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第94話 エキナの依頼

 

 平和を願いながら、私はショナの家でルミナと戯れていた。

 

 ルミナの力の消耗による副作用は何とか無くなって、身体がいつも通り自由に動かせるようになったんだけど……まだ少し倦怠感があり何もしたくない。

 もしかしたらまだルミナの力が完全に抜けきっていないのかな、ずっと違和感があって、それのせいで何もしたくないんだよね。


「ねぇ、そろそろ起きたら?」

「って言われてもなぁ……なんかだるくて……」

「ルミナの力がまだ残ってるんだっけ?ずっと一緒に居るからでしょ?いい加減離れたら?」

「でも、家に居る時は暇だからどうしてもルミナの相手しちゃうんだよね」

「……私……るん……ど」

「なんか言った?」

「……何も!とりあえず今日は皆でギルドへギルドへ行くからいいわね!!」

「分かったよぉ」


 そんな顔を赤くして、怒らなくても……。はぁ……仕方ない。少しはギルドへ顔を出そう。

 

 重い身体を無理やり起こして、家の外で待つ3人と合流する。

 さすが若い子達……行動力があるね――私も同じ若い子の身体ではあるんだけど……。

 

「やっと出てきた!!」

「できればもう少しのんびりしたかった」

「外に出た方が気分が楽になるかもよ!とりあえず行こー!!」

「はい……」


 倦怠感がある時、こういう元気な子と話をするのは疲れる。

 本人は私の事を気遣って言ってくれているのは分かっているので、それを拒絶するのも違うよね。

 それにジャスミンの街の綺麗で明るい雰囲気に負けないほど、彼女の瞳は輝いていた。

 

 私はあの後、倦怠感を理由に復興作業を休ませてもらっていた。

 家にずっといたと言っても2日ほど、それなのにもう既に最初に来たジャスミンの街の景色を取り戻していた。

 ここまで1ヶ月近く……充分早いんじゃないかな。


 それどころか、街の雰囲気が全体的に良くなっているのが分かる。

 元気な子供の声、ポジティブな内容の話をしているマダム達。鳥のさえずり、そのどれを取っても理想的な街並みだ。

 

 ショナの言う通り少し気分が明るくなった気がする。しかし、そんなショナは家に近い大きな空き地を見て悲しそうな顔をする。

 まだ完全には元通りじゃない……か。でも確かこの空き地はずっと前からあった気がするけど……。


 そんなことを考えながら歩いているとフーリアがいつものムスッとした顔を私に向けてくる。私というかフーリアは抱いているルミナの事を睨んでいるみたいだった。

 

「てかその狐要る?」

「いた方が良いでしょ?あの力を使えるのはルミナあってこそなんだから」

「それもそうだけど……ずっと一緒に居過ぎじゃない?」


 フーリアはどうしてそんなにルミナの事を嫌っているんだろう。

 いやこれは嫌っているんじゃなくて私がルミナを独り占めしている事が気に入らないのかな?

 

 確かにそれならさっき言われた事にも辻褄が合う。


「じゃあフーリアが面倒みる?」

「……なんでそうなるのよ」

「あれー?」


 そう言うわけでもないのか隠しているのか。

 だけどルミナは連れて行くことは確定している。いつでも魔王教団と戦えるようにね。

 

 今日の予定はギルドで良い依頼があるか見て、いいのがあれば受ける程度だろう。

 

 簡単な依頼を選んで楽ができるようにしよう!!


「あぁ……お前達か」


 ギルドの中へ入るとそこにはエキナが困った様子で頭を抱えていた。

 当然困っている人を見過ごせないショナはエキナに近づいて声を掛ける。

 

「……私はこれから帝都へ向かわなくてはいけなくなった」

「まさか魔王教団ですか?」

「噂程度だが、帝都に魔王教団が居るという情報を貰ってな」

「エキナさんだけが行くんですか?」

「そうだな。花園の支部から要請を求むと連絡が来てな……リリィは副ギルドマスターとしてここに居てもらわないといけない。ユリカは強力な防御魔法を使えるが、まだ子供……だから私が行くことになった」


 確かに1回しか見ていないけどユリカの防御魔法は凄かった。あのリゼルの攻撃を受け止めたんだから……。

 子供だと甘く見ると痛い目に合う……が、さすがに帝都まで子供一人で活かせるわけにはいかなかった。


「お前達はこれからどうするんだ?」

「とりあえずいつも通り依頼を……できればルエリアの学校が始まるまでは……」

「ルエリア……か」


 エキナはなんだか難しそうな顔をしている。

 突然帝都へ来るように言われて困っているのかと思ったんだけど、もしかしてそれじゃない?

 

 ルエリアで何かあったのかな?


「これを見ろ」


 そう言ってエキナは私達の前にギルドへの依頼の紙を渡してくる。それには何やら不気味な内容が書かれていた。


【最近、ジャスミンの街とルエリア王国の間の道を通ると、どこからともなく声が聞こえるんです……私は馬車で人を乗せるため、よくジャスミンの街とルエリア王国を行き来します。その時に聞こえる不気味な声で馬たちが不安になって動こうとしなくなります。どうか原因を探って、できればそれを解決して頂きたい】


 ふむ……まあ魔法がある世界だし、お化けが居てもおかしくないのかな?

 

 そんなホラー系の魔法があるのか知らないけど……。

 不気味な声が聞こえるのは何だが嫌な感じだけど、調べるくらいなら受けてもいいかもしれない。

 幽霊の存在は完全に否定はできない。だって私がこの世界へ来る前に魂だけになって女神様に会ったんだし……。

 まあ居たとしても、お化けは昔から怖くないので平気だ。


「不気味だけど、調べるだけならいいんじゃ――」

「え……ルーク……さん行くんですか?」

「ショナ?どうして敬語……?」


 もしかしてお化けが怖い……?

 年頃の少女だし分からなくはない。

 怖くて不安ならやめておくか。


「ショナは嫌なのか?そうか……まあそれならいい。他を当たろう」

「え……まさかエキナさんが悩んでいるように見えたのは……」

「ああ、この依頼は私が受けたものだった。が、知っての通り私は帝都へ向かわねばならない。こういう未知の存在を相手にする冒険者は少ないからな。お前達なら任せても良いと判断したんだが……」

「うぅ……!?」


 ショナと言う女の子は比較的善人だ。

 

 仲間が困っていれば自分から助けに来るし、様子を窺って何も言っていないのに察してくれる。

 面倒な事を全て受け持ってくれるし、リーダーとしてはまだまだ未熟だけど頑張っている。だからこそ、困っているエキナのその表情を彼女は見逃せなかった。


「分かりました……行きます!!」


 どうやらショナは受ける事を決めたようだ。

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