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第54話 ギルド星の欠片


 初めての海外旅行……基、ギルドの依頼の出張……?

 

 とにかく、今日からエステリアの学校が始まるまではこのハーベスト帝国で冒険者として経験を積むことになる。

 早速ショナの家にお邪魔させてもらう。

 

 失礼かもしれないけど意外にもショナの家は大きかった。4人だけで使うには広すぎるくらい。

 

 ただ一つ気がかりなことがあるとれすればそれは――。


「お邪魔しまー……ゲホゲホッ!!なにこれ」


 フーリアが扉を開けて中に入るとそこら中の埃が風に乗って舞う。

 家に入ろうとした足を私は思わず止めてしまった。


「あー1年以上、使ってないからね。結構、埃凄いね」


 入学してまだ半年なのに、1年以上も使っていない……?


 入学するまではこの家を使っていなかったということだろうか。

 それじゃあ少なくともその半年は一体どこに居たんだろう……。

 

「埃って……掃除とかしてないの?」

「そりゃこの家の主は1人しかいないし、その1人が外国の学校に通ってるんだよ?できないでしょ」

「ショナは1人なの?」

「まあね」


 フーリアは躊躇われることを躊躇くなく聞いた。

 

 気になったけどなんとなく主が1人と言う事で察していたからあまり触れない方が良いと思ったんだけど……さすがフーリア……。


「あなたも複雑な家庭環境のようね」

「フーリア程は闇が深いわけじゃないけどね」

「お互い苦労してるのね」

「そう言う事……さて!そう言うのは良いから人の家でお世話になるんだから当然手伝いくらいはしてよね!!」


 ショナとフーリアはお互いに複雑な家庭環境だからか妙に意気投合している。

 チームを組んで半年くらい経ってようやくか。

 正直私よりも先にフーリアと仲良くなるのは悔しいけど、友達は居た方がいいよね。

 

 私は悔しい気持ちを隠して家の掃除をした。

 みんなそれぞれ魔法やら剣の力を使ってうまく掃除している。

 ショナは電撃で虫や鼠を殺し、フーリアは埃を風に閉じ込めて剣を振るうと空に飛ばしてしまう。

 

 しかし私は炎の魔法を使うので正直ほとんど約に立たず、床を水拭きしていた。

 そんな中一番掃除に貢献していたのはユウリだった。ユウリは持ち前の魔法……というか体質を使って残っていた食料などを食べてくれた。

 これがまた凄い匂いを発していたんだけど大きな箱に密封されていて虫などは集っていなかった。


 賞味期限という概念がまだないが、見た感じ半年以上過ぎた上に夏場の炎天下の中放置された物を口に入れるのはもう自殺行為のはず。

 それを易々と食べて無駄にしない。


「良く食べられるね……」


 私は鼻を掴みながらユウリに問いかける。


「見た目はグロテスクだけど、味は元のままだね」


 絶対苦くて舌に乗せた瞬間ヒリヒリするんだろうけど……そこはユウリの体質のおかげか食べ物ならほとんど消化せず魔力へ返還される。


「便利なのか燃費が悪いのかよく分からないね」

「確かに!だけどこれだけは言える……食べ物は無駄にしちゃダメ!」

「説得力が凄い!!」


 何せ確実に腐ったものを食べているんだからね。しかしこれも彼女の体質故にできる事であって決して真似はしないようにしなきゃ。

 そして掃除は広い家だったけど早く終わり、ちょうどお昼を回ったくらいの時間に。


「昼食はどうする?」

「ん~私、綺麗にした直後の場所でご飯食べるの嫌いなんだよね。せっかく掃除したのにってなるし」

「じゃあ外で食べる?」

「お金ないからやめた方が良いんだけど……今日くらいは良いよね!」


 おお……久しぶりに贅沢ができる!

 

 そんなショナの提案に目を輝かせたのは私やユウリだけじゃなくフーリアもだった。ご飯なんて食べられればなんでも良いと言いそうな子だけど、ここ何ヶ月も満足に食べられていなかったからか少しテンションが高く見える。


 さすがにそこは素直みたい。

 

「それじゃあ行こう!!」

「ここはショナ達が詳しいしいいお店を頼むね」

「ん~いい所か微妙だけど行きたいところがあるんだよね」

「え?ただ昼食の時間じゃないの?」

「これから私達は贅沢をする……と言っても普段より少し多く食べられるだけだけど……。それでもお金がだいぶ減るので増やさなきゃいけない……でこれからギルドへ行き、いい依頼を探しながらご飯を食べます!!そして食べたら即依頼を受けます!!!!」

 

「「「えぇ……」」」


 私だけじゃなくてフーリア、ユウリはさっきとは打って変わってテンションを下げる。

 馬車に3日も揺られ、ようやく着いたと思ったら掃除をさせられた。さすがに疲れたんだけど……そんな私達へショナは無慈悲な一言を放つ。

 

「じゃあ昼食無しだけどいい?」


 その言葉に私達は言い返すことができなかった。

 結局、私達は昼食にいつもより豪華なものを食べる代わりに依頼を受ける事にした。

 ギルドは近くにあったのでとりあえずそこを選んだ。というのもギルドはこの街に二個あるらしくてどこへ行けばいいのか分からず、一番近い方を選ぶ。


「ギルド星の欠片スピカ?」


 私はギルドの前に置かれてある看板を読む。


「星の欠片……1年前は無かったけど……」

「支部なんだ。じゃあもう1つのギルドも一緒の名前なのかな?」

「確か違うはず」

「そうなの?」

「昔からこの街に居るからそこは知ってるんだけどね」

「へぇ……」


 ギルドの扉を開くとそのギルド名とは対照的に暗い雰囲気の場所だった。どこか皆張り詰めた空気を漂わせている。

 

 私達は完全に場違いな気がするんだけど……。

 想像とは違うギルドの雰囲気に私達は戸惑っていると、そこへ一人の強面の男が私達に近づいてくる。


「おいおい、ここはガキが来るところじゃないぜ?」

「わ、私達はルエリアで冒険者をしていて……」

「あ?外国の冒険者かよ。それにしても……女のガキとかルエリアは人材不足が過ぎるんじゃないか!」


 強面の男がそう言うとそれに同調するかのように周りがゲラゲラと笑い始める。

 凄く感じの悪い場所だ……。フーリア達に悪い影響を与えかねないからとっとと出て行きたい。

 けどご飯と依頼のために我慢する。

 

「まあでも成長すれば少しは使い物になるかもなぁ」


 突然男たちの見る目が変わる。

 

 なるほどこれは気持ちが悪い……これが女性の辛い部分って奴?

 しかも最悪な事にその強面の男は私の方へ寄ってくる。


「特にお前、弱気で臆病な感じがたまら――」

「……あ?」


 その強面の男は次の瞬間フーリアによって吹き飛ばされてしまう。

 

 ハッ!となって気づく。

 フーリアが強面の男を風の剣で吹き飛ばした。

 

「ちょちょ……フーリア何してんの!!」

「きもい男を吹き飛ばしただけよ」

「確かに言ってることは最低だったけど、まだ何もされてないからこれは……」


 男が吹き飛ばされるとギルドの団員達は一斉に私達を囲み始める。


「おいおい何してるんだ?」

「ダメじゃないかそんなことをしちゃ俺達が躾てやらないと」


 やっぱりこうなる……。

 

 私達はハーベスト帝国ジャスミンの街の冒険者ギルドへ訪れてモノの2分でピンチを迎えてしまった!?

 

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