められている人の所へ向かう。


「あの……うっ……」


 強烈な匂いに鼻が曲がりそうになる……。ルミナはそれに気づいて、私へ与えてくれていた力を戻して、服の中へ戻って行った。

 獣にはこの悪臭はきつ過ぎるか……。

 

 仕方ない、頑張って話をしてみよう。


「どうして閉じ込められているんですか?」

「ゆ……かい……された……んだ」

「誘拐?」


 途切れ途切れの声なので聞き取れない所は聞き返すことで確認する。

 男は首を縦に振る。

 誘拐されたという事は一番近い街ジャスミンの住民かな。一応確認のために聞いておくか。

 

「ジャスミンの人ですか?」

「……」


 私のその問いに首を横に振る。

 ジャスミンの街じゃないということは……まさか……。


「ルエリア王国……ですか?」

「は……い」


 ルエリアの人……。

 

 確かにここはルエリアに近い場所だけど、どうしてこんな所に人が……。

 思考を巡らせているとショナが男を見てあることに気づいた。


「あれ、この人。剣士じゃない?」

「え?でも魔力を感じるよ?」


 ショナが言うには手のマメや足の筋肉を見て剣士だと判断したみたい……。

 やせ細っていたから私には違いが分からないんだけど……フーリアやショナから見ればこの人は剣士で間違えないという。


「まさか魔導騎士(エーテルナイト)!?」

「……」


 しかしそれにも男は首を横に振る。

 魔導騎士(エーテルナイト)でもないのに魔力を持っていて剣を扱う……?まさか私と同じ体質の人……?それとも……。


 そんな考えを巡らせていると階段の方から、カツンカツンッと音が聞こえてきた。

 その音を聞いて囚われている男が掠れているが大きな声で叫ぶ。


「や、奴……が……来る!!」

 

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