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第91話 焔狐

 

 ルミナのこの力がギルドマスターに匹敵するのか……やってやる!!

 

 リゼルは師匠(せんせい)と同じで魔導騎士(エーテルナイト)ではないのに魔法と剣を使える……それって師匠が魔王教団の人間だったりして……。

 この力の根源がもし、あの人なら他人事じゃない気がしてならない。


焔火(えんび)!!」


 まずは軽い魔法で様子を見る。

 いくら私に絶大な力が宿ったとしても相手はギルドマスターだから油断はしない、どんな魔法かまたは剣術で私の炎を防ぐのかと伺っているとリゼルはあっさり私の炎を細い剣で斬り伏せた。


「炎が斬られた……」

「こんなもので俺が止められるかぁぁぁぁあああああ!!」


 相変わらずリゼルは冷静さを欠いている、荒々しい口調が目立つ。

 そして私はそれを理解していながら、精神にも負担がかかるのを感じる……。

 おそらくカプリコーンよりも格上の相手、しかもあいつは私と相性が悪かったから有利に戦えたというだけ。

 純粋にカプリコーンより強いならちょっときつい……。後この荒々しい態度に少し恐怖を感じている。

 大声を出すのが威嚇なら十分効果を成している。

 

 リゼルは細い剣を握ったまま、私の方へ向かってくる。

 どうしよ……身体強化で受け止める……?いや、できなかった場合は最悪腕を切断される。じゃあ回避する……?後ろには花園のギルドがある。

 まだ中には人が居るし何より、私に付いてきてくれたフーリアたちが危険にさらされる。


 とりあえず全力の炎の魔法で――。


 そんなことを考えていた時、リゼルがバランスを崩して足を止める。

 ドジをするはずがないよね……?リゼルの足元を見てみると、地面が揺れているのがわかる。

 

 これはユウリの魔法……?

 

 だけどあの子はもうほとんど魔力も残ってないし、魔力に変換するための脂肪も使い切っている。


「うぅ……魔力が……!!これが限界!後はよろしくぅ~!!」

「ふんっ!ルークなんて居なくても私が倒せばいい……!!」


 フーリアが身動きの取れないリゼルに斬りかかる。相手はフーリアよりも圧倒的に格上なのに……!!

 

 剣をリゼルに向かって放つと同時に風に押し出されてその威力が増す。が、薬で強化されたリゼルは細い剣を片手で持って受け止める。

 そしてもう片方の手で魔法を放つ。


「やばっ……!!」

「危ない!!雷よ!!!!」


 次はショナが離れた距離から雷の剣を振る。すると空から雷がリゼルを的確に狙う。雷の速度にも反応するリゼルだけど、それに乗じてフーリアは退避する。

 見事なまでのコンビネーションだった……。

 

「まるで硬い地面を斬ってるみたいね」

「ちょ……フーリア大丈夫!?」

「見ての通りよ」

「無茶しちゃ駄目だってここは――」

「皆でやるんでしょ?」

「え?」

「そう言う作戦方針を取ったのはあなたじゃない。私に散々手伝えって言っておきながらこういう時は要らないなんて都合がよすぎるのよ」

「そ、そこまで言ってないけど……」


 確かに1人で戦う事ばかり考えていた。仲間が居ると考えていてもこの力がある私がやらないとって、でもそれじゃあ勝てないのは今のを見て分かった。

 皆を危険に晒すのは嫌だけど……でもそう……もうこの子達は子供じゃないんだ!!


「分かったけど……死んだら許さないからね」

「誰に言ってんのよ」

「魔力無いから、ほどほどに~……」

「とっとと作戦を頂戴」


 作戦か……。相手は狂暴になっていて化け物を相手にしている気分。

 魔法を薬で使えるようになったのが今だから、どんなことができるのかもわからないし……。

 せめてもう少し探りたいところ。


 そんなことを考えていると私の後ろから凄まじい勢いの風に乗った白い花びらがリゼルの方へ向かって行く。

 

 これは……?


 後ろを振り返るとそこには魔法を行使するリリィの姿があった。


「サポートはします……が、先ほどの戦いを見る限り私では近づいたら即やられてしまうので……」

「それより、これって風魔法ですか?」

「風と植物の魔法ね」


 風と植物か……もしかしたらうまく使えるかもしれない。

 風と花びらに視界を奪われてまたも動きにくい状態にされたリゼルだが、手を翳して水の魔法を使う。

 

 花びらを乗せた風と水がぶつかり合い、相殺された。


 使える魔法は水……炎との相性は最悪か。

 これで作戦が失敗したら溺れ死ぬかもね……それでもやると決めたんだ!!


「フーリアはリリィさんの近くに居て、風を起こしてほしい時に言うわ」

「風……?分かったけど、何をするの?」

「説明は後ね」


 そんな暇が無いから最低限の指示で済ませる。

 次はユウリだ。


「ユウリは魔法使える?」

「えぇ!?か、軽いのならぁ~……」

「それじゃあ私の身体を強化して欲しい」

「それくらいなら……!大地の力をルークに付与!!」


 ルミナだけじゃなくてユウリの魔法でさらに強化される。

 力が湧いてくるけど、まだこれじゃ足りない。


「ルーク!私は!?」

「ショナはリゼルでも反応できないくらい周りを動き回って牽制と雷で嫌がらせできる?」

「わお、それ凄く得意っ!!」


 雷を纏ったショナはまさに雷光のごとく。

 圧倒的な速度とびりびりとしびれる雷をリゼルの身体に触れさせる。威力はリゼルからすれば静電気のパチッとする程度だろう。

 強くは無くてもとっても鬱陶しいはずだ。


 後はルミナの力を全力で放つ……相手はギルドマスタークラスだから魔力や剣を振るう体力も多いはず。

 

 だからこの全力を出せる瞬間で終わらせる!そう……私の狙いはワンパンだ!!


 嫌がらせを食らっているリゼルは徐々に怒りのヘイトを上げていく。


「鬱陶しいハエがぁ!!」


 リゼルは手を伸ばしてショナを捉えてしまった。

 手がショナに触れるという瞬間、そこへエキナが割って入る。


「エキナさん!!」

「か……可愛い……教え子達……はぁはぁ……を殺させない!!」


 息も絶え絶えに残った力を振り絞ってショナを守ってくれた。

 そしてショナもそれに応えるように剣をリゼルに向けて振るう。

 エキナの攻撃を防ぎながらリゼルは水の魔法を使ってショナを押し出す。


「ああああああぁぁぁぁ……」

「ショナ!!」


 エキナがショナの心配をした瞬間、剣に力を入れて力一杯吹き飛ばす。


「ぐあああああっ!?」


 2人でも一瞬止めるのがやっと……だけど、時間は十分稼いでくれた!!


「リリィさんさっきの魔法をもう1回お願いします!!」

「分かったわ……花びらよ舞え!リリィスワロー!!」


 風と花びらの魔法が再びリゼルを襲う。リゼルは先程と同じように水の魔法を使って防ごうとする。そこへさらに文字通りの追い風を追加する。


「フーリア!!」

「あーなんとなく分かったわ。魔剣アスタロトよ嵐を起こせッ!!」


 フーリアとリリィの風魔法が合わさり、その威力が増す。

 だけどまだ余力があるみたい……剣を使って魔法を経由し、水の魔法を空いている手と同時に放つ。

 私でも炎の剣の力を使いながら、剣を持っていない手で魔法を使うのは難しい。


「ルーク!!どうするの!?」

「私を信じて……!!」

「……死んだらホントに許さらないから!!」

「分かってるって!」


 準備は皆が整えてくれた。

 後は想像した通りに魔法を使う……できるかどうかわからない。けれどここに居る皆のためにやらなきゃいけない!!


 私は人生最後になるかもしれない魔法を放つ――。

 

焔狐(ほむらぎつね)!!」


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