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第65話 チームでの戦い

 

 大木の上に大蛇の頭が出てくきた。

 その大蛇の頭は私たちを睨んでいるようにもただ動くものに反応しているようにも見える。

 しかし頭だけにしては大きすぎる……胴体も木の中に隠れているのかな?だとしても大木を覆う程だろうし……。


「頭であの大きさって……家に入るの?」

「……ふむ、エレメイさん家は大きいからな。それに頭が大きいだけで全体は犬くらいのサイズかもしれない」


 頭だけで大木の3分の1くらいあるのに胴体が犬サイズの蛇なんて要るわけがない。

 

 もしかしてエキナってちょっとおバカ……?

 

 超強いのに以外な一面を見てしまった。より親近感が湧くけど今はそれどころじゃない。

 あんなのが街中に入ったりしたら大変だ!!いやまあペットだから街中には入るんだけど……せめて動きを止めてから入れないとね。


 一足先にフーリアが蛇の頭へ突っ込んでいく。

 風を纏った剣を器用に使い、大木の葉だけを吹き飛ばす。恐ろしい程にフーリアの魔剣の使い方が上手くなっている。

 それよりも葉という隠れ蓑がなくなり、大蛇の全体が見えてくる。

 

 大きさは一般のペットの犬ほど……そんな訳がなかった。


「大木より大きいじゃない……よく木の中に収まっていたわね!」

「それどころじゃないでしょ……どう捕まえるのアレ」

「ん~ユウリのお腹の中に一時的に入らない?」

「半分くらいしか無理そう……でもまずそうだから食べたくない」

「冗談なんだけど……というか半分は行けるんだ。……完全に腐ってる物は食べてたのに……」


 半分の大きさでも大木の2分の1はある。それを食べられるというんだからユウリの胃袋の広さには驚かされる。

 まあそんな方法を取れたとしても実行はしないだろう。だって、逃げたペットを捕まえてきて欲しいと依頼を出したのにその見つけたペットを口から吐いて目の前で取り出されたら……多分正気では要られない。


 しかし、あれをほぼ傷無しで捕まえるのは不可能。

 せめて跡が残らない程度なら……。い、行けるか……?だって私達4人合わせてもあの蛇のサイズに勝てない。

 まさに捕食者と非捕食者の対図。


「まあやるしかないじゃない!!フーリア!蛇の注意を引くよ!!」

「んっ」


 ショナとフーリアは蛇がまとわりついている大木へ向かって行く。蛇は尻尾を大木から外に出して、それを向かってくる2人に叩きつけた。

 ショナとフーリアは2人同時にその尻尾を剣で抑える。もちろん傷を付けてはいけないので剣を鱗の最も硬い部分に合わせている。

 

 純粋に2人の技術は神業の域に達している。だけどそれでも力の差を埋めるのは難しい。

 

 何せ相手は私達よりはるかに大きく、二階建ての家よりも大きな大蛇なんだから……。尻尾で二人を潰そうとしてそれが上手くいかなければ次に何か仕掛けてくるはず。

 尻尾を叩きつけたまま頭を動かして側面から2人に嚙みつこうとしている。あんな牙に噛まれたらひとたまりもない!!

 そこへ勇敢に飛び出して言ったのはユウリだった。彼女は両腕を大きく開いてその巨体を利用して蛇の頭を受け止める。

 

 すんごいパワー……。

 

 それにはさすがのエキナも驚いていた。


「ルーク!ここから頼むわ!!」

「え、ええ……。炎帝刀……じゃなかった!!炎帝の(ほのお)!!」


 適当な炎の魔法を蛇に向けて放った。

 

 傷を付けずにと言う事なので、バレンタインの不死鳥の炎の魔法は使わない。

 ポンッポンッと蛇の顔に炎がぶつかる。しかしあまり効果はない。威力が足りないか……。加減さえしなければ焼き蛇にしてあげたのに!!


「ルーク……そろそろ限界……!!」

「ユウリ!!お腹が……!!!!」


 ユウリはいつも通り魔法を使った反動で痩せている。

 多分突進してきた蛇の頭を押さえ付けたのも魔法によるものだろう。あれだけ大きな頭を押さえ付けるには相当なエネルギーが必要なはず……。

 私はどうするべきか悩む。


 炎の魔法をいつも通り使えばこの蛇を死なせてしまうかもしれない。

 このままじゃフーリア達が危ない、だけど火加減が分からない以上無暗に炎を使えない。

 せめて炎帝刀を使えば、刀を翻して刃を向けずに蛇を弾くことができる。でもそれはエキナが居るから許されない。

 

 外国でも魔法と剣の両方を使える人は珍しい、特にここ花園の冒険者ギルドでは魔導騎士(エーテルナイト)を良く思っていないみたいだった。

 私は魔導騎士(エーテルナイト)ではないはずだけど、疑われるかもしれない。

 

 そんな風に悩んでいるとは知らないであろうエキナはユウリを見てなおも驚いていた。


「痩せたッ!?おい、お前!!それどうやった!?」

「うぅ~体質ですぅ~!!」

「羨ましい……」


 エキナはこんな状況でも呑気だった。

 身体の脂肪、寿命を魔力に変換できる魔体症は魔法を使い続ければいずれ死に至る。

 だからなるべく命を落とす危険が無い脂肪を魔力へ変換するのが魔体症の一般的な魔法の使い方。

 だけどそれにしてもユウリは魔力を使い過ぎに感じる……。


「ルゥゥゥゥウウク!!」


 もうユウリは限界か……!!炎じゃ火力を抑えるのが難しい、剣も握れない……それなら!!私は身体強化を自分の足に使った。

 これでも沢山魔法を覚える時間があったので身体強化もそれなりに使える。さらに付与魔法でバレンタインの不死鳥の炎を足に追加する。

 

 私は剣士として経験も積んでいるので元々の身体能力も高い。

 

 蛇を傷つけずユウリから離す必要がある。

 私は蛇の顎を蹴って空へ打ち上げる。


 すると蛇が力を入れられなくなったのか尻尾の叩きつけが弱まった。

 そこを逃さずフーリアとショナは脱出。


「よしっ!このまま畳みかけるよ!!フーリ……」


 ショナがフーリアの名前を呼ぶより早く、彼女は行動していた。

 剣を構えて宙に舞った蛇へ向けて風の斬撃を放つ。

 しかし傷つける事が許されないので手を抜いてたのかパワーが足りない。風に揺られるがそれだけ。

 

 地面に身体を着くとその勢いのままフーリアへ飛び掛かる。まずいフーリアが!!

 

 これはもう駄目だ!!エレメイさんには悪いけど、このペットは殺す!!

 

 私は無我夢中でフーリアを助けるために全力で魔法を放つ――。その瞬間だった。

 

 蛇の胴体が、くの字に曲がった。


「これがお前達のチームワークか……残念だが絶望的だな」


 蛇の身体に打撃を与えてそのまま沈めたエキナ。傷をつけることなく、大蛇を一瞬で無力化した。


「凄い……」


 そんな感心する私達をエキナは厳しい目で睨んでいる。

 

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