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第83話 トップ冒険者

 

  ジャスミンの街からアルストメリアまでは近く、魔物にも遭遇しなかったので安全にたどり着いたことに安堵する。

 私達冒険者チームスイレンにとって新しい街だけど、観光をしている暇はない。

 

 一刻も早くマスターアルストロメリアに助けを求めないと!!


「てかマスターアルストメリアってどんな見た目なのかわからないんだけど」

「まあそこはこのマスターに貰った証を見せればいいんじゃない?」


 不意にショナが胸ポケットの中に入れていたマスタージャスミンから受けとった証を取り出す。

 これは多分、ギルドマスターの証だよね。

 確かにこれがあるならすぐにでも話を通して貰えそうだ。


 それじゃあ大丈夫だな……と安心していたその時――。

 

 急にショナが持っていたギルドマスターの証がその手から離れて宙に浮き始めた……!?


「え?魔法?」

「へぇ……ギルドマスターの証って浮くのね」


 フーリアとショナは呑気にそんなことを言っていたんだけど、なんかおかしい。

 

 2人は剣士だから魔力の感知ができない……だけど本当に少しだけど、どこから魔力が干渉しているように感じる。だけど確証が無くて宙に浮かぶ証をじっと眺めているとギルドマスターの証はショナの手をスーッと離れて行く。


 天高く飛んで行ったかと思うと90度に曲がって私たちの後ろの方に向かっていった。それを目で追う。

 

 証は目で追った先の小さな女の子の手にポンッと乗る。


「何あんた……」


 フーリアは剣を構えて少女に向ける。それに釣られるように私達も構えた。

 私達よりも小さな少女相手に突然、大人気ないと思われるかもしれない。だけどこの子は幼い少女である前に身体的に見覚えのある特徴を持っていた。

 

 綺麗な服装で落ちてくるギルドマスターの証を両手で綺麗にキャッチして育ちの良さを感じる。

 だけど長い耳に金髪、そしてその綺麗な服には見た事のある星を象った紋章を刻んでいた。


「父上に言われてあなた達の妨害に来ました」

「ちなみにその父上の名前は?」

「リゼル……そして私の名前はア……アクアドルです。よろしくお願いしますふふふ……」


 小さな少女にしては少し知的な話し方をしている。だけどむしろそれが少し不気味というか……。

 あまり近づきたくない、関わったらこっちの人生を握られてしまうような……もちろんそれもすぐに警戒するに至った要因の1つ。


 さらにいくら妙な少女でもさすがに4人がかりで攻撃するのは気が引ける。だけど少女は1人じゃない。

 その少女の隣には無表情で細身の男が立っていた。

 

 見た目はあまり強そうに見えない……だけど多分相当強い。


 完全に直感なんだけど、私以外にも3人はアクアドルよりもその青年に対して敵意を向けているように見える。

 

「あら?もしかして気づきましたか?なるほど、あなた達は父上が思っている以上に厄介な方たちなのかもしれません」

「どういう意味?てかその証返してよ!」

「それはできません。ただ彼、カプリンを見てそこまで警戒出来る子達はいい目を持ってますから……」

 

 カプリンってまさかだけどこの赤毛でなんだかつまらなさそうな顔した青年がそうなの?

 なんだかこういっちゃなんだけど、見た目にしては可愛い名前……。


「アクアドル、オレの名前は……カプリコーンなんだが」

「カプリンの方が可愛いです」

「まあ、名前なんて判別出来ればなんでもいい」


 あ、あだ名みたいな感じなのね。

 

 私も昔……と言っても前世なんだけど、あだ名で呼ばれていたことを思い出す。

 

 まあ……まともなやつはなかったけれど……。


 というかリゼルを父上と慕っているアクアドルと一緒にいるのならこいつもギルド星の欠片の一人だよね……。

 よく見てみるとギルドの証の彫られた服を着ている。


 やっぱりこいつも敵……!!


 そしてアクアドルはショナから奪った証をポンポンッと手のひらで跳ねさせている。

 

「さて、この証が無ければあなた達はさぞ大変でしょう」

「……だから返してよっ!人の物と取ったらダメなんだよ!!」

「子供扱いしないでくださいまし、これでも私は17歳よ」

「1歳、年上!?」


 見た目はただの少女なのにまさかの年上だった!?成長が遅いのか、既に止まっているのか……。

 少し可哀そうだけど……まあ小柄でこれはこれで可愛らしい少女なのでありだろう。

 

「あの、そこの赤毛のつまらなさそうな顔をしてる小娘!確かルークさんでしたね?」


 そんなことを考えていた時、不意にアクアドルが私を名指しする。しかもなんだかムスッとしていて怒っているのが分かる。

 

「今、あなたは私が成長止まった悲しい女みたいに思ってるかもしれませんが……エルフは長寿だからまだまだ成長途中なのです」

「は、はぁ……」


 この子……いやこの人はエスパーなの?それともよく言われてるから何となく察したのかな。

 まあよく言われそうではあるか。

 私は何もバレないだろうとそんなことを頭の中で考えていた。

 

「まだ失礼なことを考えていますね?」

「……」

「ここは逃げるのが最良なのですが、舐められたままではいけません。お相手願いませんか?」


 まさかここに来て前世でも有り得なかった少女からのお誘いだ。

 

 すんごいこっちを睨みつけてきてるから、可愛らしいものでは無いのは確かだろうけどね。

 でもこれは結果オーライじゃないかな?


 逃げられるのが最悪な展開だったから、これならまだあの証を取り返せば挽回できる!!

 

 これでも予想より早くアルストロメリアに着いたんだ。

 少しくらい寄り道をしても大丈夫なはず。


「私は星の欠片の支部アンタレスのトップ冒険者、水星のアクアドル」

「同じく、火星のカプリコーン」

 

「「マスターの命令により」」


「あなた達を」

「お前たちを」


「これ以上行かせませんよ!」

「これ以上行かせない……」

 

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