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第68話 魔体症の克服


 ちょうどお昼時なので、カフェにもなっているギルドで昼食を摂りながらアザミから話を聞くことになった。

 このギルドにはもう1ヶ月以上お世話になっていて、このカフェにも何回も来ている。料理は凄く美味しいからね!後安い!!。これが凄く重要だ。


 そしてさらにギルドメンバーには提供される料理の値段が割り引かれる!

 私は前世から同じ店に行くときは同じものを頼むのでいつもと同じ蕎麦を頼んだ。

 なんとこのカフェは異国の料理も取り扱っていて懐かしの蕎麦が食べられる。私はそれに感動してしまい、ずっとこれを食べている。かき揚げの乗った熱々の蕎麦!!


「それ、いつも頼むよね……美味しいの?」

「最初は舌に合わなかったけど頑張って慣れたい!!って食べてたら好きになったよ?」

「そこまでしてそれを食べる必要あるの?正直言っちゃうとカフェには合わないよね」

「そう?可愛い雰囲気のカフェに蕎麦はなかなか合うと思うけど……」

「あ、ルークはセンスがアレだからやっぱり感性はどこかで狂ってるんだったわね」

「フーリア?」

 

 まあもう私のセンスをとやかく言うのは仕方ないけど、蕎麦を悪く言うのは違う!

 

 確かに蕎麦は少し渋い感じで可愛いカフェにはちょっとだけ合わないかもしれないけど……。でもよく見てみるとなかなか愛くるしい見た目をしているから!

 

 私達が食事をしている中でアザミは何も頼まずにぼーっとしていた。

 

「アザミさんは何か頼まないんですか?」

「ああ、というか俺の体質を知りたいならその疑問に応えた方が早そうだな……昼食中だけど、話をしていいか?」

「食べながらでいいのなら!」

「それでいい」


 こちらは聞く側なので少し後ろめたい気持ちになるけど、まあ本人が良いのならいいありがたい。ユウリは聞かれる前にバクバク食べてるけどね。

 食事をしながらアザミの体質についての話を聞く。


「俺の体質は|魔力を食べる魔体症で食事をしなくていいという症状でな」

「あれ?魔体症って身体の脂肪とか寿命とかを魔力に変えるんじゃないの?」

「魔体症は大きく分けると二種類あり、その二種類の中にもさらに様々な種類がある。大まかな二種類の中で俺のは魔力を身体に必要な物へ置き換える魔体症、そしてもう一種類が――」

「身体を魔力に変換する魔体症?」

「そうだ。ここまで話していれば大体分かるがユウリ……さんの体質は後者か?」

「そうですね。ユウリでいいです私の方が年下っぽいし」

「なるほど……ちなみに一応確認、ユウリ……さんは脂肪や寿命を魔力に変えられるのか?」

「はい!後ユウリでいいですよ」

「ふむ、それは結構当たりの部類だな」


 さっき魔体症には二種類あってその中にもまたさまざまな効果があると言っていた。

 もしかしたら身体の何かを魔力へ変換する体質って言うのは人それぞれ違うのかもね。

 

 例えば身体の一部を魔力へ変換するとか……それがたまたまユウリは脂肪と言う比較的人体には重要じゃない部分だったということ。


 これがもし足の肉だったり、腕だったりしたらその魔体症の人が魔法を使える一生の回数は相当少なくなる。

 その点、脂肪なら食べれば食べるだけ蓄えられる。

 そう考えるとなかなか辛い体質だけど、ユウリのならまだマシと言える。


「まあでも代償が大きければ大きいほど、使える魔力が膨大だったりする」

「私は脂肪だから比較的弱い部類なの?」

「身体で生成できるものなら、消費する魔力量が少なくなる。重要なモノではあるけど血を使った魔体症の人も居る」

「でも私のでも結構強力な魔法を大量の魔力で使えるよ?」

「魔体症の中では比較的、弱いってこと。魔導士全体で見たら大魔導士くらいの魔力はあるんだろう」

「……それじゃあもし、大きなものを代償にしたら……」

「大魔導士を遥かに超えるくらいの魔力は使えるんじゃないかな?」


 ユウリが代償にできるのは脂肪と寿命……。

 脂肪はともかくとして寿命を使う場合はもしかしたら相当な魔力を扱えるのかもね。

 

 魔体症は私の思っていた以上に深刻な体質なのかもしれない……。


「じゃあアザミさんは魔力を逆に食事に変えられるんですよね?それってもう魔導士にはなれないんじゃ……」

「魔力を持っていると魔剣や聖剣は扱えないが、俺は自分の魔力を生きるためのエネルギーに使ってるから魔力無しの状態ってこと。つまり俺は剣士だ」

「剣は?」

「ナイフ形の小さい魔剣を使ってる」

「へぇ……まるで魔導騎士(エーテルナイト)みたい?」

「それに例えるのはやめてくれ、あの人達とは違うだろ。俺は魔法が使えない、魔力は全部身体のエネルギーになるからな」

「まさかご飯を食べないのは?」

「少しでも食べると太る。魔力が必要源の人が生きるのに必要なエネルギーに変えてくれるから……それ以上は食べ過ぎになる」


 アザミはユウリとは全く逆の症状ということなのね。

 

 そうなると魔体症でも魔導士であるユウリと剣士のアザミとでは明確な違いがあるからアドバイスは難しそう……?


「アザミさんが剣士なら私の体質はどうにもならないですかね?」

「案外そうでもないかもしれん。魔体症であることに変わりないからな」

「じゃあこれを扱うコツがあるの?」

「俺の場合、剣士であるために魔力が回復したらすぐに身体のエネルギーに変えている」

「私の場合は知らない内に脂肪を魔力に変えて、勝手に消費しちゃうんですが……」

「そこなんだよな……だけど魔法を使おうと思えば使えるんだろ?」

「そうですね。まあすぐに身体がやせ細ってしまいますが……」

「ふむ、勝手に魔力が消費されるって言うのはちょっと変だな……もしかしたらそこを治せるかもしれない」

「本当ですか!?」

「ただ少し大変かもしれないが……それでもいいか?」

「はい!この体質を治して皆の足を引っ張らなくて済むのなら……!!」


 あれ、ユウリってそんなことを考えていたの?

 

 他の事には興味無さそうであまり気にしているようには見えなかったんだけど……。隠してたのかな。

 だとしたら私はそんな仲間の気持ちに気づけなかった事になる。なんだか悔しい。

 

 こうなったらとことんユウリの魔体症を治す手伝いをしなきゃ!!


「じゃあ俺とユウリ……さんは一緒に来て欲しい所がある」

「あれ?ユウリだけでいいの?」

「そうっすね、身体の体質を使いこなすための特訓をするから……多分君達は退屈かもよ?」

「ユウリ1人にはさせられないわっ!」


 ショナとユウリはずっと一緒に居るんだから離れたくないんだろう。だけどそれを察知されないように平静を装っている。多分1人が居ないと寂しいって思われるのが恥ずかしいんだろうね。

 現にこの2人はお互いに少し離れただけでもすごく寂しそうにしていた。それこそ戦いの最中に全力が出せない程。

 

 離れたくないというそんなショナの気持ちをエキナが遮る。


「じゃあ、お前達は実戦の特訓だな」

「え……ユウリと一緒に居たい……」

「甘えるなッ!!昼食が終わったら即、闘技場へ向かうぞ!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!?」

 

 容赦のないその一言はショナを絶望させるのには十分だった。


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