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第66話 エキナの特訓

 

 エレメイさんという依頼人のペットである蛇を無事に届ける事は出来た。

 

 だけどそれはほとんどエキナ1人の成果。

 

 うまくスイレンの皆で連携して蛇を捕まえるはずだったのにほんの少し戦闘を見て居たエキナ。私達が力不足だと見抜き割って入り、一瞬で終わらせた。

 依頼主のペットだからこっちからは倒すという選択肢は早々に除外されていたとはいえ、たった一撃で超硬い鱗を持つ大蛇を沈めるエキナはシンプルにイカレているとは思う。

 

 これが花園のリリィで最強の女剣士と言われている人か。

 そんなエキナは昨日の蛇との戦った私達の下へやってきた。


「お前達は……基礎が足らん!!」


 朝食中に私達を待って居たのか、ご飯を食べるのと同時に話しかけてくる。

 

「エキナさん……その今、朝食中なんですが」

「ショナ、お前は判断力が鈍い、仲間ならどんな行動を取るかある程度想定できたはずだ。最後に決めに行くところでフーリアの行動を読めなかったのはリーダーとしてダメだ」

「……それは、そうなんですが……朝食中です」


 何故かまだアドバイスは続いているみたいだけど私達は朝食中、昨日やらかしてしまったものの、また訓練をしてくれるという事なのでそのためにエネルギーを蓄えたい。

 そんな私達の考えを知らずエキナは話を続ける。


「そしてそのフーリアだがお前のチームワークに対する認識は最低だ。たまに私を依頼に誘ってくる他のパーティがあるが、うまくいかなかったらそれを引きずってチームにも精神的に悪い影響を与える」

「……チームなんて組まなくても……」

「チームでの戦いの方が絶対に楽なはずだ。それでクリアできていない時点でソロは無理だ」

「……」

 

 エキナの説明は少しまどろっこしい。

 

 例えるとチーム戦のゲームで野良の人とマッチしたんだけど、その人のやり方に合わないから味方批判するみたいな感じかな?

 さすがにそれは言い過ぎな気がするけど、まあ間違ってはいないかな。フーリアは身勝手に動き過ぎている。

 

「次にユウリだが……持久力が無いのは問題だな。体力が少ない程度ならいいんだが、すぐに魔力が切れるのは今後に支障が起こりえる」

「すみません……なので一杯食べます」

「………………お前、ユウリであってるな?」

「はい!(モグモグッ)」


 痩せたユウリを見た後だとこのお腹の膨れた姿を見ると違和感しかない。

 それは凄くわかるし、きっと魔体症じゃなければスラッとした美しい容姿のまま魔導士として活躍できたかもしれない。


「そしてルーク!お前も判断力が低いが、ショナよりは高い」

「え……あ、ありがとうございます」

「だがちゃんと予測して次の一手を準備するくらいはしろ。声出しはショナだが、作戦立案はお前がやれ」

「わ、私ですか……」

「ああ!ということでそれらを踏まえて今から闘技場へ向かう」

「い、今からですか!?」

「次は私が相手になる。安心しろ手加減はする」


 一応エキナは朝食を摂らせてくれた。どうやら説明に夢中で私達が朝食を摂っている事に本気で気づいていなかったらしい。

 こんなに抜けてる人なのに超強いなんてこの世界も大概理不尽だよね。

 

 朝食後すぐに私達を連れて闘技場へ急ぐエキナ。

 

「行くぞっ!妖精剣アロマフェアリー!!!」


 エキナは腰の鞘に差していた剣を抜く。

 そういえばエキナが剣を抜いたのは見たこと無かったっけ……。妖精剣……その名に恥じない神秘的で可愛らしい剣だ。

 刃は神秘的な緑色で内側へ行くとピンク色の可愛らしいデザイン。塚は妖精の羽を模している。

 

 そして細剣……エキナの速度を活かした戦い方をするなら軽い武器の方が良い。

 その速度を圧倒的に凌駕しているのがエキナのパワーなんだけど、大蛇を一撃で鎮めるほどの力にこんな細剣が耐えられるのかな。

 

「さてお前達も構えろ。何あの蛇の時とは違い多少傷つけてもいい。全力で来い」

「わ、分かりました……雷神剣!!」

 

「……そういえばこの剣の名前って何?」


 フーリアは突然私にそんなことを聞いてくる。

 そういえば師匠から奪って結局フーリアに渡しちゃったけど、まだあの剣の概要を何も伝えていなかった。

 というか私は炎帝剣を持っているから知ってるんだけどそう言うのは剣が教えてくれる。


 ルミナの未知の力で無理やり契約したから教えてくれないのかな?

 

 確か師匠(せんせい)はこう言っていた。

 

「それは風魔剣アスタロト」

「アスタロト……やっぱり風の剣だったのね」


 師匠(せんせい)はこの剣を私に握らせたがっていた。

 だけどそれは叶わなかったわけだけど……私が持っていたら炎帝剣と風魔剣で炎と風を操れるようになる。

 炎と風は相性が良い。

 

 うまく組み合わせる事で爆裂魔法のような爆発を起こせる。


「そこの2人は魔導士だったな。お前達も全力で来い」

「でも……私は魔体症なので……」

「お前の魔体症の対処法は分かっている。飯を沢山食えばいいんだろう?これが終わったらもう駄目~と言わせてやるくらいには食わせてやる」

「本気で行こう皆!!」

「あのユウリが一番本気になるなんて……」


 いつも身体を動かしたがらないユウリもこれには強く反応する。

 皆がやる気になってくれたのは良い事だけど気分と実力はあまり関係ない。


 結局いつも通りフーリアが飛び出し、足並みが合わない状態でショナも一緒に突っ込んでいく。人数差を活かすためにも同時に攻撃を仕掛けるべきなのに交互に攻撃を加える。

 エキナは2人の剣を順番に優雅に避け、時に剣で打ち合い弾く。無駄のない動きと速度、そして細い刀身とは思えない圧倒的パワー。

 

 そのどれもをとっても完璧だった。2人だけじゃ無理、それなら!!

 

 私が炎の魔法でアシストする……しかしその前に早く行動したのがユウリだった。

 ユウリはエキナの周りの地面を揺らす。剣士は足場で踏ん張れないとその力を全く発揮で無くなる。

 対剣士の戦い方としては合っているんだけどそれは味方の剣士にも影響する。

 突然のユウリの魔法に身体を揺らしたのはフーリアとショナもだった。

 

「ちょっと!!」

「ユウリ!いつもより激しいんだけど……!」

「あ、ごめん……気合入ってた」


 てへっと可愛らしい仕草をするユウリ。気合を入れたせいかもう体は細くなっていた。脂肪のほとんどをもう魔力へ変えてしまう。

 これじゃあ長くは持たない。

 ユウリが魔法を解くがバランスを崩したフーリアとショナはすぐには復帰できない。

 

 一方でエキナは上手くバランスを取ることで数秒の猶予を得る。


「アロマ……」


 エキナは妖精剣を両手で握り、自分の頭の上に持ってくる。

 でかい攻撃が来る!!私はどうすればいい……?


 エキナからは皆に作戦を伝える係をしろと言われたっけ……。

 じゃあ……!!


「ユウリ!植物の魔法で――」

「もう遅い!!」


 エキナは頭上の剣を振り下ろした……。

 

 その瞬間、私の視界は真っ白に染まった。

 

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