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第85話 突破

 

「なにこれ!?」


 身体から炎で作られた狐の尻尾と耳が生えていた!?身体は一応普通の人間だけど、新しく追加された部分だけ炎で代用されているみたい。

 というか肩に乗っていたルミナの重さを感じない……。


 右肩を見るとそこに居たはずのルミナの姿が無くなっていた。


「え?ルミナは?」

「さ、さぁ……ルークが魔法を使った時には居なかったような……」


 あの子はどこへ行ったんだろう……。

 なんとなくだけどすぐ側にいる気がする……。おそらくこれはあの子の力なんじゃないかな。

 

 一度フーリアの時もダインスレイブから貰った魔剣と無理やり契約した。

 本来は不可能なはずなのに、ルミナが先ほどと同じ光を放って無理やり契約ができたし……。ルミナはもしかしたら私達の理解に及ばない何かの力を持っているのかもしれない。

 

 狐の女神様の贈り物だしね。

 

「凄く魔力が増した……これならやれるかも!!」

「なんかよく分かんないけど、やろう!後、割と似合ってるよっ!」

「ショナ……それちょっと恥ずかしいから……」


 そういえば前世は狐娘みたいなのが好きだったけど、アレは見るのが好きなだけで自分がそうなりたいとは思っていないんだけどなぁ。

 転生するときも神様に理想の好きな要素を合わせた子に生まれ変わらせると言っていたし……ルミナはおそらく神様の使い。

 

 どんな理由で死んだのか未だに思い出せないけれど、哀れな理由で死んでいるのならそんな理想の転生をさせようと慈悲をくれたのかもしれない。

 ルミナが私と出会う事で人間でありながら狐っ子にもなれるってことか……。

 

 余計な事を……。

 

 だけど何故か内心心の中では胸が高鳴っているのを私は感じている。

 

「それなら最初から亜人で良かったんじゃ……」

「どうしたのルーク?」

「え?いやなんでも無い!!それよりはやく証を取り返そう!」

「そうだね!でもどうしよ……?」

「ショナ達はアクアドルをお願い」

「まさかカプリコーンと1対1で戦うつもり?あいつ結構強いよ!!」

「大丈夫だから信じて」

「わ、分かった……ユウリ、フーリア!行くよ!!」


 ユウリは普通にショナに付いていくが、フーリアはまだ少し戸惑っている様子……無理もないか、急に私が変な姿に変貌したわけだし。受け入れているショナが異常なだけだ。

 

 私はこちらを何とも言えない表情で見つめてくるフーリアへ首を縦に振った。

 「信じて」とそう伝わってくれればいいんだけど……。

 フーリアはまだ少し不安を残しながらもショナに付いて行く。


「私負けたら許さないから……!!」

「分かったよ……」


 これ以上フーリアに嫌われるわけにはいかないので負けられなくなった。

 確かに今の私には力がある……だけどカプリコーンの強さは底が知れない。いとも簡単にフーリアとショナをいなす柔軟さ、魔法を手に纏わせることで鉄の剣の強度に耐える強化魔法。


 そして私の炎からアクアドルを救った時の速度。そのどれをとっても彼に隙は内容に見える。星の欠片の中でもおそらく相当な実力者だ。

 アクアドルよりも厄介な相手は私が相手をするべきだと判断して、ここは役割を得る。

 

 睨め合っていると相手の異様な雰囲気に怯えてしまう。

 カプリコーンはまるで私を見ていないようなつまらないような……完全に「無」の表情しかない。

 ただ、腕をだらーんとしていて隙だらけ……。


 誘っているのかな……?だとしたら迂闊に動くべきじゃない。

 そんなことを考えているのがバレているのかカプリコーンはダルそうな声で言う。


「来ないならいいんだぞ。俺はアクアの手助けをする……」


 その瞬間、カプリコーンは私から背を向けた。

 本当にアクアドルの手助けに行こうとしているみたい……凄く誘われている感じがするけど、どうやら様子を見ている暇はないらしい。


 私は魔導士だけど、剣士として身体を鍛えていたから、近接戦も得意だったりする。今大事なのはカプリコーンを3人の下へ行かせないこと!!

 私は拳を燃やしてカプリコーンへ放つ。カプリコーンは拳を手のひらで受け止める。


 結構全力で殴ったんだけど……簡単に止められた!?


「ん……これは……」


 そう思っていたんだけどカプリコーンの力が少し弱まったように感じる。

 

 いや、弱まったんじゃない……私の今の力が相当強いんだ!!

 

 このまま押し切ろうと炎をさらに燃やしてカプリコーンの身体を吹き飛ばす!!

 しかし、カプリコーンは手のひらを一瞬だけ私の拳から離して、高速で身体を移動させる。

 瞬時に私の横に立ち次は魔力を纏わせた手刀で私を攻撃してくる。圧倒的な速度、故に目で追う事しかできない。

 私の身体はカプリコーンの手のひらから拳が離れた事でバランスを崩している。


 やばい――


 カプリコーンの手刀が私の首に触れる。

 

「うぐっ……」


 グラッと脳が揺れる。

 痛い……!けど何故か耐えられない程じゃない……?


「――ッ!!」


 異変に気付いたのかカプリコーンは私から距離を取る。

 そして私の首筋を狙った自分の手を見やる。カプリコーンの手は炎に焼かれた跡が残っていた。


「……マジか」


 そう驚いた声を上げるものの、依然として無表情なまま。

 だけど少し焦っているのがなんとなくわかる……。何かこの人も前世の自分と同じ感情の起伏が少ない人ね。


「くっ……カプリコーン!早く私の手助けに来てくれませんか?」

「アクア……予想外だったんだが、こいつは結構強い」

「私は3人を相手にしていますよ……」

「純粋にこの女と俺の相性が悪い……。俺の直接攻撃じゃこいつをやれないからな」

「役立たずね」

「お互いにな」


 さすがに人数差のある戦いと私との相性の悪さを感じているみたい。

 相性の悪さは意外だったけれど、どうやら状況はこちらが有利みたい!!

 私は身体に炎を纏ってさらに身体能力を上げた……しかし次の瞬間、私の目の前に見たことのあるモノが飛んできた。


「え?」


 咄嗟に私は飛んできたギルドマスターの証を取った。

 どうして今、ギルドマスターの証を私の方に投げたのか……。アクアドルに問いただそうとした。

 だけど既にアクアドルとカプリコーンの姿は無かった。


「はやっ……?」


 何かの魔法?しかし2人の声だけは聞こえる。


「今回はこの辺にしておきます。いつかまたお会いしましょう」

「いいの?このままだとあなた達のギルドが終わるよ」

「ふふふ、あそこはあくまで星の欠片の支部なので」

「それでもリゲルは父親でしょ?」

「えぇ……ですが、まあ仕方ありません」

「アクアドル!まだ話は……!!」

 

 声は完全に消えてどこかへ行ってしまったみたい……。

 

 リゼルに命令されて私達を追って来たんじゃなかったの……?

 

 何を考えているのか分からないけれど……今はそんなことを考えている暇はない!!

 私達はすぐにアルストロメリアへ走った。

 

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