第50話 強制契約
私が諦めて魔法を使おうとした時、頼りになる仲間達が駆けつけてくれた。
「今更だけど、3人とも教団の人達を倒したの?」
「あ、倒してないよ」
「じゃあどうやって来たのさ」
「フレイヤさんとクレスト王子が引き受けてくれたよ」
「なんであの二人が……?」
「さぁ?だけど2人ともルークに借りを作りたそうにしてたから、これが終わったら色々頑張って」
「……」
まさかこれが終わっても私に休息はないの……?このアルタイルとの戦闘だけで結構疲れたんだけど……。
私はあんまり体力が無い、一撃の攻撃、一瞬の速度は爆発的に上げられるけど本当に一度それをするだけで息が切れる。
これも剣士が向いていないという原因の1つだ。
だけどせっかく仲間の皆が来てくれんだから無いスタミナを全力で捻り出す。
「仲間か、そんなもの要るのかな?」
「は?」
「だって足手まといじゃんそんなの」
「だけど今私はその仲間に救われてる」
「いやいや君には要らないでしょ、魔法さえ使えばね」
「使えないってば」
「その仲間がその分を補ってくれるから?じゃあその仲間をぶっ殺してやるよ!!」
アルタイルは全身を蛇の鱗で覆った。瞳もどこか爬虫類のような形になっている。
そして身体をうねらせながら不規則な動きで向かってくる!!
私の方へ向かって来ていると思ったらその直後に身体をうねらせてターゲットをフーリアへ変える。
突然の不意打ちにフーリアはギリギリ反応する。
フーリアの剣とアルタイルの蛇の鱗を纏った手がぶつかる。
ギィンッ!!と不快な音を鳴らす。するとアルタイルは気づいてしまう。
「これ、ただの剣……アーティファクトか」
「――ッ!!」
アルタイルは両手でフーリアの剣の刃を思いっきり握った。そして――。
バキィンと剣の刃の折れる音が響き渡る。
「なっ――!!」
「はい、まずは1人!!」
剣を失った剣士は無力。フーリアはアルタイルの攻撃を裁くことができない。
そのままアルタイルの手がフーリアの首に触れれば一瞬で跳ねられて即死だ。
そうはさせない!!
アルタイルはとどめを差そうと一番、隙だらけの状態。そこへ炎の剣をアルタイルの首に向かって放つ。動きの器用さでは負けているけど、速度とパワーなら私の方が上!!
「焔斬り!!」
「お前の動きは分かってるぜ!!」
アルタイルはまたも器用な動きで私の剣を避ける。
とどめを差す時が一番隙が出来やすい、先ほど自分で考えて居た事なのにすぐに立場が逆転する。
そのため攻撃を避けられた私は文字通りの無防備状態だった。
「魔法を使わないからだ。これで終われ!」
アルタイルの手には紫色のモヤが纏っている。多分毒だろう。
終われと言っているからには超猛毒の可能性がある。だけどそれがわかっていてももう避けられない!!
死を覚悟した時、私は目を瞑った。
しかしその瞬間大声を上げたのはアルタイルだった。
「な……何してやがるコイツ!!」
私はアルタイルの声を聞いてゆっくり瞼を開いた。するとそこに映っていたのは……。
アルタイルの毒の身体を掴み、毒の魔力を吸い込むユウリだった!?
そのあまりの光景に私は……。
「え?」
そんな言葉しか出てこなかった。
この子は何をしてるの……?というか毒なんて食べて大丈夫なの……?
あれ、でも結構大丈夫そう……?ユウリは毒に苦しむ様子は無い。それどころか――。
「なんふぁヒリヒリすふ」
案外余裕そう……。どうなってんのこの子の身体……。
アルタイルはその姿を見て気味が悪いものを見る目で睨む。
「てめ、なんだこれ!!」
「私の身体は特殊なの。実家では家族からは愛されていたけど……なんでも食べられる私を周りが気味悪がった」
「魔体症なのは気づいていたが……こんなこともできるのか!?」
驚いているのも束の間、ユウリは吸収した魔力を地面に流す。
するとアルタイルの足元が揺れて土に足を捉られる。
「魔法の質が上がった!!」
「さっきのアースドラゴンはお腹が空いてたからね。じゃあ沈みなさい!!」
「くっ……だが!!蛇はここからでも抜け出せる」
アルタイルがそう言うと蛇のように脱皮した。するりと和らぐなった地面を抜け出すことに成功する。
しかしその先にはショナがいる。
「追撃の雷鳴剣!!」
「ぐはっ!?」
アルタイルはショナの雷の剣をその身に受ける。
鱗の硬さとショナのパワーの低さで身体を斬るまではいかない。
だけどショナの狙いはそこじゃなかった。
アルタイルはユウリの魔法がかかっていない地面に着地する。すると、頭上からどこからともなく雷が降り注ぐ。
「ぐああああああああっ!?」
アルタイルは雷の追撃を受ける。これが雷鳴の剣!
だけどそれでもまだアルタイルは倒れない。
「俺は組織で育った。故にこの程度では……」
「ルーク!私に剣貸して」
身体が痺れている今がチャンス!
そう思って剣を構えた時だった。
「フーリア何を……?」
「あなたの師匠の剣を貸して」
「だけどあれは魔剣だよ。ホワイト家の剣じゃないから使えないんじゃ……」
「あの二人が戦って、私だけ何もしていないなんてまるで仲間外れじゃない」
フーリアは私の目を見つめてくる。何かを訴えているような覚悟の瞳に私は拒むことが出来ないんだけど……。
「剣は部屋に置いてきちゃったから……」
さすがに2本も要らなかったので荷物になる師匠の剣は部屋に置きっぱだった。
それを聞いて悔しそうな顔をするフーリア。しかしそこへ思いも寄らないモノが飛び込んできた。
「きゅううぅぅん!!」
「この声は……ルミナ!!」
私は声のする方を見る。そこから小さな狐のようなものが剣を口で咥えて持ってきた。
ルミナの体の何倍以上もある剣なのに……。
「クソ狐……」
「くぅん!」
「助かったわ。剣を貸してルミナ!!」
フーリアが師匠の剣を握ったその時、フーリアとルミナの身体が光り始める。
「これは!!」
私にはその光景に見覚えがあった。
初めてこの炎帝剣を握った時と同じ。剣との契約の光!!
ホワイト家はその家系に伝わる件しか扱えないはず……。
現にこの前は使えなかった。
なのになぜだろう。今はあの剣をフーリアは扱える気がする。
「まさかルミナ……?」
あの子は女神様の贈り物。なにか超常的な力を使ったのかもしれない……まあこんな魔法のせいで頂上的な力って言うのも変だけど。
どうしてこうなったのかは分からないけれど、フーリアは師匠の魔剣を手にした。
「これが魔剣!!」




