第63話 エキナの選定
ギルド間の洗礼を浴びた私達は売られた喧嘩に一応勝利することができた。
だけどどうしても納得ができない……。完全にアレは舐められていただろう。
というか多分アレは私達の力を測るためにわざわざ喧嘩を売って来たのか。人数も4人に合わせてチーム戦ができるようにして私達スイレンと試合をした。
どうしてこんなことをするのか分からないけど、その情報を良い事には使わないだろうね。
そんなことを考えてしまうけど、もう済んでしまった事なので仕方ない。既に闘技場の試合を終えて、私達はショナの家に帰った。
試合の事はモヤモヤが残るがそれでもショナはいつも通りだ。
「まあいいわ!明日からも普段通り依頼を受けて稼いで成果を上げればいいんだから!!」
「まあねぇ~でもアレだね。私達はチームワークが終わってると思わない?」
「私達は個人で実力を持ってるんだからそんなの要らないでしょ」
「要るよぉ~!今後チームとして成果を上げるためなら……ね。ルーク……?」
ショナは突然私に助け船を求めてくる。
今日は疲れたし、もう夜も遅いので寝たいんだけど……まあだからこそ早く自分の思っている事を言ってこの話を終わらせる。
「そうね。チームワークは大事だと思う」
「……ちっ」
「フーリアさん?」
何故か舌打ちをされてしまった。
そんなに私とチームを組むのは嫌なのかな……?突然ぐっすり眠れる気がしなくなった。
身体は疲れているのに精神的なダメージがでかすぎる。
しかし以外にもフーリアはその提案を完全に否定はしてこない。
「まあいいけど、でもそれが何なの?」
「明日受ける依頼なんだけど、そのチームワークを鍛える奴やろう!!」
「依頼?まあそれならいいけど」
フーリアは実績を積むことにこだわっている。
それがそのままホワイト家を取り戻すカギになるから。実力が認められればホワイト家の宝剣も取り戻せるし正式に主として君臨できる。
だから受けられる依頼ならきっとなんでもいいんだろう。
だんだんフーリアの操り方が分かって来た……。
ショナは当然、フーリアだけじゃなくて私やユウリにも確認を取ってくる。
「どうかな二人とも?」
「いいよ」
「はーい~じゃあおやすみ~」
「ユウリは了承してくれたってことでいいんだね!!」
「ぐーぐぅ~」
「寝てるし……」
「あ、これお腹の音ね」
「起きてるの!?……まあいいわじゃあ明日からはそれで!お休み!!!!」
頑張ってリーダーとしてまとめ上げようとしてるショナを見て、他人事ながら大変だな……と考えてしまった。
――
翌日、私達は目を覚ましてすぐにギルドへ向かう。
ギルドでは朝食を食べる事ができるのでそこで胃に物を入れてからギルドの受付へ、昨日の話し合いでチームワークを鍛えられそうな依頼を見繕ってもらう算段だ。
受付の人はそんな私達の要望に応えてくれようと良い依頼を探してくれている。するとどこからともなくエキナが綺麗な紫の長い髪を靡かせて現れた。
「お前達どうした?」
「エキナさん……今日も居るんですね」
「人を暇人みたいに言うな、これでも忙し……かった。しかし、昨日はお前達に全てを押し付けてしまったからな。そのお詫びだ」
「えぇ~じゃあお金ください!!」
「いいぞ、好きな額を言うと良い」
「……冗談ですよ」
「ほぅ……最近の若い子はそんな冗談を言うのか」
ここでお金を要求されて好きな額を言えって言う人居るんだ……。
このギルド最強の女剣士である彼女にとってもはやお金は簡単に稼げるものなのか……?
「エキナ様なら全財産渡しても一日で2年は生きられるくらい稼げますからね」
「ふむ、だがお金のためだけに私はここにいるわけではない。このギルドの仲間達は私にとっても大切な友達だったり、尊敬する人だったり……そんな人達と一緒に居るために私はここに居る」
「あらあら相変わらず強さに似合わず寂しがりですね」
「む、仲間が居なければ誰だって寂しいだろう?」
「そうですね。ふふふ」
エキナと言う冒険者はとても素直な人のようだ。おそらく裏表がない。もしかしたら結構人に騙されたりしているのかもしれない。
だけどその強さとカリスマ性溢れるオーラでどんな問題も解決して来たのかな?
それか普段から凄い圧を感じるからそれが近寄りがたいオーラを放ってるから人が寄ってこないのかな。
それくらい彼女は魅力的であり、存在感がある。
「この子達はチームワークを鍛える依頼を受けたいそうです」
「チーム……いいな。私も組みたかった……」
「エキナ様は強すぎて一人で解決してしまいますからね……」
「……」
受付の人はそう言うと小声でエキナには聞こえない声で小さく呟く。
「聞く人を間違えちゃったかもね……」
チーム戦などしたことがないのなら確かに間違えたかもしれない。
しかしそこはベテランの冒険者と言う事もありいいアドバイスを貰えることを期待したい。
「獰猛な猛獣の捕獲などはいいかもな。討伐は1人でもできるが、捕獲は1人ではきつい」
「なるほど捕獲……確かに彼女たちの今の実力ならそれくらいはできるかと」
「ふむ、どうだお前達」
逃げた犬を捕まえた事はあるけど、猛獣の捕獲はやったことがない。ペットの犬の捕獲から猛獣という一瞬でレベルが上がってしまうけど……確かにいい案かもしれない。
私達にもできそうな依頼で少し厳しいモノを何個か選んでくれた。
さらにその中から私達4人で選んでその依頼を受ける。
私達にもできそうで少しずつならして行くべきだと私は皆に提案する。
しかし、他の3人は意外にも少し厳しい依頼を選ぶ。
「少し厳しいってのはギルドの評価!本来の私達ならもっと上へ行ける!!」
「お腹のエネルギーを蓄えるには難しい依頼でお金を稼ぐ必要があるから」
「ルーク、チームワークを鍛えるんでしょ?ぬるい依頼なんて受けるべきじゃないわ!!厳しく難しい依頼……その程度の物をこなせないチームワークなら要らないわ」
「……」
ショナはギルドの自分達への評価が気に入らずに見栄を張り、ユウリは沢山食べられるように多く報酬の貰える依頼を選び、フーリアはほとんど自分の事しか考えていない。
最初からバラバラなこのチームで厳しい依頼なんてこなせるのだろうか……。
そんな一抹の不安を抱きながら私達は厳しい依頼を受けた。




