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第75話 哀れな冒険者


 依頼のクマは狼の魔物が倒してしまったけど、そのクマを倒した狼を倒したので依頼は成功と言ってもいいんじゃないかな。

 

 ちなみにそのクマなんだけどあの狼が咥えてこちらへ向かって走ってきた時に地面には落としていた。

 身体中から血を出して所々目も当てられないようにぐちゃぐちゃになっている。

 

 ターゲットを私たちに変えたことでそのクマが必要ないと考えてクマを放したんだろう。

 何はともあれ、このクマの死骸の一部を持っていけば依頼達成にしてくれる。

 

 狼に抉られて採取できる部分がほとんどないけど……。


「はぁ……はぁ……時間は掛からなかったけど凄く疲れたかも!」

「私とショナの力を合わせてようやく受け止められる程の力だった……まあ最後はルークが決めちゃったけど」


 この戦いを制したのは間違えなく私一人の力だけじゃない。

 炎が使えない状況だったからうまく狼を浮かせる方法を考えた。

 

 その時にあの大蛇との戦いを思い出し再現するには絶対仲間の力が必須だから。みんなの基本的な性能が上がったおかげで上手くいっただけ。


「私だけの力じゃないよ。それよりクマの牙か腕を持って帰ろ」

「そうね」


 フーリアがクマの腕を切る。勢いよく跳ねられた腕は宙を舞いフーリアの下へ落ちてくる。

 

 はずだった――。

 

 宙を舞った腕は1番高いところまで跳ね上がった瞬間――シュッ風を切るような音と共に姿を消した。


「何が起きたの!?」

「さ、さぁ?」


 私とユウリはお互いに顔を見合わせる。

 

 私たち2人には何も見えなかったんだけど、フーリアとショナは何かが見えたみたい。狼を倒した洞窟の方を2人一緒に睨んでいた。


「誰!?出てきなさい!!」


 大声で怒鳴るフーリアに対して洞窟にいると思われる何かは反応しない。

 

 フーリアとショナの見間違え?

 

 いやでもこの2人が同時に何かに気づいた以上は間違えの可能性は少ない。洞窟の方へ神経を張り巡らせる。


 いつ何が洞窟から出てきても対応できるように……。


「んぐぅ!?ちょ……何すんのよ!!」


 しかし前に気を取られていて、後ろが疎かになっていた。

 後ろからユウリの苦しそうな声が聞こえる。

 

 洞窟にずっと神経を注いでいて反応が遅れる!!

 

 ここへ来る時に周りへの警戒をするようあれほど気にかけていたのに……。

 そして最悪なのがそこに居たのはギルド星の欠片で私たちと闘技場で戦った4人だった。

 

 星の欠片の4人はユウリを捕まえて人質にしている!!


「なっ!何して……!!」

「動くなよ。このデブがどうなってもいいのか?」

「くっ……!目的は何?」


 こういうことをするからには何か狙いがあるはず、まずはそれを聞き出す。

 簡単な目的なら多少はくれてもいい。飲めない内容ならユウリを無理やりにでも助けてこの場から逃げる!!

 

 私の炎ならそれが可能……最悪山を燃やしてでも……!!


「おいおい、こっちばかり気にしてていいのかよ?」

「何を……」


 ダクトは私の後ろを指差す。

 

 私に隙を作らせるために気を引くつもり?いや、なんだかそんな空気でもなさそう……。私は恐る恐る後ろを振り返る。


 そこにはフーリアが落としたクマの腕を持つ、真っ白な男が居た。

 細身で色白、顔はどこかで見たことのあるフードを被って隠している。


「まさか魔王教団……!?」


 ルエリア以外にも教団の仲間が居たんだ……。というかその教団とダクトがどうして手を組んで……。


「まさかあなた達も魔王教団だったの?!」

「あ?俺達をそいつらと同じにすんなよ。今は利害一致で協力しているだけだ」

「利害……?」

「ああ!あの男の狙いはお前だよルーク!」

「わ、私……!?」

「そして俺達の狙いはお前らの受けた依頼の強奪。頑張ったじゃねーか、魔王教団が用意した魔物を倒すなんてよぉ!!」


 あの魔物は魔王教団のものだったのね。

 山には至る所に人が出入りしている痕跡があったけど、まさかそれが魔王教団だとは想像すらできなかった。

 

 そう言えばこいつらは岩の魔物を使って襲ってきたことがあった。それなら他の魔物を使役することもできておかしくない……。


「おいダクト、我らの事をペラペラ話すな」

「いいじゃねーかよ。敗者を惨めな気分にさせるのが一番楽しんだからよぉ!!」

「……」


 魔物が魔王教団のものというのは私達に教えるつもりは無かったみたいね。

 だけどダクトは何も聞いていないのに話してくれた。

 馬鹿というか……よくこれでエキナに告白出来たね。こんな奴をエキナが良しとするわけがない。それは長い特訓でエキナと関わることが多くなって自然と理解する。


 依然として状況は芳しくない。私が動けば後ろに居る魔王教団の男が動き出す。

 こいつらは私達と闘技場で勝負したけど、あれはもしかして力を測っていた?という事はダクト達と魔王教団の男を含めた5人で勝てると踏んでいる?


 この4人は降参したとはいえ、そこまで強くないはず……やっぱり怖いのは魔王教団の男か……。

 

 ユウリを人質に取られて身動きの取れない状況……。

 ここからどう抜け出そうか頭を巡らせていると洞窟の方が突然騒がしくなる。


「ぐうわあああああぁぁぁぁ!?」


 その叫び声を聞いてまた振り返ってみるとそこには剣を構えた女騎士が魔王教団の男を洞窟の外へ吹き飛ばしていた。

 女騎士は剣を構えて凛々しく立ち居振る舞う。


「私は好きだぞ、ルーク。お前のさっきの技名カオスなんちゃら剣!!」


 それは他でもない私達に長い特訓をしてくれたエキナだった。


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