第86話 アルストロメリアのギルドマスター
アクアドル達との戦いを終えてアルストロメリアへ入る……が、門番に止められた。私達の急いでいる様子に不振を与えてしまったみたい。
ギルドマスターの証を見せてさらにショナが「急用です!!」そう言うと門番の人はその緊迫した空気を察してくれた。
当然それだけじゃなくて、冒険者チームスイレンと言う事を伝える事で信用を得てえる。まだ名前なんて全然有名じゃないんだけど、チームの名を名乗るという事はそれだけ重要な事だと伝えるのに時間は掛からない。
アルストロメリアへ入るとそれはそれはとっても綺麗な街が見えてきた。
ピンクを基調面とした可愛らしい街並み……本来なら観光でもしたいところだけどそれどころじゃない。門番の人にギルドの場所を聞いてすぐに向かった。
街の入り口の近くに件のギルド花園の支部、アマリリスが見えてくる。同じギルドでも支部だからギルドの外装は違う。
少しだけ戸惑いを覚えながらも私達はギルドの扉の前までやってきた。
「はぁ……はぁ……ここだね」
「話を聞いてくれるかな?」
「なんて話せばいい?こういう時こそルークに頼りたいんだけど……」
「私に他人とのコミュニケーションを期待するのはやめた方が……」
「うっ……!じゃあ私が頑張るよぉ!!」
ショナにごめんと頭の中で謝りながら、彼女はギルドの扉を開ける。開けた途端、ギルドからはとてもいい匂いが香ってくる。
凄くおっとりして少しだけ急いでいた心が穏やかになった。
立ち止まっていると私達の方へギルドの受付の人が寄ってくる。
「あら?どうしましたか?ギルドへの依頼?それとも加入ですか?」
「はっ!受付嬢の人だっ!そ、その……これを見てください!!」
ショナは急いでギルドマスターの証を受付の人に見せる。
当然、花園のギルドマスターの証を持っていたショナの事を疑う目で見ている。だけどショナのただならぬ雰囲気で何かを感じ取ってくれる。この街の人達は察しが良いというか優秀な人が多いな。確かここには星の欠片のギルドは無いんだったか……一枚岩だからこそ、人材を他に取られることも無い。
そしてギルドマスターの証がショナの手にある事で受付嬢はある仮説を立てる。
「まさか、リリィで何かあったんですか?」
「はい!わ、私は……私達は花園……じゃなくて支部のリリィで冒険者チームをしてるスイレンです!えっと、えっと……マスターがアルストロメリアまで行けってそれでそれで……」
「話は奥で」
「は、はい!!」
証を見せた事で本来ならすぐには信じてもらえないだろう話がすんなり通った。
どうやらマスタージャスミンの判断は間違えじゃなかったみたい。ギルドの奥へ通されて、いい匂いのする部屋で待って居るように言われる。
それから数分もしない内にさっきの受付の人とマスタージャスミンにも引けを取らない魔力を持ったお姉さんが入ってきた。
深い帽子を被っているが、長いピンクの髪が帽子からはみ出ている。顔はその髪で隠れていてよく見えない。
「あ、どうも……私はここのマスター……アルストロメリアです……はい」
「ギルドマスターですか……?」
「あ、はい……一応ギルドマスターを任されています」
「あ、あの……お話を聞いていただいてもよろしいですか!?」
「あ、でも落ち着いて、ゆっくり……早く話すのは苦手なので……あっ、情報をお願いします」
なんだが暗い感じの人……。
悪い人ではないみたいだけど、その暗い感じと弱気な雰囲気……とてもじゃないけどギルドマスターには見えない。
人は見た目に寄らないというし、ここはそんな単純なもので判断する必要はない。
ショナは先程まで慌てていたものの、どこからか流れてくるとってもいい香りで落ち着いたのか、ゆっくりと確実に話をする。
先ほどまであったことをマスターアルストロメリアに話す。
するとマスターアルストロメリアは顔を上げて受付の人に縋る。
長い前髪をかき分けて、綺麗な赤い瞳を向け――
「ど、どうしよう!?ジャスミンさんが襲われるぅ~!?」
「マスター……一応あなたはここのトップなんですから、子供の前ではせめてしっかりしてください」
「で、でも……皆は私の事を支えてくれるから、こういう時どうすればいいか分からなくて……」
「とりあえずそうですね。マスタージャスミン様の証の【香り】を嗅いでみてください」
「な、なるほど……匂いで記憶を辿るのね……!」
「えぇ……一応この子達が嘘を付いていないのか……あと状況をもっと詳しく見てきてください」
「は、はい……」
マスターアルストロメリアはマスタージャスミンのギルドマスターの証の匂いを嗅いでいる。なんだか少し変態みたいな感じだけど……。
受付の人曰く、マスターアルストロメリアは物に付いている匂いを嗅いで、その記憶を辿ることができるという。
やっぱりギルドマスターだけあって特殊な能力を持ってる……。
とてもじゃないけど私にそんな芸当はできない……。獣のような鋭い鼻でも不可能だと思うし……何か特殊な種族だったりするのかな?
匂いを嗅いで記憶を辿り終えるとさっきよりもさらに焦っていた。
「ど、どどどうしよ!本当だったよ……ジャスミンさんがエルフの男に襲われてた!!」
「言い方……。それじゃあ同じ花園として助けに行きますよ」
「私が直接行くのはちょっとダメじゃなかったっけ?」
「あ、そうでしたね……。それじゃあS級の冒険者数名とこの事をギルド本部へ連絡してください」
「わ、私……あのお偉いさん達と話すの苦手なんだけど……」
「ギルドマスターなんだからそれくらいしてください!!いいですね!!」
「で、でも……」
「いいですね?」
「は、はい……」
どっちがマスターか分からないけれど……とりあえず助けには来てくれるみたい。
受付の人の話通り、アマリリスのS級冒険者数名を貸してくれた。
よし……後はまたリリィへ戻るだけ!!マスターたちが無事だと良いんだけど……。




