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第95話 お化けが出る森

 

 エキナが魔王教団の捜索のため、帝都へ向かってしまった。

 

 私達は彼女が事前に受けていた依頼を代わりに受ける事になり、ハーベスト帝国とルエリアの国境付近に来ている。

 自然豊かなハーベスト帝国と魔物が良く現れるルエリアの国境付近はその2つの悪い要素ばかりが見えていた。

 自然が多い故に慣れていないと迷子になる森、普段は魔物が少ないハーベスト帝国にも多くの魔物が出現している。

 

 そのため、自然が多い場所で魔物と戦わなければいけない。

 当然私の炎魔法は使えない森を焼いてしまうし……。目的地へ向かう最中、私以外の3人は迫りくる魔物を退けてくれる。


「ごめんね、手伝えなくて……」

「仕方ないよ。炎の魔法だと森を焼いちゃうからね」

「あまり私が居ても意味ないんじゃ……」

「いいえ!ルークは居てくれないと困る!!」

「どうして……あー……」


 なんでそんなことを言うのか分からなかったんだけど、魔物との戦闘を終えるとショナは私の方へ駆け寄り手を繋いでくる。

 お化けが怖いショナは森の暗い雰囲気に既に怯えていた。

 

 それならユウリに抱き着けばいいのに、あのふくよかなお腹が好きならいつものように飛び込めば少しは楽になるでしょうに……。


「ユウリはダメ!魔力を使い過ぎてやせ細っちゃうから!!そんなユウリ見たくないっ!」

「えぇ……じゃあフーリアは?」

「……抱き心地悪そう」


 そうショナが呟いた瞬間、フーリアが剣の塚を高く振り上げて力を振り絞る。

 ゴンッと鈍い音が暗い森に響き渡る……ショナはとっても痛そうに頭を押さえていた。

 フーリアは自分の胸が小さい事を気にしているから、そこを悪く言われて怒ったのね……。


「ルークもそこまで大きくないでしょ」

「さすがにユウリ程大きくないけどさ、ルークって脱ぐとまあまあ大きいじゃない?」

「……確かに入学当初と変わってないと思ったんだけど、お風呂に入ると見た目以上にあるわね」

「成長期?てかきつい服のせいで小さく見えてるのかなぁ?」


 2人は同時に私の事を見てくる……。

 それについてはあまり応えたくない……。正直な所、成長しているのは分かっていた。

 年齢的には高校生くらい、ちょうど成長がより顕著に見える時期。

 個人差があるから同い年でもユウリは既に大きな胸を持っている。

 ショナは上着越しでも少し膨らんでいるのが分かる程度、こう言っちゃなんだけど大きくない。

 

 そしてフーリア……これはもっと失礼だと思うんだけど、男性かと見間違えてしまう程無い。見た目も男性顔負けのかっこいい感じだし。

 まあこの子も成長期が来る可能性はまだ残されている。


 私がきつい服やサラシを巻いて大きくなっているのをバレ無くしているのは男にそう言う目で見られたくないから、これに関してはフーリア達はしらないはず。

 ユウリが痩せた時は周りの男子生徒の目線が凄かった。

 

 前世の記憶がある以上、それだけは本当に嫌だ。


「というか、お風呂は交代でしょう?なんで知ってるの」

「……」

「……」

「ねぇ……」


 覗いていたのか入ってきたことがあるのか……全く、この子達は……。

 今度からは覗かれていないか警戒しないと……。


 それにしても……この森、奥へ行けば行くほど不気味な雰囲気が増してきている。

 そろそろ依頼にあった場所までたどり着いているはず。

 内容は不気味な声や音の正体を調べて、解決できそうならする。私達4人では無理だと判断したら、ギルドの仲間を頼ってくれとエキナに言われた。


 調べるだけで良いと依頼には書いてあるのに、解決までするのが花園の冒険者ということね。


 さすがにお化けだとしたら、どうやっても解決のしようがないのでそこは妥協してもらおう。

 

「ねぇ……もうよくない?」

「まだ森の中心も行ってないけど」

「え……もうそろそろ抜けるでしょ?」

「4分の1くらい?」

「ひぃ……」


 こうした言葉をショナにぶつける事で私への密着が強くなって動きづらくなる。 

 一応ルミナも居るんだけど、服の中に隠れちゃったし……。潰さないように気を付けないと。

 不気味だけど比較的、平和な時間が流れる。

 

 このまま何も無ければ――と考えていたその時だった。

 おそらく森の中心へたどり着いたまさにその時……。

 

 ……ケテ――。


 謎の声が聞こえる……?弱々しい男性の声だろうか?

 

 どこから聞こえるのは特定できない。

 前の方から聞こえると言われれば聞こえる……だけど後ろからも……いや左右からも聞こえるような……。

 

 上手く聞き取れない……仕方ない……もう少し耳を澄まして――。


「ぎゃああああああああああああ!?」


 そんな耳を澄ませている私の鼓膜を破壊する勢いで叫ぶショナ。

 

 うぅ……頭がキーンとする。

 

 そんなショナをフーリアは呆れた目で見ていた。

 

「ちょっとショナ、ルークに抱き付きすぎよ!」

「仕方ないでしょ!何か聞こえるんだもんッ!」

「聞こえるからこそ、叫ぶのもやめて!」

「うぅ……やっぱり聞こえるんだぁ……」

「黙って!」

「こっちも怖い……!!」

「はぁ?」

「ひぃ……」


 フーリアはショナの事を物凄い眼力で睨んでいる。

 確かにうるさかったけど、そこまで怒ることはないんじゃ……。

 

 なんせ彼女は大地の魔法使い。こういう自然豊かな場所ならどこから声が聞こえるのかもわかるはずだ!

 そんなユウリは地面を睨んでいた。

 

「ユウリ、どうしたの?」

「聞こえる……」

「え?」

「地面から……声が聞こえる」


「「えっ?」」


 フーリアとショナはそんな驚いた声を上げると左右の私の腕を力強く握り出す。

 剣士2人に抱き着かれてとてつもなく痛い!!というかなんでフーリアまで抱き着いてるのよ!!

 

 微かにまだ聞こえるか細い男性の声に2人は震えている。

 この下に一体何があるの……!?

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