第51話 戦いの後
「2人とも話が終わったなら手伝って!」
ショナとユウリがアルタイルと戦ってくれている。
魔法を吸収できることがバレたユウリは物理攻撃を、ショナにはそのまま毒を使った攻撃を器用に切り替えているアルタイル。
このまま行けばどちらが勝つか分からない。そこへ私とフーリアが加わる。
「行くよフーリア」
「ええルーク!!」
「焔薙斬り!!」
「嵐縦斬り!!」
私とフーリアはアルタイルに合わせ技、十字の炎と風の斬撃がアルタイルを襲う。
ショナとユウリ2人を相手に勝つか負けるかの勝負をしていた。そこへ私達が加われば――
「ぐおおおおおおおおおおっ!?」
もう既に体力の限界だったアルタイルは一瞬だけ私達の攻撃を抑えきった後、そのまま闘技場の壁まで吹き飛ばされる。
アルタイルは気を失ったようだ。
しかし魔王教団の奴らがエステリア学校の生徒をまだ襲っている。すぐに加勢しないと!!
厄介そうなやつは倒したし、後は消化作業……頭を切り替えて次の戦場へ向かおうとした時だった。
「痛ッ……」
腕に力が入らない。筋肉が脈打ち悲鳴を上げているのが分かる。
ショナ達が来てくれたくらいから結構限界だったから、最悪肉離れくらいは起こしているかもしれない。
「何してんのよ」
フーリアの呆れたような声が聞こえる。
「ごめん、フー……リ…………アアアアアアアアアアアア!?」
私はこれまでにないほどに叫んでいただろう。それもそのはず、フーリアは口から血を吐き、ダインスレイブの剣を持っていた右手からも痛々しい傷が見える。
魔剣の塚から触手のようなモノが出て来て腕に巻き付いている。
かと思ったら突然その触手は剣の中へ消えていった。
「どうしたのそれ!?」
「その……剣と無理やり契約した感じになったからか拒絶されてるわ。これ」
「ええ……」
「でも契約はしたから!これは私の物だから!!」
「そ、そんなに欲しいのそれ」
力を使うと血反吐を吐き、腕に良く分からない触手が巻き付くのに?フーリアは無言で何度も頷く。
ダインスレイブはこの剣を私に使えと言っていた。それが怪しくて結局使わなかったんだけど……大丈夫かなフーリアに渡しちゃって……。
ま、まあ取り上げると怒られそうだし、仕方ない。
「分かったよ。とりあえずはフーリアが預かってて」
「分かったわ!これはルークからのプレゼントとして受け取っておくわ」
「いや、プレゼントとは……」
私がその先を言う前にフーリアは睨んでくる。
まるでおもちゃを取り上げられる子供みたい……私はその圧に押されてしまう。
「それでいいよもう」
「ふふ、ありがとっ!!」
そんなにダインスレイブの剣がいいのかな。
無逆な子供のような笑顔を見せられてしまう。
「はいはい、無駄話はそこまで!まだ敵が居るから倒すよっ!」
しかし生徒の数も多いんだけど、それ以上に教団の人数が多くて倒すのに圧倒的に時間を掛けてしまう。
既に体育館中はキャパシティーを超えている。
どこから手を付けようかと悩んでいた時だった。
魔王教団の軍団の中から司令塔のような人が出てくる。
魔王教団の顔を隠すフードを被り、腰に細いレイピアを差している。マントも羽織っているので体形が分かりづらいけど、多分女性だ。
雰囲気と纏っているオーラがアルタイルと違う。この場に置いてまさに一番異質な存在感を放っていた。
私達はその圧倒的な存在感に気圧されて何も発することができない。
「まあいい、我が教団の同志達よ。我らは役目を終えた」
「役目……一体何を……」
ショナは意を決して話しかける。怖い瞳でショナを睨む謎の女。
「知りたいか小娘、それは……」
その女性は腰に差しているレイピアではなく、黄金に輝く剣を掲げる。勝どきを上げている……?
「あれは!!聖剣!!校長先生の剣……!」
ユウリが叫ぶ。
まさか目的を果たしたって……!!
「我らの目的はこの学校の校長を殺すことだ」
「な、なんでそんなことを……!!」
「ある男を誘き出すためだ」
この学校の校長が死んだ……?
この世界に置いて魔導騎士は神に等しい存在……それを殺すなんて!!
そんなことを考えて居た時だった……まるでそれを否定するかのように――
「エーテルナイトは神なのではない!」
「――ッ!!」
「奴らは神を語る愚か者たちだ。現にこの学校の生徒にも居るはずだ。魔導騎士に蔑まれて過ごしたことがある者が!!」
理解ができない……私はフーリア達の顔を交互に見る。
ショナは謎の女の言葉に俯き、ユウリはそんなショナを心配そうに見ている。
怪しい教団のそんな言葉に付いてなんていかないだろうと思っていたんだけど、多くの平民と一部の貴族の生徒が謎の女に付いていく。
その中にショナも……。
「ショナ!貴女は行かなくていい!!」
「ユウリ……」
ショナはまるで無意識に前進していたようでユウリに手を引っ張られるまで気づかなかったようだ。
「私達が居るから……信じてショナ!!!!!!」
「あ……ユウリ……!!私は何を……」
「いいの、いいんだよ!!」
何故か途端に泣き崩れるショナをユウリが抱える。
そしてある程度連れていける者達の目途が立ったのか謎の男は高らかに叫ぶ。
「魔王教の敵の中には魔導騎士が入っている。奴らを滅ぼしたい者達はいつでも我が教団の扉を叩くと良い……。そしてこの名を記憶しておけ!!我が名はネプチューン!!」
それだけ言うとネプチューンは新しい仲間とまだ動ける教団の仲間を連れてどこかへ消えてしまった。その中には不敵な笑みを浮かべるアルタイルの姿もあった。
あいつ……まだ動けたのか……。
その後学校は一時休校となり、生徒はそれぞれ寮へ強制的に戻された。
夏休み明けのエステリア学校に突如として現れた巨大ゴーレムは先生達が何とかしたけれど、そんな相手に満身創痍の中、校長先生は討たれてしまった。
そしてエステリア学校の生徒は半分以上居なくなったという。