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第40話 決別


 突然聞こえた獣のような鳴き声を聞いて、フーリアを置いてその場を走り出した。

 その声のする方へ近づくにつれて、妙な気配を感じる……すると私の手首は何者かに掴まれた!?


「ちょ、ちょっと待って!どうしたの急に?!」

「フーリア……な、なんか声が聞こえたでしょ?」

「はぁ?声なんて聞こえなかったわよ」

「え……?」


 さっきの声はフーリアには聞こえていなかった……?

 小さく、今にも消えてしまいそうな声だったけどはっきり聞こえた。

 私は何となく今すぐに急ぐべきだと本能的にそう察知した。理由はないただの直感……だろうか?


「とにかく声が聞こえたから!フーリアは先に戻ってていいから!」

「……よく分からないけど私も行く!」


 フーリアは掴んでいた私の腕を放しす、そして2人でその声のする方へ向かう。

 声のした場所はバレンタインの領地付近の森林の中。そんな場所に予想外の人物と再会するのだった。

 

 頭の半分の髪の毛は赤く、もう半分は黒の2色の髪を持ち。

 顔は整った青年……いや、あの頃より少し老けたようにも見える。30代後半くらいの男性、そんな彼から発せられた声は私の中で懐かしさを彷彿とさせる。


「あれ?どうして君がここいいるんだ?ルーク」

「それはどちらかと言うとこちらの台詞ですが……ダイン師匠(せんせい)

「ダイン……か。君は知っているだろうが今は彼じゃない」

「……」


 ダインスレイブ師匠(せんせい)は私に剣と魔法の使い方を教えてくれた人。

 しかしこの世界では何故か人は剣と魔法どちらかしか扱えない。

 だがそんな枠組みに属さない、魔導剣士(エーテルナイト)というモノが存在する。

 魔導騎士(エーテルナイト)はこの世界で唯一剣と魔法を両方合わせた戦闘手段を持つ、この世界の認識では人間とはまた別の種族、神と崇められている。

 

 だけど魔導剣士(エーテルナイト)でもなく、私の様に神様に力を貰ったのとはまた少し違う方法でその2つを使うのがダインスレイブ師匠(せんせい)だ。

 ダインスレイブ師匠(せんせい)は二重人格でダインとスレイブで人格が分かれている。魔導士のダインと剣士のスレイブ。


「まさか今は……」

「スレイブ、君の剣の師匠だよ」

「どうしてここに?確か父上に追放されたんじゃ……?」

「そうね、だから言わないでくれると嬉しいな。少し用事で来たの」

「用事って?」

「ああ、それは……」


 スレイブ師匠が説明してくれる。そう思っていたら突然、次の瞬間――スレイブ師匠は茂みに向かって剣を投げつけた。

 突然の事で私は驚いて何もできなかったけど、フーリアは剣を構えてスレイブ師匠を睨む。

 

 そんなフーリアを止めなければ!!そんなことを考えていた時――。

 

「きゅううううぅぅぅぅ……」

「これは……?」


 またさっきの声だ。

 

 スレイブ師匠が剣を投げた先から聞こえる。

 私は茂みの方へ身体を向ける。


「ちょっと何してるの!師匠(ししょう)だか何だか知らないけど、こっちに攻撃してきて!!剣を構えてルーク!!」

「……」

「あーやっぱり気づいてるのかルーク」


 やっぱり……?

 

 まさかあの茂みの奥に何か居るの……?いやそれよりどうして師匠はあの茂みの奥に居る何かを狙っているの……?


「手応えはあった……けどまだ動きそうね」


 スレイブ師匠は小さめのナイフを手に取り、それを茂みに向かって再び放つ。

 私はその茂みに居る何かを助けないといけない……そんな気がしたから、ナイフを宙に浮いている間に素手で受け止める。

 

 向かってくるナイフは速かったけど捉えらない速度じゃない。ナイフの塚を的確に捉えて無傷で回収する。

 その様子を見たスレイブ師匠は驚く素振りも見せずに淡々と言葉を放つ。


「何をしているんだ?師の邪魔をするものじゃない」

「……すみません。でもこの声がするモノへの危害は加えないでください」

「どうして?」

「分かりません。ただ、傷つけるべきじゃないと本能的に感じ取りました」

「そうか……もうそうなっているのか」

「……?」

 

 師匠は何を言っているの……?全く説明もない言葉に戸惑っている私を気にせず師匠は茂みの方へ手を翳す。

 すると先ほど放った剣がスレイブ師匠の下へ戻っていく。そしてその剣の先を私とフーリアの方へ向ける。

 

 そして少し狂気を孕んだ笑顔の表情で殺気を纏っていた。


 「残念だ」

 

 敵対するつもりなの……?


 私は茂みから聞こえる声の主を傷つけたくない。そう思っている一方でスレイブ師匠とは争いたくない……頭の中でどちらを取るべきか葛藤する。

 するとそんな悠長な私を庇うようにしてフーリアが前に立つ。


「何してんのルーク!!」

「フーリア……!退いて、は、話せばわかるはず……」

「そうかしら……私にはあの男?話し方が女っぽいけど……まあいいや。私達を殺す想像をしながら笑っているように見えるんだけど?」

「師匠はそんなことしない……そうですよね!!」


 私は微かな希望に縋る。

 

 しかし現実はうまくいかないものだ。

 師匠は剣を構えて私の方へ向かって襲い掛かってくる。

 

 剣を構えていない私はその攻撃を防ぐ手段が無い。やられる……!!とその時――。


「何してんのよッ!!」


 フーリアが剣を使って師匠の攻撃を受けてくれた。

 だけど対格差があるせいか少し押され気味だ。


「フーリア!!」

「ぐっ……思う事はあるんだろうけど、今は一緒に戦ってよ!じゃないとあなただけじゃなくて私も死ぬかもしれないじゃない!!」

「――ッ!!」


 その一言で真っ白になりかけていた頭の中が元に戻る。

 確かに師匠と戦うのは嫌だ。私達が勝っても師匠を殺すことはないから動きを止めてゆっくり話ができるはずだ。


 何より私はフーリアが傷つけられるのだけは我慢ならない!

 私は覚悟を決めて炎帝剣を抜き放つ――。


「やるんだねルーク……私は悲しいよ」

「すみません……でもフーリアを傷つけるのはスレイブ師匠……いえ、スレイブでも許さない!!」


 これは私からダインスレイブ師匠(せんせい)への決別の叫びだ――。

 

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