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第73話 罠

 

 久しぶりにパーティへ帰ってきたユウリと共に魔体症克服の成果を見るためにクマ退治の依頼へ向かう。

 

 この国の依頼は動物を退治する者が多い、少ない魔物が現れた時は魔物退治という依頼があるんだけど、それも結構珍しい部類。

 ただのクマならこの4人で十分だろうけど、前世の世界では相当危険な動物だ。

 

 この世界の人達全員が魔導士か剣士であるということはなく、前の世界のようにそう言った戦うための力を持たない人も居る。

 だから人里に下りてくるクマは魔物と同じ位には危険だったりする。


「だけどただのクマでしょ?余裕で終わりそうね」

「そうもいかないと思う。私の炎の魔法は山の中じゃ使えないし」

「ふん、ルークが居なくても大丈夫よ」

「それはそれで悲しい……」


 この依頼だとほとんど私じゃ活躍は出来なさそう。

 でも目的はユウリがどれだけ戦えるようになったのか見る事だから私はあんまり関係ない。私は山を燃やしてしまわない事だけを考えておこう。

 いつも私達が依頼で通る整備された道の先へ進むと大きな山が見える。


 その山の頂上にクマが居るという。

 季節は既に冬へ突入していて、雪こそ降っていないので山登りで滑る危険は少ない。クマはおそらく冬眠のために山の中に居る。

 

 冬眠中のクマを襲うというのは少し気が引けるんだけど……まあ依頼だし。


 山の中は自然豊かで冬だけど結構暖かい。所々木が生えていない場所があってそこから太陽の光が漏れ出している。

 暖かくてありがたいんだけど、意図的に木が切られている。暖かい日が当たる所の中央には刃物で切られた跡の切り株が残ってるから間違えない。

 

 この季節なら冬支度のため、焚き火用に木を凝るのはおかしなことじゃない。

 ただ少し変だと感じたのはその切り株が疎らにあること。

 木を凝るのなら山へ入る前にいくらでもある。わざわざ所々まばらに木を切る必要は無いと思うんだけど……。


「とりあえず皆、警戒しよ」

「まあルークがそう言うのなら仕方ない……か」


 こういう時、フーリアは案外素直に言う事を聞いてくれるようになった。

 これもエキナのとっくんのおかげかな。

 周りへの警戒を怠らず慎重に進んでいく。普段から害獣狩りの依頼を受けているせいでここら一帯にはほとんど動物が居ない。

 そのせいでクマが人里へ省力を求めて下りてくる可能性は高いが……。


 しかしそれにしては少ないというか……狩って良い害獣は人里に下りてくるモノのみでそんな数多く狩ることは国から許されていない。

 だから街から少し離れたこの山を半分以上、登ったくらいなら大量に居てもおかしくない。


「なんか生物の気配が少ない?」

「人が来てるなら狩ってるのかな?」

「いやいや国から許可されていない分は狩っちゃダメだよ?」

「……どうやらルークの言う通り他への警戒は怠らないようにしないと」

「ほんとフーリアはルークの言う事は聞くよね」

「これはパーティとして決めた事だからよ。エキナにここ数週間ずっと言われ続けたんだから……」


 どうやらそれがきっかけで私の言う事を聞くようになってくれたみたい。ということはパーティとして依頼を受ける時以外は無視されるのかな?

 

 ま、まあ少しはマシになったのかな。


 そんな話をしながらも警戒を怠らず2時間ほど登ってクマが居ると言われる山の頂上へたどり着いた。警戒しなかったらも少し早く着いてたんだけど、これは仕方ない。

 山の頂上には小さな洞窟が見える、依頼書によるとそこにクマが居る。


「それじゃあとりあえず、フーリアとショナで洞窟の中へ先行して!ユウリは魔法の準備、クマが出てきたら動きを封じて欲しい」

「分かった」

「おっけー!」

「了解っ!」


 3人に指示をしつつ、私は洞窟じゃない方の警戒をする。

 受付の人が言っていた。この依頼はなにか怪しいと……。経験豊富な人の忠告は素直に聞いておいて損はない。

 これは前世と今世の合計で40年生きている経験の勘だった。


 フーリアとショナが洞窟へ入る。遠くから見た感じそこまで広い洞窟じゃないはずなのですぐに出てくるだろう。

 もし冬眠で文字通り眠っていたら、そのまま剣を突き差して終わらせればいい……ユウリの魔法を見たいけれど、受付の人に怪しい依頼だと言われているので最悪次の機会にすればいいからね。


 2人が洞窟の中へ入っていて10秒くらい経ったその時――。


「ちょちょちょちょっと待ってよぉ!」

「無理ッ!ショナ早くしないと食べられるって!」

「ヒーッ!!」


 愉快な声が洞窟の中から聞こえてくる。

 

 だけど話の内容からそんな穏やかなモノじゃないんだろうなぁ。


「ユウリ」

「分かってる。木が多いから、根っこを魔法で引っ張り出して触手みたいに使って出てきた獣を拘束するね」

「凄く魔力を使いそうだけど、いやむしろいいのか。分かって見せて」


 周りの木の根を使うなら私の炎の魔法は使えない……下手したら火が移っちゃうからね。

 もう少し他にいい方法があるんだろうけど、すぐにその獣が出てくるので今はユウリの判断でやるしかない。

 フーリアとショナが出てくると2人は涙目になっていた。剣を利き手で持ちながら大振りに猛ダッシュしている。


 そして2人の後ろから迫って来ていたのは……クマ……?嫌でもなんかおかしい。

 

 身体が宙に浮いていて、身体から血がダラァっと流れてて結構グロいことになってる。


 死骸が浮きながら追いかけてきている……?

 のではなく、漆黒のように黒くて赤い瞳を持ち、大きな爪と牙を持った巨大な狼の魔物が太陽に照らされてその姿を現す。

 

 サイズはエレメイさん家の蛇に匹敵する。

 そしてその狼の口元には……私達が倒すべきクマがぐったりとしていた。

 

 この街の近くにはほとんど魔物が居ないって聞いたんだけど……。

 

「何アレ!?」

「気持ち悪いっ!!」


 どうしてこんな所に魔物が多いルエリアよりも狂暴なのが居るのっ!?

 

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