第81話 対立するマスター
星の欠片はもはや手段を選んでいなかった。
マスタージャスミンがギルドから出てくると星の欠片の団員が一般市民に剣を向けていた。
「マスタージャスミンだな?下手な事をするとこいつらの――」
「黙って武器を下しなさい!!」
「――ッ!?」
マスタージャスミンの魔法によって命令された星の欠片の冒険者は市民へ向けていた剣を下した。
その人だけじゃない……他の星の欠片の冒険者全員が武器を下した。
私達は護衛のために出てきたんだけど……あんまり必要ないみたいね。
「……ところで……あなた達、何しに来たの?」
「ご、護衛にと……リリィさんとユリカが残るなら安心だと思って……」
「優しい子達ね。だけど大丈夫、私はこれから隣街まで行って情報を伝えに行きます」
「それなら鳩とか飛ばせば……」
「今回の首謀者が星の欠片のマスターリゼルなら外に人を配置している可能性があるの」
「リゼルって……?」
「会ってない?金髪のエルフの男よ」
「あっ!」
金髪のエルフと言えば星の欠片に間違って入ってしまった時に私達を助けてくれた人だ。
やっぱりなんかあの時は嫌な感じがしたんだけど、間違えじゃなかったみたい。
マスターリゼル……あの胡散臭いエルフが黒幕だとマスタージャスミンは考えているみたい。
ようやくルエリアを襲った魔王教団と協力しているというネタを掴んで街から追い出せたのに……暴動のせいで足を止められてしまう。
星の欠片は簡単に入ることができる故に団員の人数は花園の倍以上居る。
いくら花園の冒険者が皆、個々で実力のある人たちで構成されていても数の暴力には苦戦を強いられる。
「仕方ない……お前達に隣街のアルストロメリアへ向かい、ギルドマスター兼領主のマスターアルストロメリアへ応援の要請と今回あったことを伝えてください」
「マスターはどうするんですか?」
「私はここでジャスミンの街全域へ幻影魔法を使って星の欠片の進行を止めます」
「そんなことができるんですか!?」
「これでもマスターだからなこれくらいは……。あっ……だが、金髪のエルフが襲ってきた場合は少し難しいかもしれない」
マスタージャスミンは前からゆっくり歩いてくる耳の長い人を睨む。
最悪な事にこの状況で一番相手をしたくない人物がやって来てしまった。
「これはこれはマスタージャスミン殿。何をしようとしているんですか?」
「それはこっちのセリフよマスターリゼル。私の大切な子達を襲ってタダで済むと思ってるの?」
マスタージャスミンは臨戦態勢に入る。それと同時にマスターリゼルも細い短剣を構える。戦いが始まるその瞬間――ギルドの中から何かが飛んでくる。
その何かはマスターリゼルの頭上まで飛んでそこから急落下する。
「フェアリーレイ!!」
綺麗な桃色の光が縦に伸びてマスターリゼルを襲うが、リゼルはその攻撃を細い剣で受け止めた。
「貴様の相手は私がする!!」
「エキナ=バイオレットか。君では僕に勝てない」
「それでもマスターの手助けはできる!!」
エキナの攻撃で一瞬止めた隙を狙ってマスタージャスミンは魔法を放つ。
黒い何だが不気味な雰囲気の異質な魔力の塊、味方が使うような魔法とは到底思えないそれはリゼルの方へ向かって行く。
リゼルは魔法を避ける。
「外れちゃった……その魔法はくらうと私に魅了されて言う事を聞くことになるから気を付けなさい」
「ちっ……正義の花園とは思えない魔法を使いますね」
「正義?そんな大層なモノを掲げた事はありませんよ。ただ私はギルドの敵を許さない」
「だがどうする?さすがの貴様も街全域に魔法を展開しながら僕と戦うのは無理だろう?」
「エキナが居れば対等くらいでしょうね」
「ならさらに他のギルドの仲間に助けを求めますか?それなら勝てるでしょう?」
「知ってますよ。あなた達のギルドにもちゃんとした実力者が居る。私の魔法を受け付けない者がいる以上、リリィ達の力は借りられない」
「ならどうする?このままだと平行線だよ」
街全体に魔法を使うとなるとギルドマスターでも味方の支援をするのが限界……。私達が戦いに参戦すればなんとかなる?
そう考えて助太刀しようと考えていた時、マスタージャスミンはショナにジャスミンの花の形を象ったブローチを渡す。
「それを持ってアルストロメリアへ向かいなさい!!」
「で、でも……私達も参戦した方が……」
「エキナより弱いなら足でまといよ。それより早く応援を……そのブローチをマスターアルストロメリアに見せれば事情を聞いてくれるはずだから!!」
「わ、わわ……どうしよルーク……?!」
リゼルの実力が分からない以上、マスタージャスミンの判断を尊重するべきじゃないかな?
マスタージャスミンが言うには私たちじゃ足でまといになるという判断をした。
その通りだと過程すると私たちがここにいても何の役にも立たない。
それなら少しでも役に立つ方を選ぶべき。
少し危険は付きまとうかもしれないけど、この街全域はマスタージャスミンの魔法で怪しいヤツらの動きを封じている。
不安要素はその魔法の中でも動ける人がさっきの話で何人かいるのが分かったこと、おそらくギルドを襲うだろうし、もしかしたら私たちのことを追いかけてくるかもしれない。
「どっちも危険だけど、私は一刻も早くアルストロメリアへ行くべきだと思う」
「街は遠くないしね!歩きだと5時間くらい?私たちなら全力ダッシュで半時間で済むわ!!」
「それなら……!!」
私たちの今やるべきことは決まった。フーリアとユウリも覚悟は出来ているみたい。
「決まったなら行け!!」
「させませんよ!!」
マスターリゼルはエキナの剣を、片手で持った剣で受けながら、もう片方の手をポケットに移動させる。
そこから小さなナイフを取り出し、こちらに向かって投げてくる。
雷を纏ったナイフで多分触れると動けなくなる。
しかも結構速度が早く、回避が難しい。
「させないわ!!」
私達4人の前に不気味で黒い壁が突然現れた。それは私達を雷のナイフから守ってくれる。
「こ、これは……マスターの魔法?」
「そうよ。綺麗でしょ」
「え……真っ黒でちょっと怖いです」
「あら、あなたにはそう見えているのね……ふふ」
「な、なんですか……?」
言っている意味がよく分からないんだけど、助かったならいい。
私はこの隙に、とある方向へ走り出す。
ついでにルミナを回収して、私達は




