第49話 怒りの炎
どうして私が魔法を使える事がバレているのか。
私は魔法を一切使わずアルタイルの攻撃を受け止める。
変に勘繰られたせいで少ない魔力量でも使わないように意識して、防戦一方になってしまう。
「くっ……」
「おいおいおい、さっきより弱くなったか?魔法使えよ」
「はぁ……はぁ……ま、魔法なんか……使えないってば」
「あーそう言うのはいいから、どうせ誰も見てない。いや、他を気にする余裕は無いだろ?」
周りの生徒達は死なないようにと必死に戦っている。確かにこの状況なら私が魔法を使ってもバレないかもしれない……。だけどこれがアルタイルの整えた舞台なら……。
もしそうだとしたら尚更魔法なんて使えない。いくら誰も見る余裕がなかったとしてもね。
だけど……魔法を使わないと勝てないのは確か。剣士としての実力は不足しているのはもう知っている。
アルタイルの攻撃は先程よりもより速く、鋭く私を捉えてきている。さらにうねうね動く不規則な攻撃のせいでこっちのガードは簡単にすり抜けられる。私は剣を扱い実力が不足しているから攻撃に対応するのは正直無理があった。
使うべきじゃないけど使わないといけないの……?
「迷うなよ。このままだとお前だけじゃなくてお前のお仲間も殺すぞ?」
「……は?」
「ククッ……そうだなぁ。確かお前、あのホワイト家の女と一番親しいんだろ?じゃああいつを教団に連れ返って面白いショーでも……」
「この……クソ野郎……!!」
私は無我夢中で剣を振るった。
それ以上、アルタイルの声を聞きたくなかったからだ。まさか言葉にされるだけでもここまで不愉快になる事があるとは思わなかった。
コイツは絶対、私が……ぶっ殺してやる!!
「黄金の炎……?それが魔法?いや、剣を使っただけか?いやそれなら先っからできたは……じゃあ剣術と魔法を組み合わせた大技?凄いな」
どうやら私の全力の一撃はアルタイルには当たらなかったようだ。
大振りのそれもほとんど狙いを合わせず放った攻撃では動きが読みやすかったか。
「おぉ~。何だよその目、ちょっと怖いな。睨むなよ」
「誰の……せいだと思って……!」
私は地面に剣を突き差す。炎帝剣は破壊の炎。地面に突き刺すことで、地面を抉掘り進めて相手の足元に忍び込む。
それをさらに魔法で強化する。
次は血のように赤い炎の柱が私とアルタイルを包み込む。
炎がいつより赤い気がする……もしかしたら怒っているから……かもしれない。
怒りが魔力を高めている。正直気は乗らない、これもあいつの計画の内だろうから。
だけどもうそう言う事はどうでも良かった。もしフーリアに手を出すようなら私は何をしてでもこいつを止める!!
魔力を高める……炎が私の身体を包み込む。
もう魔法を隠す気はなかった。
「炎帝……焔」
私が魔法を使おうとしたその時だった――。
「轟け!ライコウ!!」
私の背後からそんな声が聞こえる。その声の主は光速で移動し、そのままアルタイルに斬りかかる……ショナだった。
ショナは雷の剣でアルタイルと対峙する。
「ショナ!!」
ショナがここに居ると言う事は……。
私はフーリアとユウリの事を考えた。しかし、そんな暇はない事に気づかされる。
ショナの剣は確かにアルタイルを捉えている。だけど私の時と同じように蛇の鱗で斬撃を受け止める。
「何これ!?私の剣の刃が通らない!?」
「なんでお前がここに……。これから楽しくなるんだ……邪魔しないでくれ!!」
さっきまでと違いアルタイルは不愉快そうな顔をしている。
さらに雷の剣はアルタイルを斬ることはできていないものの、雷の特性がアルタイルの身体を痺れさせている。
それにはアルタイルはまずいと思ったのかショナのお腹を蹴り飛ばして距離を取った。
ショナはお腹を抑えながら苦しそうに声を張る。
「私、か弱い女の子なのに……!もう怒った!!ユウリ!フーリア!!」
アルタイルが距離を取った先に周り込み魔法を使おうとするユウリが居た。
「さっきから魔法使っててお腹空いてきたけど……思いっきりやるよ!!大地の竜!!」
ユウリが吠える。
大地が割れてそこから土塊の竜が現れる。
本物の竜ではないものの大きく、莫大な魔力を必要とするのが分かる。ユウリはそのアースドラゴンを使ってアルタイルを押し返す。
ショナから距離を取ろうとしたアルタイルに土塊のドラゴンが頭突きする。
アルタイルはアースドラゴンの勢いに負けてそのまま吹き飛ばされる――そして当然その先には……。
「こんな奴……風で斬り刻む!!」
「フーリア!!」
「風の刃!!」
フーリアは空中で自由自在に舞う。
凄まじい速度で剣を華麗に振るうフーリア、アルタイルは空中と言う事もありそれを避ける事ができない。
たまらず防御の姿勢を取るアルタイル。
「くっ……」
アルタイルは剣で斬られても指1つ失うことはなかった。
しかし蛇の鱗を超えて地肌へ傷を付けている。アルタイルの身体を血が滴り落ちる。
「痛てぇ……何しやがる!!」
アルタイルはブチギレていた。
しかしフーリア達はそんなアルタイルを無視して私の方へ寄ってくる。
「ふん、こんなのに苦戦してたのルーク?」
「……これで始末できなかったの辛いんですけど?そろそろ寿命使うよ?」
「それはダメだからねユウリ!」
3人はさっきまで教団を相手に戦っていたはず……体力も使っているだろう。ユウリに関しては身体が凄く痩せていた。
「フーリア……皆、どうして?」
「あなたは色々隠したいだろうから、あなたの魔法なんて私達が居れば必要ないのよ」
なんだか貶されているのか気を使われているのかよく分からないけれど……フーリアなりに絞り出した言葉なのかもしれない。
そう言う事なら私はその仲間を信じてみる。
だけどアルタイルはそんな仲良くしている私達が気に入らないのか頭を掻いてイライラしていた。
「だあああぁぁぁ……鬱陶しいなぁ!!お前らはお呼びじゃねえんだよ」
「そう言わないでよ。私達はパーティなの」
「まあいい、じゃあ見せてやるよこっちも本気って奴をよぉ!」