表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/380

第57話 冒険者


 冒険者ギルド花園。

 ここは星の欠片とは違って、重苦しい空気が無く、ギルドの扉を開けるのが苦じゃない。

 ギルドの扉は大きく重厚で巨人でも出入りしているのかと疑ってしまう程、だけどいざその扉を開けようとすると何も力を入れなくても開く。


 リリィは軽く扉を開ける、バンッ!!とむしろ勢いが凄い。

 軽い素材みたいだけど頑丈。扉の先には飲食ができるスペースと依頼の受付と依頼の内容が記された紙が貼られている。

 星の欠片はならず者が集まりそうな酒場のような雰囲気の場所だったけどここは上品なカフェを彷彿とさせる内装で明らかに違うのが分かる。

 

 星の欠片については最初に喧嘩を売られて悪い印象があるってもの大きいけどね。

 上品な雰囲気の内装は高評価だけど、その依頼の書かれた紙を見て星の欠片とのある違いに気づく。


「そ、その……失礼ですけど依頼の数は星の欠片程無いんですね?」


 信頼されているギルドみたいだけど依頼の数は視界の端でちょっと見えた星の欠片の依頼の張られた看板より少なかった。

 気分を悪くされるかもしれないから聞けなかったんだけど、ショナはついつい聞いてしまった。

 しかしそれに不快な顔1つせずリリィは応える。


「星の欠片の依頼?あれは安く依頼の紙を貼らせてもらえるんですよ」

「花園は依頼を張るだけでも高いんですか?」

「そんな法外なお金は取らないわ。ただ依頼が張られている間は月々料金がかかるんです」

「どれくらいなんですか?」

「50リーフですね」


 リーフは確かこの国の通貨だったような。一般的な家庭の収入800リーフ程らしいから払えない程じゃない。

 だけどご飯だったり娯楽だったりと使いたいお金が別にある時は50リーフも高く感じるかもしれない。

 街を見て回った時、リンゴ一個で5リーフ程だった。月にリンゴを10個買えるくらいの値段ということになる。


 前の世界ではそれくらいどうという事はないけど、危険な魔物が住まう世界で街から街へ食べ物を運ぶのは命がけ。

 見えない部分の苦労を考えるとむしろ割に合わないくらいだろう。

 

「一方で星の欠片は依頼達成料だけを貰うのでずっと依頼の紙が貼られている場合があります」

「つまり月々無料ということ?」

「そうなります」


 確かにそれなら向こうの依頼量が多いのは分かる。依頼を提供する側からすればその依頼を達成してくれるのならどこでも構わないからね。

 それがより安上がりになるならそっちを選ぶはず。

 しかしそう考えると今度は逆に花園の依頼が多すぎるように感じる。だって向こうは無料なわけだしね。


「信頼されているという事ですか!」

「それもあります。我がギルドは古くから国と協力しているので、ただ……」

「何かあるんですか?」

「私達のギルドと言うより向こうの星の欠片ですね……これは噂なので悪戯に広めたり、向こうのギルドを陥れる事を声を大にして言わないで欲しいんですが……」


 リリィは神妙な面持ちで応える。


「星の欠片は依頼者を脅してより多くのお金を取ったり、女性は襲われたなんて訴えているなど問題がありまして」

「それって大問題じゃ……どうしてギルドとして活動できるんですか!!」


 ショナはそれを聞いて怒鳴る。

 

 正義感の強い彼女はどうやら見過ごせない案件のようだ。


「それが国の調べが入ったものの証拠はなく、裁けないのです」

「隠蔽……?」

「可能性はあると思います。我がギルドへ度々依頼をして下さる女性が居て、その人が襲われたと証言しているので」

「その女性が嘘を付いている可能性は?」

「分かりません。ですが、依頼をするだけで月々お金がかかる我がギルドと無料でずっと依頼を出してくれる星の欠片なら向こうを選ぶと思いませんか?しかし私達の所はあまり痛手を負っていない。つまり向こうの信用が無いと言う事です」


 証拠は無くても人を見てどんな場所か判断することはできる。確かにまだ学生の私達を襲おうとした所を見たばかりなのでそうなると辻褄は合う。

 依頼が向こうより少ない理由は分かった。

 

 信用が無いと思ったけどむしろあるからこそ、有料でこの量だったみたいね。やっぱりここなら信用できる。

 

 私はショナを見て頷く。


「色々教えていただきありがとうございます。是非このギルドで依頼をこなしたいんですが良いですか?」

「大丈夫ですよ。実力は示してもらいますが」

「完全実力主義でしたっけ」


 ショナはユリカを見やる、9歳の少女ですら冒険者になれるこのギルドは年齢を気にしない。強さこそがここで依頼を受けられる条件。

 そんな条件があるからこそ安心できるとも言える。タダで依頼を張ってくれて誰でも歓迎しているギルドは楽だけどそれ故に問題も起きる。

 ここはそういう場面に対してはしっかりしていると言える。私達は依頼を受けるに値する実力を持っているか見てもらうためリリィに言われてランク1の初心者向けの依頼を受ける事になった。

 

 その依頼の内容は街のすぐ近くの馬車が通る道に度々現れる獣、狼を5匹倒すというモノ。

 監督としてリリィとユリカも同行することになり、私達はこの花園のリリィで初の依頼を受ける事になった。

 ルエリアに戻るはだいぶ先になるだろう……その間はハーベストで前より強くなるんだ!!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ